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石原慎太郎の初期小説について(1)

「太陽族映画」がヌーヴェルバーグの種子を撒いたと言ってもそれは慎太郎の功績ではない。「太陽族映画」のそれぞれは執筆してあるので参照していただきたいが(別項「シネマde三昧」)、第二次世界大戦後の解放感、空気は世の東西もない全世界的な訪れだった。慎太郎自身は解放感に満ちたアプレゲールを背景として「ジャズ小説」を書こうと目論んでいたようだ。もっとも当時の「ジャズ」とはスィングから、ロックンロールまでをも含んだジャンル的には未分化な「コンテンポラリー・ミュージック」のことで、言わばGHQが持ち込んだ舶来音楽(西洋音楽)のことである。
「太陽族映画」がヌーヴェルバーグの種子を撒いたと言うことが言えるのは、その「スタイル」にある。①主人公は青春期の男女②無軌道な行動(暴力、非行、グレる)③3S(SEX、SPEED、SPORTS)もとは愚民政策のこと。④車(外車、スポーツカー)、ヨットなど⑤パーティや音楽のシーン(ブルジョアジーの暮らしぶり)⑥湘南海岸そこから敷衍して海水浴シーン、水着シーンなど⑦繁華街やクラブ、キャバレーが舞台のシーンなどなど。
これらを意識してヌーヴェルバーグ作品を見ると面白い発見があるだろう。
ではアプレゲールを背景としたジャズ小説を描くのに石原慎太郎は成功したのだろうか?(1)

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