大動脈弁狭窄、閉鎖不全

大動脈弁狭窄症の治療


stage C2(無症状性心機能低下) 重症+症状なし+(他の心臓手術 or EF50%以下)⇒AVR(Ia)

stage C2(無症状性心機能正常) 重症+症状なし+(EF50%以上) ⇒AVR(Ia)

stage D1(症状性高度圧較差) 重症(Vmax≧4m/s・MeanPG≧40)+症状あり ⇒AVR(Ia)

stage D2(症状性心機能低下low flow low PG)  中等症(3−3.9m/s・MeanPG=20-39)+症状あり+EF<50%+(DOB負荷で弁口面積1cm2以下かVmax4以上) ⇒AVR(IIa

stage D3(症状性心機能正常low flow low PG)  中等症(3−3.9m/s・MeanPG=20-39)+症状あり+EF>50%+(弁口面積1cm2以下でstroke volume index<35ml/m2以下・indexAVA<0.6) ⇒DOB5γ負荷で弁口面積1cm2以下かVmax4以上SV上昇>20%→真のAS AVR(IIa)

過去問


LVEF の保たれた無症候性超重症AS に早期手術は必要か?

大動脈弁最大血流速度(Vmax)≧5.0 m/ 秒,mPG≧60 mmHg,AVA<0.6 cm2 の超重症 AS には,無症状であっても手術リスクが低い場合には手術を推奨する

PPM(患者-人工弁ミスマッチ)

定義:植え込まれた人工弁のEOAが生体弁のEOAより小さい)

人工弁狭窄の評価アルゴリズム:

①EOAi(有効弁口面積インデックスeffective orifice area=EOA/BSA

>0.85正常

中等度 0.65~0.85 20-70%

重症 <0.65 2-11%程度 

AVR後の評価 http://masuiii.com/wp-content/uploads/2017/03/%E2%AD%90%EF%B8%8E%E3%80%80%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E5%BC%81.pdf

②最大血流速度 大動脈弁位:Vmax 3-3.5m/s以上 狭窄あり

Vが3m/sを超えたらDVI測り0.3以下なら問題 ATが100超えると人工弁狭窄が疑われる

人工弁サイズが19-21の時は15−25mmHg程度残存していることもある

③DVI(doppler velocity index 無次元狭窄指数)=LVOTの血流速度/大動脈弁位の血流速度

1. DVI正常値0.3以上
2. DVI< 0.25 :人工弁狭窄を疑う
3. *LVOTで吸い込み血流を拾うと過大評価

[大動脈弁位人工弁の重症狭窄]
左室流出路TVI / 人工弁通過ジェットTVI < 0.25

TVIとは、CWで速度をなぞって測れる面積⇒左室流出路(LVOT)断面積×TVI(LVOT)=弁口面積(AVA)×TVI(大動脈弁 )⇒LVOT断面積は長軸で測定し、TVI(LVOT)とTVI(Ao)はそれぞれCWで測定することで、AVAが算出できる

④acceleration time AT:
80-100ms以上は弁狭窄を疑う :
AT>100で形が丸っこいと狭窄を疑う

臨床的意義:

5年後CI低下
慢性心不全のリスク70%増加
1.5年、5年後心イベント増加
5,8,12年後死亡率増加

過去問

心臓外科専門医2011

人工弁の特徴について正しいのはどれか.

a.生体弁の耐久性が患者の年齢によって異なることはない

b.生体弁の耐久性は僧帽弁位よりも大動脈弁位において優れる

c.ステントレス生体弁はステント付き生体弁よりも弁口面積が大きい

d.生体弁は機械弁に比し弁口面積が大きい

e.生体弁は機械弁に比し人工弁感染の発生率が高い

解答:bc

a.×生体弁の構造的劣化は患者の年齢や置換弁位による影響を受け,高齢者であるほど劣化の頻度が低い

b.◯大動脈弁位 や三尖弁位では僧帽弁位よりも劣化の頻度が低い

c.×ステントレス生体弁はステントがない分,与えられた弁輪径に対し有効弁口面積が大きくなる

d.×生体弁の弁口面積は心膜弁がブタ弁より大きいが,最も弁口が大きいとされる弁種でも機械弁とほぼ同等と考えられ,一般的に生体弁が機械弁を上回るとは言えない

e.×生体弁の易感染性については経験的にも文献的にも根拠がない

過去問


TAVIで必ずしも必要とはいえないモニターは?
a.TEE ×
b.PAC ○
c.動脈圧ライン ×
d.ラピッドペーシング○
e.術後抗血小板薬

解答:bd

a.TEEは術後のparavalvler leakageをチェックする必要がある(造影よりもはるかに感度が高い)、更にガイドワイヤーなどによるARの程度を評価したり、腱索などに絡んだ様子の評価、Valveの留置時の方向(M弁に向かっているとか、心尖部に向かっている)などを評価可能

b.PACは必須ではない

d.自己拡張型弁はラピっとペーシングが必要ではなき

二尖弁


頻度 1~2%

マルファン症候群のような遺伝的大動脈疾患や先天性二尖弁,大動脈縮窄症の例では 45mmを超えた場合は侵襲的治療について検討:ストレスが動脈壁にかかる

NCC-RCC(NR癒合の左右型45%),RCC-LCCの癒合(LR型癒合の前後型50%)が多い,NL癒合は5%のみ

◯高齢になると石灰化による狭窄を来しやすい

○若年のARでは弁形成術を考慮する

単尖弁:

交連部が存在する型とない型

小児期に症状あり:交連部のない型が多い

成人期に症状あり:交連部が存在する型が多い

四尖弁:

発生頻度:二尖弁>単尖弁>四尖弁(稀)

人工弁の選択

機械弁および生体弁の長所・欠点を患者に十分説明したうえでの,患者による最終的な人工弁選択 classI C

ワルファリンが禁忌,またはワルファリンコントロールが十分に行える状況にない(服薬コンプライアンス,遠隔地)場合の生体弁の選択 ClassI C

妊娠出産を希望する女性に対する生体弁の選択Ⅱa C

大動脈弁位では60 歳未満,僧帽弁位では65 歳未満に対する機械弁の選択Ⅱa C 

大動脈弁位では65 歳以上,僧帽弁位では70 歳以上に対する生体弁の選択Ⅱa C

十分な抗凝固療法のコントロール下で生じた,機械弁血栓弁に対する再手術における生体弁の選択Ⅱa C

過去問
人工弁について正しいのは?

a.透析患者は生体弁は適応外

b.若年者の方が高齢者より生体弁の劣化は早い

c.感染性心内膜炎に対する弁置換術では生体弁が推薦される

d.生体弁置換後はワルファリン、アスピリン何の投与が必要としない

e.人工弁ではMRIが禁忌

解答:b

b.若年者と三尖弁位は劣化が早い

c.×

人工僧帽弁の耐久性,合併症を考慮 すると,僧帽弁形成術が望ましい場合が多い.弁の穿孔病 変には自己心膜または異種心膜でのパッチ修復術,腱索断 裂には人工腱索での修復が可能である.さらに広範な弁の 破壊に対しては,感染組織の郭清後に,残存組織での弁形 成が可能かどうかを判断することが重要である.一方,感 染が弁輪周囲へ波及して膿瘍を形成したり,正常な解剖構 造が破綻をきたした重症例では,弁置換と弁輪周囲の再建 手技が必要である.感染組織の完全な切除,郭清後,欠損 部位を自己または異種心膜で再建する.

機械弁と生体 弁とのあいだで,感染制御の優劣は示されていない.また, 基部置換を行う場合,アログラフトを用いた場合と,ダク ロングラフトを使用した人工弁(生体弁,機械弁)を用い た場合とで,成績には大きな差違がない 378).経験豊富な施 設からは,Ross 手術の良好な成績も示されている 379,

大動脈弁輪拡大術

この狭い弁輪を拡張し、十分なサイズの人工弁を入れる技術が大動脈弁輪拡張術またはルート拡張術

後方拡張

①ニック法(Nick法):LCC―NCC交連部に近いところを切り込み弁輪を拡張 1size up

左房の天井部分は開けずにすむため比較的簡単な操作で手術が完了

合併症:MR,AVC

②マノージャン法(Manougian法):LCC-NCC寄りで、僧帽弁前尖まで切り込むもので、必然的に左房の天井も開く 2size up

合併症:MR

前方拡張

③今野法(Konno法):RCC中央で弁輪を切開し、心室中隔と右室自由壁までの筋肉部分を切開して複数パッチ侵襲が大きいため、使用頻度が少ない

合併症:LRBBB

× 弁輪拡大手技において,RCCとNCC交連部の弁輪をパッチ拡大する

過去問


心臓血管専門医2016年

大動脈弁置換術について誤っているのはどれか.2つ選べ.

a 弁輪拡大手技において,右冠尖と無冠尖交連部の弁輪をパッチ拡大する

b 同一サイズの弁において,二葉機械弁は生体弁より有効弁口面積が大きい

c 経カテーテル的人工弁は,ステント付き生体弁より有効弁口面積が小さい

d intra-annular positionよりもsupra-annular positionの方が大きなサイズの弁を植込み易い

e 高度prosthesis-patient mismatch(PPM)の指標として体表面積あたり有効弁口面積0.65cm²/m²未満が用いられる

解答:ac

大動脈弁置換術は心臓血管外科手術の中で基本的な手術手技であるが,その人工弁選択に際しホモグラフ

ト,Ross手術による自己肺動脈弁,生体弁(ステント付き弁,ステントレス弁),機械弁更に近年はTAVI弁も普

及しておりそれらの特徴と共に人工弁サイズ選択の基本的な原則を知っておく必要がある.

a) 大動脈弁輪の狭小例には必要な大きさの人工弁を移植するために弁輪を拡大する必要がある.弁輪拡大

 術には無冠尖中央部に切り込むNicks法,左冠尖‐無冠尖交連部を僧帽弁前尖弁輪縁まで切り込む  

 Manouguian法や前方右冠尖から左室流出路に切開を進めるKonno法がある.右冠尖-無冠尖交連部の左

 室側には膜様部,刺激伝導系があり弁輪拡大部位としては選択されない.

b) 狭小弁では特に,同サイズであれば生体弁より機械弁の方が有効弁口面積が広くProsthesis-Patient   mismatchが生じにくいとされている.

c) TAVI弁の有効弁口面積はステント付き弁と同等または大きいとされている.

d) supra-annular位では弁輪上に縫着輪が乗るためより大きな弁サイズを植込みしやすい.

e) 人工弁サイズと患者の体格とのミスマッチはprosthesis-patient mismatch(PPM)とされ1978年Rahim toolaらによって始めて報告された.その後PibarotらはPPMと患者予後との関係を詳細に解析しEffective valve orifice area index, EOAIが0.85cm2/m2以下をPPMと定義した.その後更に中等度PPMはEOAI<0.85cm2/m2とされ,高度PPMはEOAI<0.65cm2/m2が一般的定義となっている.一般的には大動脈弁位の人工弁置換術における人工弁サイズは術後EOAI <0.65cm2/m2以上あることが望ましいとされてい る.


過去問


心臓外科2010

大動脈弁輪拡大術式について正しいのはどれか.

a Nicks法では,RCC-NCC交連部を拡大する

b Manouguian法では,RCC-NCC交連部を拡大する

c Konno法では,LCC-RCC交連部を拡大する

d Manouguian法では,僧帽弁後尖を切開する

e Konno法では,心室中隔を切開する

解答:e

a. ×Nicks法はNCCの中央より弁間繊維三角に弁輪を越えて切開を進めるが僧帽弁前尖までは切り込まない術式。

bd.×Manouguian法はLCCとNCCの交連部より弁間繊維三角に切開を進め、さらに左心房上壁の一部と僧帽弁前尖中央まで切開を伸ばして、左心房切開部と僧帽弁前尖にパッチをあてて大動脈弁輪を拡大する方法と僧帽弁をも切除して僧帽弁輪の拡大を加えて二弁置換を行うものと二通りの方法がある。

c.×Konno法は右室流出路と大動脈基部を同時に拡大する前方拡大方法であり、後方拡大よりもその拡大率は大きいことが利点である。

e.◯Konno法はRCCから右冠動脈の左側の弁輪を切開し、心室中隔および右室流出路自由壁を切開して拡大する。

過去問


2016年心臓麻酔

1.TAVI。BAV後に安定していたが、徐々に循環動態不安定に。何が疑われる?

a. 弁輪破裂

b. ペーシングワイヤーによる心室穿孔

c. 穿刺部からの出血

d. AR増悪

e. 空気塞栓

解答:ad

AR 

重症:VC6mm・逆流量60ml/回・逆流率50%・EORA≧0.3 PHT>200

中等症:VC3−6mm・逆流量30−60ml/回・逆流率30−50%・EORA0.1−0.3 PHT 200~500

クラスⅠ

  • 重症+症状あり⇒Ope

  • 重症+症状なし+EF<50%⇒Ope

  • 重症+症状なし+他の心臓手術⇒Ope

クラスⅡa

  • 重症+症状なし+(EF≧50%・LVDs>50mm)⇒Ope推奨

  • 中等症+他の手術⇒Ope推奨

クラスⅡb

  • 重症+症状なし+(EF≧50%・LVDd>65mm・手術リスク低)⇒Ope考慮

重症+症状なし+(EF≧50%・LVDs<50mm・LVDd<65mm)⇒定期フォロー

過去問


ARを起こさないものはどれか

a.弓部大動脈瘤

b.バルサルバどう動脈瘤

c.マルファン

d.上行大動脈瘤

e.大動脈炎症候群

解答:a

大動脈の異常:大動脈瘤・大動脈解離、先天性の疾患(Marfan症候群など)・バルサルバ洞動脈瘤も原因になる

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