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『奇想のモード』とシュールレアリズム

今日(1月28日)鑑賞に行きました。大流行りの「奇想」を冠した三つめの展覧会ですが、本来なら「奇想」は、シュールレアリズムこそあい相応しく使われるべき言葉と言うべきでしょう。今回のこの東京都庭園美術館での展覧会のタイトルは「MODE SURREAL/A Crazy Love for Wearing」奇想のモード/装うことへの狂気、またはシュルレアリスム)ですから、とんでもないものに出会える期待がありました。そして、あったのです。とんでもないものが!
また、そのトンデモ展示の作品は日本の現代作家の作品の中にもありました。
この展覧会の会場となった東京都庭園美術館は旧宮家である朝香宮の私邸を保存しながら開放しているもので、今回は本館内の展示物が撮影禁止であることに伴うのか、朝香宮の内装も撮影禁止にされていました(新館の展示物は撮影OK)。
サルバドール・ダリ自身が、服飾品、ブローチ、ペンダントなど宝石を用いた装具のデザインをしていたことはよく知られた事実ですが、今回の展示では「第1章有機物への偏愛」、「第5章鳥と帽子」、「第9章ハイブリットとモード」に面白いものがあり、突然提示される「和の奇想ー帯留と花魁の装い」も気を吐いていたと思います。取り分け驚かされたのが、まるで「着る玉虫の厨子」かと見紛うヤン・ファーブル(アンリ・ファーブルのひ孫)の玉虫の羽根で作られた「甲冑」(!)でした。さらに、鳥の羽根で帽子を飾ることにとどまらずに鳥の剥製まで貼り付けた「飾り帽子」(!)もありました。途中にはハンス・ベルメールの人形写真も展示されていて、旧朝香宮邸をゆっくりと巡ってゆくと新館の展示作品ではとんでもない高さの花魁道中の花魁の下駄があったのです(舘鼻則孝2019〜2021年)。さらに花魁の下駄は現代の高いハイヒール(舘鼻2010〜2021)になり、さらに鶏や鳥の脚部をそのままヒールの踵ピンに使ったグロテスクなブーツや、ヒールになるのです(串野真也2009〜2017年)。そして、最後の第二会場の真ん中にひとつだけの光り輝くドレスを見せられると言う流れになっていました(串野+スプツニ子こと尾崎ヒロミ2018年、最後の写真)。ここに至ると、もしこれらをもシュールレアリズムと呼ぶのであれば、イマージュの衝突による「デペイズマン」と考えられていた「シュールレアリズム」も再定義せねばならないかも知れないと最後に考えてしまったのでした。評価(★★★1/2)
東京都庭園美術館『奇想のモード/装うことへの狂気、またはシュルレアリスム』開催中〜2022年4月10日まで

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