一番好きな食べ物
ある日、はるちゃんからLINEでこんな連絡がありました。
はるちゃん「田辺さんが一番好きな食べ物とうもろこしみたいで、誰も信じてくれないって悩んでました。」
私は思わず文面に話しかけていました。
私「私も信じてない!」
実は私もはるちゃんに言われる少し前に田辺さんから「私一番とうもろこしが好き!」と言われて「嘘だ!」と言ったばかりだったのです。田辺さんとは8年か9年くらいの長い付き合いですが今までで一度もとうもろこしが好きと聞いたことはありませんでした。
田辺さん「何で信じてくれないの?」
田辺さんはとうもろこしへの愛を疑われたことで、とても悲しそうでした。だけど私は譲りませんでした。
私「田辺さんの一番はとうもろこしじゃないよ。」
田辺さん「私はとうもろこしが一番好きなんだけど誰も信じてくれない!」
私「なんなら私今初めて田辺さんの口からとうもろこしって単語聞いたレベルだよ」
田辺さん「あんりにもとうもろこしへの愛を疑われたわ!!」
田辺さんの突然の「とうもろこしが一番好き」発言は最初あんりちゃんに何気なく言ったことが始まりだったそうです。それを聞いたあんりちゃんは全く信じてくれなかったようです。
私「突然過ぎたもの。とうもろこしの登場。」
本当に登場が突然過ぎて、例えば漫画などにあるピンチになった主人公の田辺さんをとうもろこしが格好良く庇って
敵「ここが貴様の墓場だ!くらえ!!」
田辺さん「きゃー!」
初登場とうもろこし「危ない!!(田辺さんを庇う)う、うわー!!」
田辺さん「とうもろこしー!!」
とうもろこし「君に涙は似合わない、、、パタリ」
と、敵にやられても「え?こんなキャラいた?!」という所が気になって、誰も悲しめないレベルに思入れが無いのです。とうもろこしは悪くありません。あまりに突然過ぎたのです。
田辺さん「私の母親は知ってるよ!私がとうもろこし好き過ぎてること!!」
私「絶対一番じゃないよ。とうもろこし。」
田辺さん「信じて!!」
私「こんなに田辺さんを信用できないの初めてだよ。」
田辺さん「信じて!あんたと行った祭りで焼きとうもろこし食べてたよ!!」
私「田辺さんはチーズケーキとかタピオカのほうがイメージ強いよ。」
田辺さん「あんた!!コーンスープは家でめちゃくちゃ飲んでるよ!!・・・今ちょうどパンプキンスープしかないけど!!」
田辺さんは正直者だなと思いました。
私「ねえ普通にとうもろこしが好きじゃ駄目なの?それなら信じられるよ。」
田辺さん「いや!私はとうもろこしが一番好きなの!!」
私「悔しいよ。私。信じてあげられないのが悔しい。」
田辺さん「ねえ私の母親に確認してよ!!私のとうもろこし好きを!!」
それはちょっと面倒だなと思いました。
私「私さ、田辺さんの一番好きは白玉だと思ってたよ。」
田辺さん「ああ!私白玉も好きよ!」
田辺さんは事あるごとに白玉の話を私にふってきましたし、他の人に白玉の話をしているところも見ていました。テレビでも電波に乗せて白玉の話をしていました。
ある日、私はぼる塾が出ているテレビ番組を見ていました。番組内で、田辺さんがわざわざ話の流れを遮って、
「私、白玉が大好きなんです。白玉パーティーするくらい。」
と言っていました。残念ながら他の出演者の人に白玉パーティーが何なのか伝わらなかったようで田辺さんは番組を変な空気にしていました。私は以前田辺さんの白玉パーティーに遭遇したことがありました。
それはコンビ時代の話です。(ぼる塾はあんりちゃんとはるちゃんのコンビ「しんぼる」と田辺さんと私のコンビ「猫塾」が合体してできたカルテットです。)ある日、同期の家に泊まっていた私は深夜に気配を感じて目が覚めました。
(・・・何か動いてる?)
私の枕元で何かがもぞもぞと動いています。隣に置いていた携帯電話を見ると夜中の2時過ぎでした。恐怖心はありましたが、おもいきって視線を向けました。
田辺さん『やだ!起こしちゃった?』
私『・・・何やってるの?』
田辺さん『白玉パーティーよ。』
私の枕元で田辺さんが白玉を食べていたのです。
田辺さん『出来たてよ。酒寄さんも食べる?』
私は新種の妖怪かと思いました。
また、別の日です。その時も深夜に気配を感じて目が覚めました。
『・・はあ、はあ』
荒い息遣いが聞こえます。隣に置いておいた携帯電話を見ると夜中の2時過ぎでした。恐怖心に打ち勝って視線を向けました。
田辺さん『・・・やだ!起こしちゃった!』
私『・・・何やってるの?』
田辺さん『・・・ずんだ・・・作ってる・・・』
私『こんな夜中に?』
田辺さん『白玉パーティーしようと思って一からずんだ作ってるんだけど、枝豆の薄皮剥くのが大変で・・・。』
私は枕元に変態がいるのかと思ったら、ずんだを作る田辺さんだったので安心して眠ることができました。
そしてまた別の日です。私は深夜に気配を感じて目を覚ましました。
『・・・すん、くすん』
女の啜り泣く声が聞こえます。隣に置いておいた携帯を見ると夜中の2時過ぎでした。恐怖心に負けずに視線を向けました。
私『・・・どうしたの?』
田辺さん『フルーツ白玉作ったんだけど、缶詰の汁捨てたら甘みがないの・・・ぐすっ・・・せっかくの白玉パーティーなのに・・・』
私『なんで泣いてるの?』
田辺さん『悔しくて・・・・夜中に痛恨のミス!!』
現在に戻ります。私は田辺さんと白玉との怪談を思い出して懐かしくなりました。この気持ちをえもいというのでしょうか。違う気もします。
私「白玉パーティー懐かしいね。」
田辺さん「よくやってたわ!真夜中の白玉パーティー!」
私「田辺さんよく真夜中にパーティー突然始めてたよね。」
田辺さん「そうね!深夜にナポリタンパーティーもしたよ」
私「ナポリタン?」
田辺さん「テレビでマツコさんがナポリタン食べてて一緒に見ていた同期と食べようってなって材料買いに走ったの!」
田辺さんはメロスのように友のためには絶対走りませんがナポリタンのためなら走る女です。
私「深夜に面倒じゃない?」
田辺さん「食べない方がおかしくなりそうだったわ」
食べていても結局おかしい人にはなってると思いました。
私「私がその場にいたら枕元でナポリタン食べられてたんだね。」
田辺さん「ええ!」
想像したらすごい絵面だなと思いました。
田辺さん「懐かしいね。酒寄さんが寝てる時に色んなパーティーしたよ。」
私「例えば?」
田辺さん「たこ焼きとか餃子とか、後、チキンと柚子胡椒のパーティーとかハヤシライスパーティーとか開催したね。簡単なのだとお菓子パーティー。」
人の枕元でめちゃくちゃパーティー開いてるって思いました。
田辺さん「でもまあ、やっぱり私の代表作は白玉だね。」
とまるで映画監督のように深夜に白玉を食べることを言ってきました。
私「白玉好きだね。」
田辺さんは「愛してるね!!白玉は最高よ!!まるまる、茹でる、冷やす!」と言って、
「やだ、丸めるよ!まるまるじゃ私がただ丸くなってるだけじゃん!いひひ!!」
と一人で笑っていました。私は改めて田辺さんに聞きました。
私「ねえ田辺さんの一番好きって白玉じゃない?」
田辺さん「いや、一番はとうもろこしだね!!」
私は田辺さんのことが信じられません。
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