あんりちゃんの説得力

はるちゃんが飲み物を買うのを待っていた時のことです。私とあんりちゃんと田辺さんは店の外にいたのですが、

「あら、あれ可愛いわ。」

田辺さんは向かいのお店にあった鞄が気になったらしく、ふらっとそっちに歩いて行きました。鞄が置いてあるのは店の前なので田辺さんが商品を見ている姿が見えます。

「酒寄さんに絶対話そうと思っていたことがあって!」

私とあんりちゃんはその場で話しながらはるちゃんと田辺さんを待つことにしました。あんりちゃんは先輩芸人のすゑひろがりずさんが2人とも弁当を食べるスピードがめちゃくちゃ速いことを教えてくれました。

「・・・酒寄さんちょっと見てください!」

突然あんりちゃんが田辺さんのほうを指さしました。そちらを向くと、田辺さんが周りを見回していました。あんりちゃんが言いました。

「田辺さんって今みたいに自分だけお店を見ていて私とはるちゃんが遠くで待っている時とか、ああやって見回して私たちが移動していないか、置いてかれてないか確認するんですよね。ちょっと時間たったらまたやりますよ。」

数分待ってみるとやはり田辺さんはまた周りをきょろきょろ見回しました。それを見てあんりちゃんが田辺さんの保護者みたいに「ふふふ」と笑いました。

「田辺さんやっぱり周り見てますね。」

「本当だ。あ、田辺さんがこっち見てる。」

見守るあんりちゃんも相まって、田辺さんのその姿は子供みたいに見えました。

(公園で子供が遊んでて、親がちゃんといるか急に不安になって確認している様子に見える)

そう思うと、なんだか微笑ましくなりました。あんりちゃんが言いました。

「あの田辺さんってなんか万引き犯みたいですよね。」

そこに買い物が終わったはるちゃんが田辺さんに合流して、2人で鞄を見始めました。あんりちゃんが言いました。

「共犯者が来ましたよ。」

もう2人が万引き犯と共犯者にしか見えなくなりました。(もちろん二人とも万引きはしていません)

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