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赤と青の輪廻

こちらの記事は
『もっとハロブロを読まれたい!ハロヲタブログ Advent Calendar 2022』
21日目の記事になります。 
#ハロヲタブログアドカレ2022  

『もっとハロブロを読まれたい!ハロヲタブログ Advent Calendar 2022』(通称:もハ読)は、ハロプロヲタクである参加者が2022年に執筆したハロプロ関連ブログの中から、もっと広く読まれたい過去記事を再投稿し、2022年のハロー!プロジェクトを振り返ろう!という趣旨のアドベントカレンダーです。

※こちらは本アドベントカレンダーに新しく書き下ろした記事です。

橋迫鈴は誰の色を継承したのか?

近年のハロー!プロジェクトのグループ史においては、どういうわけか「赤」と「青」がいつも信号のように点滅し続けている。

たとえばアンジュルムの初代リーダー和田彩花のメンバーカラーは「赤」、2代目リーダー竹内朱莉のメンバーカラーは「青」である。しかも面白いことにスマイレージ時代のメンバーカラーは和田が「青」、竹内が「赤」であった(和田に私淑するこぶしファクトリー野村みな美のメンバーカラーが「青(ロイヤルブルー)」だったのも、ここに起因するものである)。スマイレージがアンジュルムに生まれ変わることで、グループの天命を受け継ぐ者たちの色が一旦入れ替わり、その上で「赤」から「青」への継承がなされたという意味で、アンジュルムにおける色の輪廻転生は最初から二重構造になっていると言える。

アンジュルム「SHAKA SHAKA TO LOVE」より

そのことを象徴するのが橋迫鈴であろう。和田彩花が卒業して一月も経たぬ頃に彼女がアンジュルムに加わり、「ピュアレッド」をそのメンバーカラーに纏った時、ヲタクの間からは彼女を和田の継承者として名指す声もあがった。だが彼女が深く私淑する相手、彼女にアンジュルム加入を告げたメンターは、言うまでもなく竹内朱莉である。そして彼女が竹内に私淑したきっかけは、彼女が研究生時代に観た十人十色ツアー、竹内朱莉が「大人の途中」で圧倒的な歌唱力を見せつけたスマイレージ曲メドレーなのだ。だとすれば、彼女は「アンジュルムの和田彩花」の継承者ではない。和田に私淑した野村みな美が「スマイレージの和田彩花」の色を纏ったのと同じように、橋迫は「スマイレージの竹内朱莉」の色を継承したのではないだろうか。

青の王、赤の番長

橋迫鈴のメンバーカラーが「赤」ではなく「ピュアレッド」と表記されるように、メンバーカラーの表記はグループやメンバーによって異なるものである。上記に引用した歌村志麻氏の記事では、その部分が分かりやすく一覧表になっている。たとえば橋迫(ピュアレッド)の右に位置するJuice=Juice(当時)の金澤朋子のメンバーカラーは、同じ色相なのに「りんご」となっている。ところがJuice=Juiceのメンバーカラーの「フルーツ設定」は、ミディアムブルー(確かにそんな色のフルーツは存在しない)をメンバーカラーとする梁川奈々美の加入以降、有耶無耶になってしまっている。たとえば松永里愛のメンバーカラー表記は野村みな美と同じ「ロイヤルブルー」なのだ。

Juice=Juiceオフィシャルブログ 松永里愛「グッズ」より

昨年末にグループを卒業し、今年芸能界から引退した金澤朋子(1995年生まれ)と松永里愛(2005年生まれ)の「師弟関係」は、様々な意味で竹内朱莉(1997年生まれ)と橋迫鈴(2005年生まれ)のそれと好対照にある。この両師弟コンビにあっては、まず「師」と「弟子」のメンバーカラーの組み合わせがちょうど「たすき掛け」の関係になっている。そして既に「師」を失った松永が下掲ブログに感動的に描かれた「自立」を果たしたのが今年のJuice=Juiceだったとすれば、同い年の橋迫にとっては「師」から自立しようと懸命に奮闘し続けた2022年だったのではないか。

このnoteでも常々論じている通り、アンジュルムとJuice=Juiceは異なったグループ再編史を経てきている。先に3代目のリーダーを迎えたのはJuice=Juiceであったが、アンジュルムはJuice=Juiceのオリメン体制終了に先立つこと二年、早々と3期メンバーを加え、スマイレージからアンジュルムへの転生を経験しているのだ。そしてアンジュルムは「Angel&Smile」ツアーでも明らかになったように、今や「スマイレージルネサンス」とも言うべき段階に差し掛かっている。「オリメンのフルーツカラー」には存在し得なかった「ロイヤルブルー」を纏う松永里愛が脱オリメン時代の王位継承者だとすれば、「スマイレージの竹内朱莉」の色を纏う橋迫鈴は、今や一巡した輪廻の歯車に乗って疾走する、新たな「ちょいカワ番長」なのである。異なるグループの異なったフェーズに立つ新世代の「赤」と「青」のライバル関係からは、来年も目が離せない。

「末法」を終わらせる者

一方、モーニング娘。の歯車の回り方はいささか妙なことになっている。今年、このグループからは加賀楓(メンバーカラーはイタリアンレッド)が、彼女が私淑する「師」である石田亜佑美(メンバーカラーはロイヤルブルー)よりも先に卒業してしまった。その辺りが昨今のモーニング娘。が何かと物議を醸す理由になっているという話は、このnoteでも折に触れて論じてきた。だが、加賀の卒業を見届けた今、これはこれで一つの歯車の回り方なのではないか、ということを改めて感じるのである。

モーニング娘。'22石田亜佑美&加賀楓、“ダンス”ツートップが先輩後輩を超えて認め合う部分とは」より

加賀楓は石田亜佑美との師弟関係について問われた時、「私が師ですか?」と冗談を飛ばしたそうだが、案外そこには真実の一端が隠れているような気もする。よく言われるように「師は弟子によって育てられる」ものだからだ。少しばかり頑な少女だった石田が成熟した大人の女性へと変貌を遂げていったのは、彼女に後輩が増えていく中で、「よき先輩」であろうと努力した結果なのだと思う。つまり石田が加賀を育てたのと同様に、加賀が石田を育てたということも言えるのではないか。

加賀楓は卒業前の最後のブログで「ダンスする時いつでも呼んでください!!」と石田亜佑美に呼びかけていた。自分は彼女のこの言葉を、「石田がモーニング娘。を卒業し、セカンドキャリアをスタートさせる時にはいつでも旗揚げに参上する」という誓いの言葉として解釈している。すなわち今までは「赤の弟子」を導く者は「青の師匠」であったが、この先は「赤の弟子」が切り拓いた道に「青の師匠」が続くのではないか、ということである。この師弟コンビがモーニング娘。の外で再び手を組んだ時、今のモーニング娘。のファンダムに漂っている「末法」の閉塞感が大きく変わるのではないか、と自分は密かに期するところがある。

というのは、「末法」とはとりもなおさず、人々が輪廻転生という「法(ダルマ)」を信じられなくなる時代ということだからだ。そしてグループアイドルにおける「来世」とは、卒業したメンバーの充実したセカンドキャリアに他ならない。衆生が「来世」の存在を信じられなくなる時、「現世」への執着が際限なき末法の争いへと繋がるのだと思う。ある者は推しの卒業に悲憤慷慨し、ある者は推しの現役続行に固執し、互いに罵り合うのである。そしてそのようなファンダムのあり方が、メンバーの「転生」をさらに難しくしているのではないかという話は、また別稿でも論じたものである。

だが、時代は着実に変わりつつある。和田彩花は見事な「輪廻転生」を果たし、宮本佳林も「続いていくストーリー」を見せ続けている。ならば、次は加賀楓の番かもしれないのだ。アンジュルムがそうなったように、あるいはJuice=Juiceがそうなりつつあるように、グループとファンダムのあり方全体に大きな「生まれ変わり」をもたらすとすれば、それは加賀楓なのではないだろうか。

おわりに…輪はさらに廻る

アンジュルムというグループにインスパイアされる形で、今年前半に自分が書き下ろした小説『阿修羅の偶像(アイドル)』は、アンジュルム(をモデルとする架空のグループ)が「赤」から「青」へと生まれ変わるのに合わせて、末法の閉塞感に包まれた世界が大きく生まれ変わろうとするさまを描いた物語である。この物語は当初自分が想定していたよりもはるかに明示的な形で、「赤」と「青」の二色によって染め上げられることになってしまった。今回の冬休み公開によせて、2022年のハロー!プロジェクトにおいて現実に繰り広げられた「赤」と「青」の物語の概観をもって、この小説のはしがきと代えさせていただければ幸いである…

と、この記事を締め公開しようと思った前夜、「アンジュルムの竹内朱莉」の卒業が発表された。彼女にも「転生」の時が来てしまった。


2022年に繰り広げられた物語の、これがとどめの章であろう。橋迫鈴も松永里愛のように、ついに「師」からの自立を果たさざるを得なくなったのだ。彼女の武道館での涙の意味も、今になればよくわかる。上述の「スマイレージルネサンス」という自分の言葉も、この報に触れる以前、アンジュルムの武道館公演を見た自分の所感でしかない。だが、その言葉も今や以前とは全く異なる響きを持つことになってしまった。アンジュルムからスマイレージが完全に消える時になって初めて、アンジュルムにスマイレージが全く新たな形で蘇るということなのだろう

赤から青へ、そして再び青から赤へ。やはりアンジュルムは、輪廻の最先端を走り続ける。思えば今一人の偉大なる「青き人」野村みな美もまた、輪廻転生の理を説く経典を残して旅立っていった。

師曰く「ゴールは新たなスタートライン」なのである。

こぶしファクトリー「スタートライン 」より



大アンジュルム宗教歌劇小説『阿修羅の偶像(アイドル)』リンク


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