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薄くて黒く細い線引き
携帯が変わる。携帯の中身も変わる。
変わらないのは、ログインをするときに必要であるパスワードを頭の中で覚えているアプリだけでほかは全て変わってしまった。そして、何もかも新しくなる。メモ帳アプリも文字数をカウントしてくれる便利なアプリ(小説たくさん書いていた)も、すっからかん。文字も何も無い、薄くて黒く細い線しかないほぼ真っ白な画面は私に向かって、もともと私何も持ってないよって顔をしてくる。そうだよねって言わずもがな分かるけれど少し悲しい気持ちが通り過ぎる。そして写真フォルダに2万枚ほどあった記憶の断片たちも今はもう何も持ち合わせていない。携帯を新調するということは、自分自身の心も軽くすることに繋がっているような気がする。見返すものがない、携帯の中に詰め込んだ私の記憶を見返さないという行為自体は、”過去”と”これから”の狭間にあって、あのアプリにある薄くて黒く細い線引きに似ている。
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