誕生祝いとボケラッシュ
ぼる塾初5大都市ツアーオードブル東京公演前日のことです。
その日は本番前日だったこともあり、夜に行われるリハーサルまでしっかり稽古をしようと早くから田辺さんとはるちゃんのシェアハウスに集まりました。
私(いよいよ明日が本番か…怖い…)
私は明日のことを考えてすでにびびっていたのですが、稽古の前にとても嬉しい出来事がありました。
あんりちゃんはるちゃん田辺さん「「「酒寄さん、お誕生日おめでとう!!!」」」
三人が私の誕生日を祝ってくれたのです。私がずっと「食べたい」と言っていたあんりちゃんの手作りカレーを食べて、はるちゃんが買いに行ってくれた田辺さんおススメのケーキを食べて、三人からびっくりするほど沢山プレゼントをもらいました。
私「ありがとう!すごく嬉しい!」
あんりちゃん「私も誕生日に私の手料理食べたいって言われたの初めてだったのでめちゃくちゃ嬉しかったです!」
はるちゃん「ママー!生まれてきてくれてありがとうー!」
田辺さん「素敵な誕生日会だったわ。お腹いっぱいで眠い…もうこのままネタ合わせせずに帰りたいわ」
あんりちゃん「ここあんたの家だよ」
田辺さん「そうだったね」
はるちゃん「そろそろネタ合わせ始めましょうか?」
私「そうだね!あ、待って!ネタ合わせ始める前にもらったプレゼントまとめさせて!」
机の上には三人がくれた沢山のプレゼントがありました。
はるちゃん「この荷物持って帰るの大変ですよね。どうやって持って帰りましょうか?」
あんりちゃん「あ!私がカレーの鍋入れてきた大きい黒のカバンと同じやつ、はるちゃんも持ってるよね?あれに入れたら?」
はるちゃん「あんりナイスアイデア!私ちょっと持ってきますね!」
あんりちゃん「私も忘れないうちにカレー鍋、カバンにしまっておこう」
あんりちゃんはお手製カレーを家で作ってここまで持ってきてくれたのですが、
あんりちゃん『カレーは沢山作った方が美味しいから一緒に住んでる家族の分もまとめて作ったらとんでもない量になりました』
と、とても大きな鍋に入れて持ってきてくれました。その大きなカレー鍋を入れてきたのが話に出た大きな黒いカバンでした。あんりちゃんがカレー鍋をカバンにしまいながら言いました。
あんりちゃん「これ仕事で沢山荷物が出ちゃったときに『良かったらこれに入れて持って帰ってください!』ってもらったんですけど便利ですよ!」
私「確かに、この大きな鍋が入るカバンって中々無さそう」
あんりちゃん「はい!これ軽いし、マチがあるから安定するし、中が保冷バックになってるんですよ!でもデザインがおしゃれだから、まさかこの中にでかいカレー鍋が入ってるとは思いませんよね」
私「うん!このカバン担いだあんりちゃんスタイリストさんみたいだったよ!あんりちゃん明日の衣装とか今日全部持ってきたのかと思った」
あんりちゃん「まさかカレー鍋の運び屋には見えませんよね。
私が到着したとき、もう酒寄さんいたじゃないですか。でも私を見ても酒寄さんはこのカバンの中のカレー鍋に気づいてなさそうだったので、カレーはぎりぎりまで隠してサプライズにできるって思ったんです。だから、まさか
はるちゃん『あんり!カレーありがとうね!!』
ってあんなにすぐにばらしちゃうとは…」
はるちゃん「いや~カレーはサプライズってことうっかり忘れてた!ごめんね!」
私「サプライズじゃなくても美味しさは変わらないよ!すごく美味しかったよ!」
はるちゃん「酒寄さん、これあんりのと同じカバンです!使ってください!」
私「ありがとう!」
沢山もらったプレゼントは、はるちゃんに渡された大きな黒いカバンに何とか全て入りました。
私「入った!ありがとう!」
あんりちゃん「じゃあネタ合わせ始めましょうか」
田辺さん「そーりー!ちょっとトイレに」
田辺さんのトイレを待ち、ネタ合わせを始めました。
田辺さん「とても眠いわ」
田辺さんはあんりちゃんのカレーのあまりの美味しさについ食べ過ぎてしまい、ネタ合わせ中もずっと眠そうでした。
あんりちゃん「明日本番なんですから、しゃきっとしてくださいよ!」
田辺さん「そうね!しゃきっとするわ!」
はるちゃん「じゃあコントをもう一度練習しましょうか」
私「はーい!」
田辺さん「私かますわ!!」
あんりちゃん「あ、田辺さん何か企んでる」
田辺さん「まぁね~」
そのとき私たちが練習していたのは町中華のコントで、私が新人アルバイトではるちゃんがベテラン店員、あんりちゃん田辺さんが常連客というものでした。明日が本番と言うこともあり、みんな真剣に練習していました。しかし、常連客の田辺さんが入店してくるとき、事件が発生しました。
はるちゃん「いらっしゃいませ~!」
知らないおじさん「こんにちはー!」
あんりちゃん「ストップ!え、知らないおじさん入ってきたんだけど!!」
はるちゃん「え、今のおじさん誰?!」
私「今おじさんいた!!」
田辺さんがどう喉を震わせたらそんな声が出せるのか、知らないおじさんの声で店内に入ってきたのです。
田辺さん「『やってる?』って台詞のところを『こんにちはー!』ってアドリブでかまそうと思ったら、なんかどきどきして変な声が出ちゃった」
あんりちゃん「田辺さん、アドリブが弱すぎます」
はるちゃん「でも声はすごかったです!本当におじさんでしたよ!」
私「本当に知らないおじさん侵入してきたかと思ったよ」
あんりちゃん「今の本番でできたらすごいですよ」
田辺さん「いや、二度と再現できないね」
こうして知らないおじさんの侵入により、ネタ合わせに不穏な空気が漂い始めました。知らないおじさんのことは忘れて私とはるちゃん二人の会話のシーンを練習していると、
あんりちゃん「ぶふぉっ」
突然、あんりちゃんが噴き出しました。
私「何?!」
はるちゃん「どうしたの?」
田辺さん「あんり大丈夫?」
あんりちゃん「田辺さん、お腹丸出しになってます」
あんりちゃんが指さしたほうを見ると、どうしたらそうなるのか、田辺さんのお腹が丸出しになっていたのです。
田辺さん「あら、やだ」
はるちゃん「田辺さん!何してるんですか!」
田辺さん「私は何もしてないわ!」
私「何もしないでそんなお腹丸出しになることある?わざとお腹出したんじゃない?」
田辺さん「何でそんなことする必要があるのよ!私は無実よ!」
あんりちゃん「何気なく隣に座っている田辺さんを見たらお腹丸出しだった私の気持ち考えてください!!これは罪です!!」
田辺さん「あ!これはあんりのカレーのせいよ!美味しくて食べすぎちゃったからお腹が飛び出したのよ!!」
私「それも結局田辺さんのせいでは?」
あんりちゃん「知らないおじさんになるわセクハラしてくるわ、田辺さん不真面目すぎます!いい加減にしてください!」
はるちゃん「そうですよ!明日本番なのに!」
田辺さん「何よっ!!私ばっかり悪者にしてもうあったまにきた!!お腹出なきゃ良いんでしょ!!はいはい!!わかりましたよっ!!」
田辺さんはそう言って怒鳴ると、着ていたゴムのスカートを胸のあたりまで思いっきり引き上げて言いました。
田辺さん「ふんっ!これだけ上げればお腹出ないわよ」
私「田辺さん、デカパンそっくり!!」
スカートをひきあげた田辺さんは漫画おそ松くん(さん)に登場するパンツ一丁で出歩くキャラクターのデカパンにそっくりだったのです。その田辺さんを見て、あんりちゃんとはるちゃんがついに膝から崩れ落ちて笑い始めました。
あんりちゃん「田辺さん!!これ以上ふざけるのはやめてください!!」
田辺さん「私は真面目よっ!!」
私「さっきコントに勝手に入ってきた知らないおじさんってデカパンだったのか」
田辺さん「なんで笑うの?!私のどこがおかしいのよ!!あんりとはるちゃんは私ってだけで全然面白くなくても笑うから信用ならないわ!」
はるちゃん「田辺さん、自分の姿をちゃんと見てください!!」
私は田辺さんを写真に撮って本人に見せました。
田辺さん「誰?!この変態!!」
あんりちゃん「あんただよ」
あんりちゃんはとくにツボに入ったらしく、『く、苦しい~』と言って大笑いしていました。
田辺さん「あんり、笑い過ぎよ」
あんりちゃん「くくくっ苦しいっっっ」
田辺さん「大丈夫?何か飲む?ほうじ茶とか」
あんりちゃん「ちょっ、この変なタイミングで優しくしないでくださいっ!」
田辺さん「何か飲んだ方が良いわよ。ほうじ茶淹れようか?」
あんりちゃん「じゃあっすみません・・・っ落ち着くためにお水くださいっ」
田辺さん「わかったわ。ほうじ茶淹れるわね」
田辺さんはどうしてもほうじ茶を淹れたいようでした。田辺さんはほうじ茶を淹れて、少し落ち着きを取り戻したあんりちゃんに渡しました。
田辺さん「はい、新しいほうじ茶」
あんりちゃん「ありがとうございます」
そんな二人を見てはるちゃんが言いました。
はるちゃん「今の2人、セーラームーンの有名なシーンみたいだったね」
私「?」
田辺さん「セーラームーンにそんなシーンあったかしら?」
あんりちゃん「いや、私もちょっとわかりません」
はるちゃん「え、有名じゃん」
私は頭の中でセーラームーンを思い出しましたが、お茶の受け渡しをする有名なシーンを見た記憶はありませんでした。
田辺さん「セーラームーンにお茶渡すシーンなんてあった?」
あんりちゃん「はるちゃん、何かと勘違いしてない?」
はるちゃん「あ、セーラームーンじゃなくてアンパンマンだった!新しい顔よーって!」
あんりちゃん「全然違うじゃねーかよ!!」
田辺さん「アンパンマンもそんなに似てないわ」
あんりちゃん「はるちゃんっちょっと…セーラームーンとアンパンマンを間違えるってっ
…あははっ苦しい~っ!!」
私「あ、またあんりちゃんのツボに入った」
あんりちゃん「田辺さんもはるちゃんもさっきからボケてきて!私をどうする気?!」
田辺さん「あんりは笑いのツボが浅過ぎよ」
あんりちゃん「もっと二人とも真面目に生きてください!明日本番なんですよ!」
その後、何とかネタ合わせに戻って真面目に練習をしました。
はるちゃん「あ、もうこんな時間!そろそろリハーサル向かいます?」
あんりちゃん「あ、すみません。私リハーサル行く前に一回家に戻ってカレー鍋置いてきても良いですか?荷物になっちゃうので」
田辺さん「大丈夫よ」
あんりちゃん「私家からそのままルミネ向かいますね!」
あんりちゃんは大きな黒いカバンをひらりと肩にかけて格好良く言いました。
あんりちゃん「じゃあ、後ほど!」
私「あんりちゃん!それ、私の誕生日プレゼント!!」
あんりちゃんは間違えて、カレー鍋ではなく私の誕生日プレゼントを持って帰ろうとしたのです。
田辺さん「同じカバンを取り違えるって漫画じゃよくあるけど、こんな漫画みたいな間違いする人初めて見たよっ!!」
はるちゃん「わかります!開けたら大量の札束が入ってた!みたいのですよね!」
私「私が帰宅して『今日、誕生日プレゼントいっぱいもらったんだよ!』って家族に見せようとしてカバン開けたらでかいカレー鍋出てきて『沢山って大量のカレー?』ってなるところだったよ」
あんりちゃん「いや~。つじつまはあいますね」
みんなで大爆笑しました。
おわり
***
※ぼる塾の日常が一冊の本になりました!「酒寄さんのぼる塾日記」全国で発売中です。最近私が田辺さんに「ちいかわの可愛さに目覚めた」と話していたら、あんりちゃんが「酒寄さんっ!!まさかあなたもっ!?」と自分以外の能力者に出会った人見たいなテンションで話しかけてきたのが可愛かったです。本の詳細はこちら↓
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