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【彼と彼女のものがたり】side D

「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり

現実の光と闇を行き来しながらも

お互いの存在を意識しながら

共に生きていく。
《吾輩は犬である》〜side J〜


颯太は朝から玉ねぎを刻んでいる。

、、、どうやら、

要人が来るようだ。


颯太は決まって、
誰かを招く時、お手製のカレーを仕込むんだ。

オイラは玉ねぎは食べられないから、
林檎のお裾分けを頂戴するのを待っているしかない。

「ジャコ!!林檎だぞ〜」

(きたーー!!!)

近頃は滅法カラダが重くなった。

歳のせいか、、、?

でも、好物の林檎のためだ。
オイラは立ち上がった。

「明後日、大事な人が来るんだ。。。
ジャコにも会わせたいと思ってさ。」

黙々と林檎を食らうオイラに

颯太は独り言みたいに言った。

(ふーん、、、
オンナかな??)

(ま、颯太の要人に

苦手な奴はいないし、、問題ないよ?)

そう答えながら、颯太の手を舐めた。



「こんにちは〜!」

「迷わなかった??」

「うん、意外と近くてびっくりしたー」

「どうぞ、適当に座って?」


(、、、要人ってコイツか?)


「あ!はじめまして!
写真で見るよりおっきいねぇ」

(ちっさい手だな)

差し出された手の匂いで


怪しい奴かどうかを確認するのが、

オイラの流儀だ。


「こんにちは〜薫です!」

慎重に鼻を近づけると、
しゃがんだ姿勢のまま、まんまるな目で

薫はオイラを覗き込んだ。


(んん、、、?
颯太の匂いがするぞ、、、??

、、、、

こんな奴、今までいない、、、)


オイラはもう一度確認の為、

鼻を近づけ


手を舐めてみた。


「、、、大丈夫みたいだな」

「よろしくねぇ」


薫という奴は

オイラの顎をゆっくり触ってくれた。

(手つきも合格だな、、)


「薫、

ごはんとナン、どっちがいい?」

「、、、どっちも! 笑」

「りょーかい」

「お手伝いある?」

「じゃあ、これお願いしまーす」


、、、なんだかニンゲン二人は

やけに楽しそうだ。

いい大人がはしゃいでいるのも

悪くはない。


仲間に入れないオイラは

食べ終わるまで一寝入りでもするとしよう。。


まぁ、颯太がご機嫌なら、

それに越したことはないな。


(颯太があんな風に笑うのは

いつぶりだろう、、、?)


早百合が居なくなってから、

この家にオンナっ気が一切消えたんだ。


くしゃみをしたくなる化粧品の匂いも、、

洗剤の爽やかな香りも、、、


薫は初めてだけど、、

昔からここにいたみたいに感じる。


違和感がなさすぎるくらいに。


正直、

早百合と颯太以外のニンゲンは

信頼できないと思っていたけれど。。。


薫なら、

うまくやれそうな気がする。


何より、颯太があんな顔をするのが

答えだろう?


もう、辛そうな颯太はオイラは見たくない。


(颯太、よかったな、、)


スパイスのいい香りと二人の笑い声の中で

うとうとできるオイラは幸せものだと

思っていた。





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