スケバン刑事の話をしようねえ

する。なんで?って聞かれたら、人生初めて推しカプが死んだ漫画だから。あと私の男の好みの原点でもあるから。
ネタバレありです。でも推しカプが死んだって事実だけでは「どれ?」ってなるくらいには人がよく死ぬ。

私がスケバン刑事と出会ったのは小学4年生のときである。当時通っていた美容院の近くにブックオフがあり、母が髪を染めている間はそこで待つことにしていた。普通その年で、しかもそんなタイミングで出会う漫画でもないだろうが、とにかく私はそこで平積みされていたスケバン刑事を手に取ったのだった。
1巻の出だしがまず強烈で(脱獄だ〜〜〜〜!からの捕まって反省房に放り込まれるシーンから始まる)今まで読んできたものとは明らかに違う何かを感じたのを覚えている。当時私が読んでいた漫画はドラえもんとガラスの仮面くらいなものだった。いやそれもどうかという偏りっぷりだが。ガラスの仮面は叔母が愛蔵版を持っていて借りて読んだのだ。ドラえもんは母が気まぐれに買ってきた1巻を擦り切れるほど読み込んでいた。あとは小説しか読んでこなかったし、だからこその強烈なあの体験が脳裏に焼き付いているのかもしれない。
私がパラ読みしていたブックオフには愛蔵版の5巻までしかなく、それは珍しく漫画を欲しがった私のためにその場で母が買ってくれた。私はまだ5巻だけでは未完結なことを知らないまま読み進めていったのだが、クリスマスプレゼントに叔母が12巻まで揃えて持ってきてくれた。あのずっしりとした重み、忘れられない。
そうしてまんまとスケバン刑事にハマり込んだ私は、ヨーヨーを買ってもらい祖父の庭で一人でずっとスケバン刑事ごっこに興じていた。といってもハイパーヨーヨーをぶん回すだけである。頭の中では最強のスケバンだったのだが、まあ当然の如く私はただの小学4年生だった。
奇しくも同時期にハイパーヨーヨーが大流行しており、たまたまタイミングがあっただけなのに流行りに乗った人間のようになっていた。私がキッズの流行りに乗って何か買ったのはこれが最初で最後だった。

ノスタルジーな思い出もこの辺にして、中身について話したい。あ、それはもう事細かにネタバレするので許してほしい。今ならKindleで愛蔵版上下2000円くらいで買えるから、まず読んできてほしい。
読んだ?  じゃあ話すね。

まずスケバン刑事ってどんな話のさ、というところから。ざっくり言うと血生臭い少女漫画。そもそも和田慎二が結構スプラッタを描く人で(グロが好きで、というよりはサスペンスやるうえでそうなっちゃう感じ)その作風を少女漫画に持ってきた、と言った方が正しいかもしれない。作者のエッセイ漫画で「少女漫画で手やら足やら飛ばしてもええんか⁉︎」とキレたところ、編集長に「やれば?」と言われたエピソードなんかも残っていて、とにかく少女漫画の中で描かれるようなタイプではない死が多い。スケバン刑事も漏れなくそうである。
そもそも脱獄から始まる1話だし。銃もあるしナイフもあるしステゴロもめちゃくちゃする。バキッ!(顔面殴る音)ドカッ!(相手にタックルする音)ドウッ!(拳銃の音)の世界。ただそれは話を進めるためのアクセントであり、戦いは基本的に話の本筋ではない。ジャンルはミステリー、になるのかな?  私はミステリーだと認識している。
主人公の麻宮サキはピンクの髪の美人(公式設定)で、1話の時点では少年院に収監されている。しかし警察のお偉いさんの目に止まり、ある取引をして「学生刑事」となり学校に潜入することとなる。学校で起きている警察が介入できない事件を解決していく先には、でっけえでっけえ巨悪が待ち受けており──というのがざっくりとしたあらすじ。

思い返すと戦いもしっかりメインだ。というか作品の根底に大人vs学生があるような気がしている。大人に良いようにされる学生、それを止める学生、自らはみ出していく学生、それを悪用しようとする大人……これら人間関係が複雑に絡み合っている。サキはそんな中で学生刑事という大人に使われる立ち位置に(不本意ながらも)ついてしまったけれども、1人の学生として使命を全うしようとしていたように思う。
一部も二部も序盤はミステリー要素が強かった。姥捨山の話と現代シンデレラの話が好き。アレすごい良かったね……
一部の麗美が出てきたあたりでサキの思想がしっかりと見えるのも良い。スケバンだって暴力振って番はって悪と違うのけ?に対する明確な答えが出ている。
「アタシはいいさ、好きではみ出した人間だ。しかし本物の悪い奴は周囲の花に混ざって甘い蜜を吸ってやがる。悪を倒せるのは悪だけさ!」
か、かっこいい〜〜〜〜〜〜〜〜(セリフうろ覚え)
この思想があり、またサキ自身はほとんど何者でもないのが最高に良い。サキの特性ヨーヨーをパカって開くと桜の代紋が出てきて、これがサキが刑事であることを示す唯一の証明なのだが、サキはあんまりこれを乱用しない。大人に使われることを嫌い、つるむこともせず、ひたすら自分の道を1人で歩く。か、かっこいい〜〜〜〜〜(2回目)

まずこの学生刑事の設定がすごいよな〜〜〜と思うのだ。警察が介入できないけど明らかに何か起きてる事件、今でもすごくいっぱいあるから。例えばかの有名な3億円事件が起きていた同日、某高校でも寄付金1億円が何者かに盗み出されていた。その1億円事件を追え!とか。めっちゃ田舎町で起きた暴行事件と、背後にあるムラ組織の闇を暴け!とか。学生視点でしか得られない情報とスケバンじゃないと振るえない公権力じゃない暴力を使って事件を解決していく様がすごい。1970年代の作品なのだがまったく古臭くないのがすごい。もちろん不良が蔓延る学校とか、独特の読み仮名とか、そういうところで時代を感じるところはあるが、ストーリーラインはまったく古びていないしむしろ新鮮さすら感じるすごい漫画だ。
この古臭くなさと、改めて読み返して「すげー!」ってなったところを語るには、第二部のラスボス戦について語らないといけないのだが、これに関してはネタバレ抜きで見てほしい気持ちもある。でもここには書く。ちゃんと読みたかったら飛ばしてくれ〜〜〜〜!

第二部のラスボス、信楽老は二百年以上生きた妖怪みたいなジジイである。そんでこのジジイ、人を使うのがとんでもなくうまくてサキはどんどん追い込まれていく。この信楽老は日本における影響力を多大なものにするため、それはもう緻密で盛大な計画を練る。これがすごい。なんか上手くいくか分からんけど、上手くいったら現代日本でもマジで困っちゃうし有り得そうだな、と思うラインなのが本当にすごいのだ。
その作戦のため、各地で一見関係なさそうな3つの出来事が動いていく。1つ、弱小事務所から生まれた双子のアイドル「ミンキーキャッツ」がすごい勢いでスターダムを駆け抜けていること。2つ、同じくあまり強くなかった弱小野球部が甲子園優勝をかけてルーキーズのごときドラマを展開していること。3つ、画質が綺麗な代わりに電力を大量に食うテレビの製品化が決まったこと。これらが同時に進行し、行き着く先が信楽老の目論む「グランドスラム作戦」だった。
季節は夏、激アツい日。省エネなんぞ騒がれていない時代、店でも個人の家でもガンガンにクーラーをつけている。そしてその日はテレビで二つの大きな番組が行われていた。ミンキーキャッツのライブ中継と、甲子園決勝戦である。個人宅には電力をバカ食う画質すごテレビが置かれ、ミンキーファンと野球ファンは自宅で友人宅で店でとその成り行きを見守っている。
そして甲子園9回裏、サヨナラホームランなるかというタイミングで、ミンキーの曲が最高潮に盛り上がりを見せたタイミングで──首都が一斉停電するのである。
夕方でも蒸し暑い夏の日、見られなかったテレビ、人々の苛立ちはやがて破壊衝動に変わり、首都で大暴動が起きる。これこそが信楽老の狙いだった。このあとタイミングを測って電力を戻し、それを自らの功績とすることで自分の地位を高いところまで押し上げようとしていたのだ。
言ってしまえば荘大なマッチポンプだが、これすごくない?電力遮断に加えてネット遮断も同時に行えば、現代日本でも十分同じことが起こり得る気がしている。つかできるでしょ、今の方が暑いし。docomo回線死んだときも結構波乱があったし、それを考えるとマジでやれちゃいそうなのが怖い。
まあこの計画はサキによって潰されるんですけどね。しかしここまで現代に持ち込んでも十分恐ろしげな計画が登場するストーリー、本当に素晴らしい。

そしてストーリーもすごいがキャラクターが魅力的。最初に言った男の好みの原点、神恭一郎とか。そうだよお前のことだよ何ソッポ向いてんだこっち向け。
私、金髪のロン毛に弱いのだ。そのヘキの原点は間違いなくこいつである。この後、順当にオスカル様(ベルバラ)→カミュ(うたプリ)→都築圭(SideM)と同じタイプにハマり続けていくこととなる。最近は流石に各作品で金髪ロン毛を見かけなくなってきたこともあって落ち着いてはいるものの、街中でそういうキャラ見つけたら「あ♡」ってなる自信がある。
女の子だとミオさんが好き。てかミオさん嫌いな人いないと思う。美人でかっこよくて、普段は事務員ですって顔してるのに実は事務所最強レベルの実力の持ち主。かっこいい、好き。神と恋仲じゃないバディ関係築いてるのも、サキに次ぐレベルでコスプレが多いのも好き。
あとムウ•ミサね。スケバン刑事の第二部を見た者はだいたいミサ派か神派に分かれると言いますが(私調べ)。当て馬にしちゃあかっこ良すぎるんだけど、いい男なんだよな〜〜〜〜!最後まで敵か味方か分かんない感じも、サキに本気なのかもちょっと分かんないところも超好き。ワタシ•アテウマ•スキ。おすすめはニューヨーク観光編です。
ちなみに作者は皆殺しの和田で有名な方で、あの、本当に、呪術迴戦並みの死亡率を覚悟してくださいとだけ……三平さんの末路に小学生当時一週間ショックを受け続けたオタクからの忠告です。でもネタバレなしで見てほしい気持ちもある〜〜〜心が2個ある〜〜〜〜!

好きな漫画の話するの楽しいな。こういうの定期的にやろうと思う。
オモコロで永田さんがGS美神クイズやってたの、経緯は置いとくとしてすっごい羨ましかったんだよなぁ。ああいうのやりたい。やらせてください。やるなら回答者側で参加したいな。Q.神恭一郎がミンキーキャッツの正体を探るために電話をかけた芸能事務所は?  A.大都芸能!みたいな感じで。
(補足すると上記はスケバン刑事作者の和田さんとガラスの仮面作者の美内さんが仲良しだったことによる突発的なコラボ回の話です。ちなみにガラスの仮面でも、マヤが二人の王女オーディションを受けてる最中に速水真澄が神恭一郎から電話をとるシーンがあるんだゾ!)
だれか開催してくれ、第一回スケバン刑事クイズ。参戦するから。

フォロワーの誰かがなんとなく履修して沼に落ちることを祈ってこの話は締めます。この素晴らしい作品が後の世も残っていきますように!!!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?