映画の思い出
みなさん、こんにちは。ぼる塾の酒寄です。はじめましての方もいらっしゃると思うので、初めに自己紹介をさせてください。みなさんはぼる塾という女芸人トリオを知っていますか?
「まぁね~」
この言葉のグループと言えば頭に浮かぶでしょうか?私はそのぼる塾の4人目のメンバーです。
みなさん「トリオなのに4人??」
ぼる塾は元々あんりちゃんとはるちゃんのコンビ「しんぼる」と田辺さんと私のコンビ「猫塾」という2組のコンビでしたが、合体して「ぼる塾」になりました。ちょうど結成時、私は息子を出産したばかりだったので育休中というかたちでの参加になりました。しかし、結成して一気に3人が有名になり、世間ではトリオのイメージがついてしまいました。本当は4人なんですよ!この文章で私を知った方は世間から一歩リードしたことになりますね
!おめでとうございます!
それでは改めて、私の映画の思い出を語らせていただきます。
私の映画の思い出は以前コンビを組んでいた田辺さんと共にあります。彼女に出会う前の私はひとりで映画を楽しんでいました。ホラー映画が好きなので、部屋に引きこもってひとりで思う存分恐怖心がマヒするまでぶっ続けで見ることに喜びを感じていました。好きな映画を聞かれたら【羊たちの沈黙】、【13日の金曜日】、【ゾンビ】などの作品を答えていました。そんなある日のことです。まだコンビ時代の田辺さんが、
田辺さん「酒寄さんが絶対に好きな映画を見つけたよ!」
と、嬉しそうに話しかけてきました。私が「どんな映画?」と返すと
田辺さん「カーズ2!!」
田辺さんは元気よく答えてくれました。私は田辺さんに好きな映画は「羊たちの沈黙」と話していたし、田辺さんも「あら!怖いのが好きなのね!」と言っていたので私の映画の好みは知っているはずです。【カーズ】といえば、ピクサーの有名なアニメーション映画で登場人物が全員車だということは見ていない私でも知っていました。(人物じゃないから登場車?)
私「カーズ2?なんで?」
田辺さん「絶対好きだよ!」
私「カーズじゃなくて?」
田辺さん「カーズ2‼」
私は田辺さんが力強くおすすめしてくれたので、一応義理で見ることにしました。
私(田辺さんはカーズ2って言ってたけど、いきなり2見てもわからないから普通のカーズから見たほうが良いよね…?)
そんな感じで消極的に見始めたカーズがなんとめちゃくちゃ面白かったんです。アニメ映画なので勝手に子供向けの内容なのかと思っていたら、むしろ大人に刺さるのでは?と思うほどのドラマがありました。最初は「何故車がしゃべってるの?」と思っていましたが、最後の方は「むしろ何故私は車じゃないの?」と思うほどにカーズの世界へと引き込まれていきました。その勢いのまま田辺さんおすすめのカーズ2を見て、結果私はカーズシリーズが大好きになりました。(3作品目のカーズ/クロスロードは大泣きです)
私「いや~!カーズ2見たよ!カーズから見たんだけどすごく良かったよ!」
田辺さん「あら、良かったよ!」
私「でもさ、田辺さんいきなりカーズ2すすめてきたけど、あれカーズ見ていないと意味わからなくない?カーズでの関係性を知っていてこその作品じゃない?」
田辺さん「私は酒寄さんにカーズ2を見てもらいたかったけど、まずカーズを見てからカーズ2も見て!っていきなり映画を二作品も見ろって言うとちょっと見る気失せちゃうでしょ?でもさ、カーズ2見て!って私が言っていきなりカーズ2見るバカはいないよ!普通、じゃあカーズも見ようかなって思うでしょ?私は酒寄さんの自主性を信じたのよ」
私「田辺さんはカーズ2のどこら辺が好きなの?」
田辺さん「そうね…確か、ラストで私泣いた気がするのよね…」
私「そんなうろ覚えのレベルですすめてきてたの?!」
田辺さん「いや!カーズ2を見た直後は魂が震えたのよ‼」
そこから私は田辺さんと映画の話をするようになり、映画館にも一緒に行くようになりました。
【ファインティング・ドリー】を見たときは日本語吹き替え版を見ていないとわからない小ネタに二人とも大ハマリし、【ラ・ラ・ランド】を見た時は『カフェでグルテンフリーを気にする客』のシーンで田辺さんと私はお互いの顔を見て頷き、見終わった後は「これはグルテンフリー?」と、そのキャラクターの台詞を真似するのが2人の中で大流行しました。他にも色んな映画を一緒に見ました。
田辺さん「これは私たちが見るべき映画よ!」
ある日、田辺さんはそう言って【プーと大人になった僕】という映画に誘ってくれました。それはくまのプーさんが実写映画になった作品で、大人になったクリストファー・ロビンの話ということで、私も気になっていました。
私「見に行こう!」
田辺さん「お腹が空く時間は外しましょう。集中できなくなるから」
私たちは映画館に向かいました。映画はとても面白く、そして切ない内容でした。大人になったクリストファー・ロビンは仕事人間になっており、家族など色々なことを犠牲にしています。そんな彼がプーさんと奇跡的に再会したことをきっかけに、忘れていた大事なものを思い出すというものでした。私は映画のクリストファー・ロビンほどの仕事人間ではありませんが、大人という紛れもない共通点を頼りに彼に感情移入しながら映画を見ていました。私は自分が子供の頃に大切にしていた、私のプーさんのような存在だったぬいぐるみを思い出しました。
私(あのぬいぐるみ、いつの間にかどこかにいっちゃったな)
映画館が明るくなり、田辺さんに「面白かったね」と伝えようと顔を見ると、彼女は泣きそうな顔をしていました。
私「大丈夫?すごく感動しちゃったの?」
田辺さん「やだ!プーさんに自分を重ねちゃって!私も何人もクリストファー・ロビンを見送ってきたからね!私はずっとみんなで100エーカーの森で遊んでたいよ」
田辺さんは自分をくまのプーさんに重ねて映画を見ていたようでした。
田辺さん「みんな行っちゃうんだよ。寂しいね」
田辺さんは環境が変わって離れていったかつての仲間のことを思い出したようでした。同じアイドルを追いかけていた友達、一緒に渋谷でギャルをやっていた友達。芸人になってからも、芸歴を重ねると辞めていく仲間も増え、田辺さんが一番仲良しだった同期も辞めて故郷に帰りました。寂しそうな田辺さんをケンタッキーに連れて行くとすぐに元気になりました。私は嬉しそうにオリジナルチキンを褒める田辺さんを見ながら、
私(私はずっと田辺さんと100エーカーの森で遊んでいよう)
そう心に思いました。そこから月日は流れ、私は妊娠、出産し、私たちのコンビ「猫塾」は解散して無くなりました。
あんりちゃん「カレーって毎日食べても飽きませんよね」
田辺さん「私気づいたんだけど、ハンバーグもそうじゃない?」
はるちゃん「缶が可愛くてチョコ買っちゃった!みんなにあげるー!」
私「もらうね。ありがとう」
今、田辺さんの100エーカーの森にはあんりちゃん、はるちゃんという新しい仲間が増えて毎日楽しく暮らしています。私も勿論、傍にいます。