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【彼と彼女のものがたり】side O

「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり

現実の光と闇を行き来しながらも

お互いの存在を意識しながら

共に生きていく。
《希望の温度》〜side O〜



「今年はどんな一年になるかなぁ……」

「ん〜〜
………とりあえず。

…………健やかでいたい、かな 笑」

「、、そうだねぇ。

本年もよろしくお願いします。。。」

「、、、こちらこそ」

ボソッと
真意をつくことを言うのは

颯太のパターンだ。


とっくに年は明けていた。


一般的なお正月休みが終わり、

新年が動き出した頃、

タイムラグでゆっくり休める時間が取れるのはいつものことだった。


年末

薫はサロンワーク三昧、

颯太は音楽番組の収録で、

お互いに

自分に集中するのが毎年恒例なのだ。




年末年始「独特の勢い」に流されるように。

けれども、

それに飲み込まれないように。

それぞれの立ち位置で

踏ん張り期間がひと段落して、

お互いに深呼吸が必要だった。




「海、見たい。」


大晦日の仕事終わり
(正確にはもう元旦になった朝方だが。)
颯太から連絡があった。

「初日の出、まだだよね??
じゃ、一緒に行こ」

(海で現地集合って初めてかもな、、)

軽いノリで返信した。



少しずつではあったが、

自分達の「日常」は戻りつつあった。

けれども、

それはまったく同じではなく。


微かな変化を感じ取りながら、

新たな方向性を見出すような、

「希望を纏った日常」だった。





「だいぶ慣れたの?」

「んー通うのは、ね。
こっちの暮らしはまだまだこれからって感じ。」

「今度ね、
野菜の通販やってみようかと思ってて!

近所のおじいちゃんおばあちゃんと仲良くなったから。」

「産直的な??」

「そうそう!

価格調整で出せないやつ

いっぱいあるんだって。

おじいちゃん達ネット出来ないから。

ちょっとお手伝い出来ればいいかな〜って。」

「地魚とかもいいよなぁ、、」

「お魚はお勉強しないと難しいよ〜??」
……颯太さんの方が詳しいでしょ」

「俺、モニターやるよ」

「釣り船やってる人いるから聞いてみるー!」


何気ない生活の中でも、

面白そうだな!と思うことは数えきれないほどあった。

出来るかどうか、は全くわからなかったが。


(出来るかもしれないことは
生活の中に沢山隠れている、、、)

と薫は思っていた。


「私ね、
ずっと海が怖かったんだよね。。。

地上じゃない感 笑

見てると、飲み込まれていきそうに感じてたの。」

「先が見えないからかな、、、?」

「………うん。

拡がってく感に慣れてないだけかもしれない。」

「んー、、、
自由だと思うと、

確かに恐い時もある、、、

あるけどさ。

………薫は

ひとりじゃないだろ……???

……ちゃんと守られてる。」

「………そだね」



颯太の手が、

いつもより3割増しに温かく感じたのは

(冬の海風のせいだけではない、、)

と薫は思っていた。



「恐いのが悪いわけじゃないって思うよ。

だから、
ちゃんと立とうって思うし、ね」

「ん。。。」


颯太の眼差しはどこまでも優しく、
涙が抑えきれなかった。


「もう少しスローダウンしよう??」

柔らかい声色に

反比例するように

強く握られた指先から

颯太の大きさを感じていた。











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