ごはんの量

ぼる塾はあんりちゃんとはるちゃんのコンビ「しんぼる」と田辺さんと私のコンビ「猫塾」が合体してできたカルテットです。猫塾時代の話です。

「あの中華行こうか。」

田辺さんと私はお気に入りの中華料理屋がありました。そこは本場の方がやっていて、安くて早くて多くて美味しく、田辺さんに言わせると「実家」でした。ある日、いつものようにメニューを見ていると田辺さんが

「私、黒酢酢豚定食のご飯少なめにするわ。」

と、言いました。私が「田辺さんがご飯少なめ!」と、驚くと

田辺さん「ちょっとダイエットしようと思って。ここの所食べすぎなのよ。」

私「出会って数年経つけど初めて聞いたかも。田辺さんのご飯少なめ。」

田辺さん「じゃあ今日は記念日ね。」

お店の人を呼んで田辺さんは「黒酢酢豚定食ご飯少なめ」私は「回鍋肉定食」を頼みました。全然待たずにすぐに料理が運ばれてきました。

「ハイ!クロズ!ハイ!ホイコーロー!」

さあ食べようと箸を持つと田辺さんが「待って!」と言いました。私が「どうしたの?」と言うと、田辺さんが指さしました。

「私のご飯少なめのほうが酒寄さんよりご飯多くない?」

確かに田辺さんのご飯の量は私のご飯よりあきらかに多いです。どう見てもご飯少なめには見えません。

田辺さん「ご飯少なめ忘れられたのかしら?」

私「店員さん呼ぶ?」

田辺さん「わざわざ悪いわよ。」

私「じゃあ私のとご飯取り替えようか?」

田辺さん「いや、わざわざ悪いわよ。」

茶碗を交換するくらい別に手間ではなかったのですが田辺さんはそのまま食べ始めました。「美味しいねー」と言い合い完食してその日の食事は終わりました。

「あの中華行こうか。」

数日後のネタ合わせ終わりにまた2人で中華料理屋に行きました。メニューを見て田辺さんは悲鳴をあげました。(本当に悲鳴でした)

「やだ!!今日神セットがある!!」

神セットとは唐揚げと麻婆豆腐のセットになった定食で、麻婆豆腐が一人前あるのになぜか普通の麻婆豆腐定食と同じ値段で食べられる大変お得な物でした。たまにしか現れないので田辺さんは勝手に神セットと呼んで崇めていました。

田辺さん「私絶対神セットにする!!」

私「良かったね。」

田辺さん「でもどうしよう・・・私ダイエット中なのに。ご飯少なめにすれば大丈夫かしら?」

私「そう言えばこの前田辺さんが頼んだご飯少なめ全然少なめじゃなかったね。」

田辺さん「今日はご飯半分って言うわ!!力強く!!」

お店の人を呼んで田辺さんは

「かみ、唐揚げ、麻婆豆腐定食、ご飯半分で!!」

と力強く頼みました。「ご飯半分よ!!」と、念の為2回言っていました。お店の人も「ハンブン」と繰り返していました。私は「回鍋肉定食」を頼みました。今回も待たずにすぐに料理が運ばれてきました。

「ハイ!カラアゲマーボー!ハイ!ホイコーロー!」

店の人が立ち去ってから田辺さんが言いました。

「私のご飯半分のほうが酒寄さんよりご飯多くない?」

見てすぐにわかるほどに、田辺さんのご飯半分が私のご飯より確実に多いのです。田辺さんが「トリックアートかしら?」と言いました。

私「半分って繰り返してたよね。」

田辺さん「繰り返してたわ。」

私「なんならそれ大盛りの部類に入るよ。」

田辺さん「そうよね!これ大盛りよね!」

私「店員さん呼ぶ?」

田辺さん「わざわざ悪いわよ。」

私「私今お腹空いてるから私のご飯と交換しようか?」

田辺さん「酒寄さんが犠牲になることないよ!(?)」

私は田辺さんの優しさに甘えて(?)茶碗交換はしませんでした。「美味しいねー。」と言い合ってると田辺さんが急に、

「ねえ、これって茶碗じゃなくて人間の器の大きさでご飯半分にしてるんじゃない?」

と言い始めました。

私「人間の器の大きさ?」

田辺さん「きっとそうよ!!この店はね!!茶碗の大きさでご飯の量を決めるってそんな小さいことに縛られてないのよ!!」

私が「どちらかというと体の大きさでご飯半分じゃない?」と言おうとしたら田辺さんが、

「ねえ、メニューの写真も酒寄さんの定食も覗き見したら他のお客さんのもミニサラダにはドレッシングなのに、私だけ最近いつもミニサラダにマヨネーズかかってるんだけど!!」

って新しい事件を始めていました。

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