琥珀糖の親分
ある日のことです。私とあんりちゃんと作家のMくんで集まってネタ作りをしていました。しかし、その日はなかなか良いアイデアが思い浮かばず、行き詰っていました。
あんりちゃん「田辺さん呼びます?」
田辺さんは『私は面白いことは一切考えられないから』と基本ネタ作りはノータッチです。『なんか寂しいから』と言い出してネタ作りにほぼ無言で参加してくれる日もあるのですが、この日はお休みでした。
Mくん「確かに。田辺さんがまたヒントくれるかもしれないですよね」
以前ネタ作りが硬直状態になったとき、その場にいた田辺さんの『最近私イカさばく練習してるんだけどさ』という一言で動き始めたことがありました。なので、今この場に田辺さんがいてくれたらもしかしたらこの硬直状態が動き出すかもしれないと思い、もう夜だったのですがダメ元で連絡をしてみました。
Mくん「田辺さん今から来てくれるみたいです」
あんりちゃん、私「「やった!」」
優しい田辺さんはOKしてくれました。しばらくして、田辺さんがやってきました。
田辺さん「そーりー!遅くなっちゃって!」
あんりちゃん「田辺さんありがとうございます!」
私「ありがとう!」
Mくん「ありがとうございます。すいません急に呼び出して」
あんりちゃん「はるちゃんは今日用事あるの知ってたけど田辺さんはもしかしたら来れるかもって思って。田辺さんがいてくれたほうがネタを作りやすいんです。笑いの女神ですから!」
田辺さん「あら、そう言ってもらえると嬉しいわ。私で良ければいつでも駆けつけるわよ!さっきもね、お風呂入る前にたまたま携帯電話見たら連絡くれてるのわかって!
気づいてよかったわ!風呂入ってたら絶対来なかった!面倒だもの!」
田辺さんのいつでもは風呂に入る前までのようでした。
田辺さん「そうだ!酒寄さん!これみたらしちゃんに京都のお土産!琥珀糖(こはくとう)!」
田辺さんはそう言って、私の息子にお土産だと紙袋を渡してくれました。中を覗くと、透明な箱に入った宝石のようなお菓子が入ってました。
私「ありがとう!わ~きれいだね!」
田辺さん「でしょ!宝石みたいできれいよね!しかもちゃんと美味しいのよ!」
あんりちゃん「田辺さん、何かちょっとしたことでも良いのでネタのアイデアとかってあります?」
その後、田辺さんは岩のように黙り込み、話し出したと思ったらずっとお金の話をしてきました。そして何とかネタ作りが終わったとき、田辺さんは、
田辺さん「みたらしちゃんに渡す琥珀糖のおみやげ持ってきて良かったよ。琥珀糖渡さなかったらただの金に汚い奴が移動しただけになってた」
と言ってタクシーに乗って帰って行きました。
私「これ、田辺さんからお土産だって」
もらった日は夜遅かったので、後日、おやつの時間にその琥珀糖を息子に渡しました。息子は「きれい!美味しい~!」と大喜びし、
私「それあんたが昔回し蹴りをくらわしたお姉さんがくれたんだよ」
と、私が伝えてもそれを理解しているのかいないのか踊り狂っていました。私はそんな息子を動画で撮影し、田辺さんに送りました。
田辺さん「あら~!ま~!踊ってる!」
と、その動画を見て田辺さんも喜んでくれて、珍しく田辺さんと息子の関係がハッピーエンドになって良かったと思いました。なぜかというと大体二人は最初仲良く始まってもバットエンドで終わるからです。最初からずっとバットでバットエンドになるときもあります。
※バットエンド例 あんりちゃんと言えるようになったのに田辺さんはなかなか覚えない息子に『はーい田辺よ!私が田辺さんよー!田辺!た、な、べー!!』と伝え続ける動画を田辺さんが『みたらしに見せて!』と送ってきたことがありました。一応息子に見せたところ、ちらりと見て
息子「もういい」
と、言って終わりました。私は田辺さんに「もういい」の部分は伏せて動画を見せたことだけ伝えました。次の日、私が全くそれと関係なく『息子が怖い夢を見たのか今日は泣きながら起きてきた』という話を田辺さんにしたら、田辺さんが『もしかして昨日私が送った田辺動画のせい?』と自分の動画を呪いのビデオみたいに言っていました。
話を戻します。
田辺さんから琥珀糖をもらってから数日後。短い期間で再び田辺さんに会う用事がありました。
田辺さん「はい、これ琥珀糖。みたらしちゃんに」
私「え、この前もらったばかりだけど」
田辺さんは新たな琥珀糖を渡してきました。まだ、我が家にこの前もらった琥珀糖が残っています。
田辺さん「みたらしちゃんが琥珀糖好きならぜひこれもって思って!この琥珀糖も美味しいしとってもきれいよ!」
私「良いの?」
田辺さん「お願い!みたらしちゃん琥珀糖好きならこれをあげたいの!!」
私「わかった!ありがとう!」
田辺さん「あんなに『きれい~美味しい~』って言ってるみたらしちゃんの動画見たらあげたくなるわよ!もうこれから毎回琥珀糖あげようかしら」
私「なんかそれ紫のバラの人みたいだね」
※紫のバラの人とは漫画「ガラスの仮面」に登場するキャラクターで、毎回応援メッセージとともに紫のバラを送り主人公を励ますファンです。因みに紫のバラの人は主人公が勝手に呼んでいるあだ名で、紫のバラの人本人はあなたのファンと常識的な差出人名にしており、自分で紫のバラの人ですと名乗っているわけではありません。
田辺さん「私も紫のバラの人みたいになりたい!」
私「じゃあ田辺さんは琥珀糖の親分だね」
田辺さん「琥珀糖の親分良いね!採用!」
嫌がるかと思ったら、まさかの採用でした。
私「紫のバラの人みたいに琥珀糖と一緒にいつもあなたを見ています。ってメッセージ添えるのどう?」
田辺さん「それすごくロマンチックね!確かに私毎日酒寄さんからみたらしちゃんの写真や動画送ってもらってるから間違いなくいつも見てるよ!!琥珀糖にメッセージカードって素敵だよ!
【いつもあなたを見ています。 琥珀糖の親分より】
なんか怖くない?」
私「確かにちょっと怖いかも」
田辺さん「マジ何?だよね!怖い!」
私「琥珀糖の親分って何者?!ってなるね」
田辺さん「誰だよこいつってなるよ!しかもそれ酒寄さんが渡すって、みたらしちゃんはお母さんから渡されるんでしょ!
ママ怪しいやつとつるむなって言われるよ!!
ちゃんと田辺さんからって伝えてね!!」
私「わかった伝えるよ」
田辺さん「お願いよ!絶対よ!」
田辺さんはいつ何に使うかはわからないけど『琥珀糖の親分はとっておくね』と言っていました。
田辺さん「でもみたらしちゃんとお菓子の趣味があって嬉しいわ!」
私「これから二人がもっと仲良くなってくれたら私も嬉しいよ」
田辺さん「ねえ、今度みたらしちゃんにテレビ電話したとき投げチューしてみようかしら!返してくれるかしら!」
そんなことしたらママ怪しいやつとつるむなって言われそうって思いました。
おわり
***
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