肺高血圧

肺動脈塞栓

2020年心臓麻酔過去問:

PHについて正しい二つは

a.woodでの値は変換できる 
b.woodでの計算式は心拍出量を含む 
c.アイゼンメンジャーは心肺移植適応
解答:ab
b.◯全肺抵抗 total pulmonary resistance:TPR : mean PAP/CO
肺血管抵抗 pulmonary vascular resistance:PVR :  mean PAP-PCWP /CO
c.×薬剤不応性進行性アイゼンメンジャーのみはIIa
我が国の心臓移植の適応基準の除外条件として肺高血圧症 (肺血管抵抗が血管拡張薬を使用しても6Wood単位以上 )
VSD、PDA、ECD ,TGA,Down症候群、多脾症候群、主要体 側副血行合併例などでは肺血圧症が起こりやすく、ASD では成人までは肺血圧症になりにくい 

大きな心内短絡による肺血流増加と肺動脈圧上昇による組織学的変化は6か月前後から始まり 1歳半~ 2歳以後では非可逆的になる 一部の奇形症候群 例えばDown症侯群合併例や チアノーゼに肺血流増加を伴う大血管転位では生後2~ 3か月から始まることがある

2020年心臓麻酔過去問:
肺高血圧の治療について class1は?二つを選べ

a.アイゼンメンジャー妊婦の避妊

b.アイゼンメンジャーでボセンタン投与

c.アイゼンメンジャーでシャント閉鎖

d.非アイゼンメンジャーで小シャントの閉鎖

e.非アイゼンメンジャーでPVR↑を伴うほどのPHの大シャントの閉鎖

解答:🆎

a.◯アイゼンメンジャー妊婦の避妊 Class I

b.◯内科治療はボセンタンのみ classI

c.×アイゼンメンジャーでシャント閉鎖  Class III

d.×非アイゼンメンジャーで小シャントの閉鎖 Class III

e.×非アイゼンメンジャーでPVR↑を伴うほどのPHの大シャントの閉鎖 基本的III

PVR <2.3 Wood 単位  4 Wood 単位 m2 の症例でのシャント閉鎖  IIa

2.3 Wood単位  (4 Wood単位  *m2)  ≦PVR I  ≦4.6  (8Wood 単位*m2) の症例でのシャント閉鎖  IIb

PVR I   > 4.6 Wood 単位(  8 Wood 単位*m2 )の症例でのシャント閉鎖  III

Eisenmenger症候群に対する治療

内科治療

ClassⅠ NYHA/WHO Ⅲ度へのボセンタン(エンドセリン受容体拮抗剤) 

ClassⅡa

 1 エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)PDE5-Ⅰ(シルデナフィル) PGI2(エポプロステノール プロスタサイクリンI2)  

 2 喀血なし血栓や心不全のある人への抗凝固療法  

 3 酸素投与によりSaO2が上昇し 症状軽快例への酸素投与

 4 Ht 65%で過粘稠により症状がある例での瀉血

ClassⅡb 併用療法

ClassⅢ カルシウム拮抗 

外科治療 ClassⅠ 

a ASDではQp/Qs>1.3で PVR<14は手術適応とする 

  PVR/SVR> 0.85なら適応なし 

0.5< PVR/SVR <0.85なら 酸素負荷、薬物負荷への反応性 、肺生検所見などを参考にして決定 

 PVR/SVR <0.5以下は適応 

b  VSD  肺高血圧のあるVSDでは生後9か月までに根治術を施行することが望ましい 

 Qp/Qs>1.3で PVR<10は手術適応 

 PVRが上昇している症例ではトラゾリン負荷または酸素負荷でPVR<7となる症例は手術適応 

  安静時運動時に明らかな右左短絡のあるEisenmenger症候群は手術禁忌 

c  PDA開存 左右短絡を有していれば手術適応とする 

d 大血管転位 肺高血圧を合併する完全大血管転位では生後3か月までに手術を済ませることを目標とする 

慢性血栓塞栓性肺高血圧症


CTEPH(chronic thromboembolic pulmonary hypertension)

定義:

器質化した血栓により肺動脈が閉塞し、肺血流分布ならびに肺循環動態の異常が6か月以上にわたって固定している病態

慢性肺血栓塞栓症において平均肺動脈圧が25mmHg以上の肺高血圧を合併

肺動脈平均圧が30mmHgを超える場合、肺高血圧→右心不全→予後不良

機序:

① PAHでみられるような亜区域レベルの弾性動脈での血栓性閉塞

② 血栓を認めない部位の、増加した血流に伴う筋性動脈の血管病変

③ 血栓によって閉塞した部位より遠位で、気管支動脈系との吻合を伴う筋性動脈の血管病変

基礎疾患:

血液凝固異常14.6%(そのうち抗リン脂質抗体症候群75%)

深部静脈血栓症の既往が50%

心疾患12.8%

悪性腫瘍9.8%

明らかな基礎疾患がない43.9%

治療:

①薬物治療:

  • 抗凝固療法

  • 酸素療法

  • 血管拡張法 HOT

リオシグアト(可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激剤)

内因性一酸化窒素(NO)に対する可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)の感受性を高める作用と、NO非依存的に直接sGCを刺激する作用の2つの機序を介して、環状グアノシン一リン酸(cGMP)の産生を促して血管を拡張させる

②カテーテル治療:BPA(バルーン肺動脈形成術:balloon pulmonary angioplasty)

適応症例

主な対象

① PEA の施行困難例

病変が区域動脈以下にあり、外科的に到達困難、もしくは区域動脈から近位部にあるが、手術に支障をきたす合併症などのためにPEA を施行しない症例

PEA 後に肺高血圧が残存もしくは再発した例

② 内科的治療で効果不十分例

内科的治療によってもNYHA/WHO機能分類Ⅲ度以上(平均肺動脈圧が30mmHg以上または肺血管抵抗が300dyne・sec・cm-5 以上)

③ 説明と同意

病状およびBPAのリスクベネフィットを十分に説明したうえで本人(および家族)がBPAを希望している

④ 除外基準

重度の多臓器不全、とくに腎機能障害

③外科手術:(PEA,pulmonary endarterectomy )肺動脈血栓内膜摘除術

超低体温間歇的循環停止法を用いて行われる両側肺の肺動脈内膜摘除法

器質化血栓が葉動脈から区域枝近位部に存在する中枢型CTEPHに対しては外科的手術であるPEAが第1選択かつ根治術

末梢型の方が血栓を摘出しにくく、手術成績は不良

適応:

平均肺動脈圧(mPAP)≧30 mmHg

PVR≧300 dynes· 秒·cm-5 (正常値 PVR <250dynes· 秒·cm-5 SVR 800-1200dynes· 秒·cm-5 )

NYHA/WHO機能分類≧II度

肺動脈病変の中枢端が外科的に到達しうる部位にあること

重篤な合併症(併存疾患)がないこと

×TR

過去問:

CTEPHについて誤っているものを1つ選べ。

a.pouching defects と表される辺縁鈍な血管の途絶像を示す。

b.バルーン肺動脈拡張術(BPA)の最も多い術後合併症は肺障害である。

c.BPAの合併症としては,肺動脈穿孔、肺動脈破裂、肺動脈解離がある。

d.CTEPH は形態学的に、末梢型がPEAのよい適応となる。

e.わが国の症例は女性に多い。

解答:d

d.×CTEPH は形態学的に、中枢型がPEAのよい適応となる。

e.○わが国の症例は女性に多く、(女性 2.6:男性 1)、海外に性差がない

過去問


慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension; CTEPH)について誤っているものを1つ選べ。

a.基礎疾患として、深部静脈血栓症の既往が50%に認められる。

b.平均肺動脈圧 ≧ 30 mmHgは血栓内膜摘除術(pulmonary endarterectomy; PEA)の適応基準の一つである。

c.肺血管抵抗 ≧ 300 dyne・sec・cm– 5はPEAの適応基準の一つである。

d.NYHA/WHO 機能分類≧ III 度はPEAの適応基準の一つである。

e.重篤な合併症(併存疾患)がある場合はPEAを行う。

解答:e.

a.◯深部静脈血栓症の診断、治療でも、常に肺血栓塞栓症を念頭に置くことが重要.

さらに急性肺血栓塞栓症例では、常にCTEPHへの移行を念頭に置くことが重要

e.×PEA肺動脈血栓内膜摘除術 の条件として、重篤な合併症(併存疾患)がないこと


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