小さな願いが叶った朝

ある朝のことです。その日は早い時間からぼる塾四人での仕事がありました。順番にメイクをしてもらう為、はるちゃんが先に向かいました。あんりちゃん田辺さん私の三人でぼんやりしていると、マネージャーさんが待機場所にあったテレビで「ラヴィット!」をつけてくれました。

田辺さん「今日は水曜メンバーね!」

私「月曜日だったらぼる塾がレギュラーだからぼる塾見ながらみんなと話せたね。いつか月曜日も見たいね」

あんりちゃん「酒寄さん、ラヴィットは生放送なのでそれは不可能ですよ」

私「本当だ」

しかし、そんな私の小さな願いが神に届いたのか、番組を見ていると私がよく知る三人が登場したのです。

あんりちゃん「酒寄さん、実はナイスタイミングなんですよ!」

その日の特集はみかんゼリーだったのですが、お取り寄せミカンゼリーのVTRにぼる塾が出演していたのです。

ナレーション『芸能界一のスイーツ女王田辺さん率いるぼる塾の三人です』

あんり「え?ぼる塾って田辺さんが率いてるんですか?」

田辺さん「私、率いたことないわ」

あんりちゃん「私も率いられた記憶ないです」

田辺さん「だって一度もないもの。これはとんでもないナレーションミスだね」

あんりちゃん「訴えて良いですか?田辺さんを」

田辺さん「何で私なのよ!!番組に言ってよ!!」

あんりちゃんと田辺さんは喧嘩になりそうでしたが、テレビに美味しそうなみかんゼリーが映るとすぐに大人しくなりました。二人は「これすごく美味しかった」「酒寄さんにも食べさせたい」「むしろまた私が食べたい」「みかんが丸々一個入ってて豪華なはずなのに田辺さんと比較するとそのみかんが田辺さんのでかさで小さく見えるからみかんが損してる」「何でよ!!」など解説をいれてくれて、さらに愉快な感じでVTRを見ることができました。

番組ではみかんゼリーの紹介の途中で夏の思い出の話になり、あんりちゃんがウエットスーツの話をしていました。

田辺さん「あら、あんりの話が出たってことは時間的に私の方はカットかしら?」

私「田辺さんも何か話したの?」

田辺さん「ええ。でも朝の番組なのに暗い話しちゃったから、やっちゃった!って思ってたのよ」

あんりちゃん「あの話は切なかったですね」

田辺さん「まぁ、暗い話だったし。朝にもみかんゼリーにも合わないわ」

田辺さんはそうは言っても少しショックを受けてるように見えました。そのまま番組を見ていると、テレビの中の田辺さんが夏の思い出を話し始めました。

田辺さん「あら、私も採用されたのね!」

あんりちゃん「良かったですね!終わった後で『朝の番組なのに悲しすぎる話しちゃったからカットかもしれない』って田辺さん落ち込んでましたもんね」

田辺さん「あ~良かったわ。カットは嫌よ」

私「良かったね!」

あんりちゃん「でもこの話切ないですよね。私聞いていてすごく切なくて、まじで泣きそうになりました」

私「そんな切ない話なんだ」

田辺さんの切ない夏の思い出はBBQ合コンでした。田辺さんがBBQ合コンでバイト先の後輩の女に陥れられてお局ポジションにされたり、みんなが買い出しに行く中、ひとり荷物の番人として留守番をさせられたり(しかも真っ暗な夜のBBQで)、待っている間に居眠りしていたら、戻ってきた後輩の女がそれを見て「起こしたら可哀想だから田辺さんは寝かしておいてあげよう」と言い出して全員納得したためにBBQ合コンなのにひたすら眠った(言われた時点で起きていたのでほぼ寝たふりをしていた)というものでした。

あんりちゃん「あれ、おかしいな。私田辺さんの話聞いてて、めちゃくちゃ笑ってる」

テレビに映るあんりちゃんは大爆笑していました。

あんりちゃん「おかしいですね。私泣きそうだったはずなのにな。番組側、もしかして私の顔だけ差し替えました?」

田辺さん「番組そんな暇ないわよ!」

あんりちゃん「いや~、おかしいですね~気持ちは泣いてたんですけどね」

田辺さん「あんた普通に収録中大笑いしてたよ!」

田辺さんの切ない夏の思い出話も終わり、VTRからスタジオに進行が切り替わりました。水曜メンバーの中でくじに当たった人がお取り寄せのみかんゼリーが食べられるというコーナーが始まりました。

あんりちゃん「みんな座ってるのに盛山さんだけ何で立ってるんだろう」

確かにスタジオにカメラが戻ったとき、他の人たちはみんな座っているのに見取り図の盛山さんだけ立っていました。すると田辺さんが突然叫びました。

田辺さん「見て、盛山さん髪の毛切ってる!!」

あんりちゃん「それは良いでしょ、別に切っても」

盛山さんは最近美容院に行ったのか、髪の毛が少し短くなりさっぱりしていました。

田辺さん「ちゃんと見て!今の盛山さんっ、昔、私が髪の毛短くしたときにそっくり!!」

あんりちゃん、私「「え??」」

田辺さん「ほら!あったじゃないっ!!私が一回短くしたとき!!」

あんりちゃんと私は盛山さんを改めて見直しました。

あんりちゃん「本当だ!!あのときの田辺さんだ!!」

私「確かに似てる!!」

田辺さん「でしょっ!!今の盛山さん超あのときの私なんだけど!!」

田辺さんは盛山さんをまじまじと見ながら「いや~本当に似てるね。お互い髪の毛が長いと別に似てないのに不思議ね」と世の中の不思議を増やしていました。

田辺さん「ところで盛山さんは何で立ってるのかしら?」

あんりちゃん「さあ?」

田辺さん「盛山さんが立ってるから、バランスとるために私寝転がるね」

田辺さんはそう言って寝転がりました。私は、ラヴィット!メンバーは自分がレギュラーの曜日じゃないときでも見えないところでバランスを取ったり、番組のことを考えているんだなと思いました。

田辺さん「盛山さんが座ったら私も座るわ」

盛山さんはくじにインチキがないかを疑って立っていたらしく、その後、盛山さんはくじのインチキを暴こうと大暴れしていて、田辺さんは「ああ、そんなに暴れて、私はもっと休憩しないと。困ったね」とこの世で一番困らなくて良い悩みを抱えていました。

番組は再びVTRに戻り、ぼる塾の三人が映りました。次に登場した高級みかんゼリーに、番組内の田辺さんは無意識なのか姿勢が超前のめりになっていました。それに対して番組内のあんりちゃんが、『みかんゼリーに飛びかかろうとしてる』とうまく表現し、笑いにつなげていました。

それを見て、番組外のこちらの田辺さんが言いました。

田辺さん「あんりってつっこみ上手なんだね」

私「え、今更?!」

あんりちゃん「今まで下手だと思ってたんですか?」

田辺さん「いや、つっこみうまいことは知ってたよ!でも、いつも一緒にいると当たり前になっちゃう部分があって、今、こうやって改めて見たらあんりってすごくつっこみ上手なんだなって気づけたわ。ありがとう」

あんりちゃん「…どういたしまして?でこの返しはあってますか?」

田辺さん「あんりのおかげで私は面白くなってるよ。あんり、ありがとう」

あんりちゃん「そんな、照れますよ!やめてください!」

田辺さん「当たり前に思っちゃいけないよね。いてくれるって奇跡だよね。本当に傍にいてくれることに感謝しないとだよ」

私はそれを聞いて、田辺さんが以前よく行くケンタッキーが突然閉店してしまったとき全く同じセリフを言っていたことを思い出しました。

はるちゃん「お待たせしました~!次酒寄さんです~!」

ヘアメイクをしてもらったはるちゃんが戻って来て、交代で私が行くことになりました。

私「じゃあ行ってくるね~」

あんりちゃん「いってらっしゃい」

田辺さん「きれいにしてもらってきな~」

テレビの中の盛山さんはとっくに座っているのに田辺さんはずっと寝転がっていました。

おわり

おまけ

私がメイクをしてもらっていたときのことです

はるちゃん「あははははは」

突然、はるちゃんの大笑いが聞こえてきました。

メイクさん「すごく楽しそうですね」

私「そうですね。何があったんだろう?後で聞いてみます」

メイクが終わり、戻る途中で田辺さんとばったり会ったのでさっきのことを聞いてみました。

私「さっきメイクしてもらってるときはるちゃんの大笑いが聞こえてきたんだけど何か楽しいことあったの?」

田辺さん「…ああ、あれね」

田辺さんはしかめっ面になって言いました。

田辺さん「はるちゃんがハナミズキの替え歌で、私に向かって『君とはるちゃんが百年続きますように』って歌ってきたから、私が

『本当に私で良いの?』

って言ったらあの女大笑いしたのよっ!!あっちが言ってきたのにっ!!何で笑うのよっ!!」

田辺さんとはるちゃんが百年続きますようにって思いました。

おわり

***

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