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冬の雛の巣

窓際の温度は冷気で少し下がる
暖かい部屋と外気に挟まれ
外が見えないほど窓ガラスは曇る

ここは、おせんべい工場の2階
吹き寄せを作る部署通称『雛の巣』

休憩室から出て来た佐々木さんがぼやいていた
この寒い季節に初夏の商品を検討するなんて
思いつかないと

清水さんが椅子へ座り直す
これで全員揃ったね
来年の夏にだす商品を考えよう

足先が冷えるリノリウムの床は
曇り空と同じくらい鈍く光る

こんな感じの透明の丸い筒型の容器にあられや豆菓子など何層か敷き詰めたらどうですかね?
そして一番上は金平糖を敷き詰めて…
その時古山さんが「あー、確かに3号サイズとか0.5ミリくらいの小さい金平糖を敷き詰めたらいいね」って

半分はカフェオレ味の茶色のにして
もう半分はレモン味の黄色
ピンクもいいね

それじゃ、そぼろ丼じゃないですかーって
小野さんがつっこむ

はじめさんはストーブの上で餅を焼く用意をしている
雲母ガラスの窓から青い火がゆらゆら見える石油ストーブ
その上に網を載せて餅を並べるのだ

冬になると工場でおかきを作る時に出る廃棄用の餅の切れ端を焼くのだ
いびつなかたちの餅の切れ端をはじめさんが並べる様子をみんなはしばらく見つめて無言になる

外気温は2度を下回る1月下旬の午後3時
雛の巣では鳥が産卵したたまごを世話するように
みんなは餅を慈しむ

金平糖は、白と水色真ん中にアヒルか、金魚の粉砂糖で飾りつけしたサブレをあしらうことで一致した

冬なら真っ白な金平糖を敷き詰め、
雪だるまや雪の結晶の砂糖菓子をあしらうのもいいと、思いながら餅が焼けるのを見つめるのでした

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