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研究者低賃金問題に寄せて

研究者の給料、特に人文系界隈の給料が低いという話はよく聞く。
特に非常勤講師の待遇の悪さは何かしら研究活動に進んだ者ならどこかで耳にした人もいるだろう。具体的に相場は幾らかまでは知らないが待遇が悪いのは間違いない。
ここで、私はこの問題に関する素直な意見を述べたい。特に人文系の待遇として捉えていきたい。

まず、こういった待遇の悪さは今後改善されるか、となれば、

ほぼない

というのが私のはっきりとした意見である。多少の改善(月1万くらい?)ならあるだろうが、抜本的な改善はない。なぜか?

人文系研究はお金をほとんど産み出さないものだから

という理由に尽きる。

世間一般の仕事は様々なものであれ、それは客から金をとり、それを対価として商品なりサービスを提供する、金を産み出すものである。なので基本的に相当低くても暮らしていける金額である。
他方で当たり前だが、人文系研究は金をこの仕事に比べて産み出さない。なので必然的に金に恵まれないことになる。
そしてこれまた必然的に、人文系研究がどうして今は待遇が悪い(=貧乏)なのかの説明がつく。金を産み出さないからである。なので実際のところ

人文系研究は金を産まないことをやっているから金に恵まれない

という極めて明晰な論理がある。

ここで誤解が生むだろうから一言添えておきたいのだが、私は善悪的には一切捉えていない。金を産むことをやってるから世間普通の仕事の方が優れているとか、金にならないことをやっているから研究の方が立派だとかそんなことは一切言っていない。私はただ事実的に、論理的に

人文系研究は金を産まないことをやっているから金に恵まれない

ということを指摘しているだけある。

身も蓋もないことを言ってしまえば、研究活動は好きでやってる活動である。世間一般の仕事のように金のために「我慢して」やっているものではない。
研究活動の待遇の悪さに「我慢する」ことはあっても、研究活動そのものを「我慢する」ことはないはずである。
このようにお金にならない好きなことをやっている、という点では本質的にお笑い芸人を目指している、ゲーム配信者を目指している、というのと一緒である。
これら二つに対して待遇が悪いと言っても誰も耳を貸さないが、研究となると待遇の悪さで噴き上がることがある。
なぜか、と問われたらおそらく「レベルが高い」からだろう。厳密にいうと「レベルが高いと思われているから」である。これだけレベルが高いことをやっているから、お金はもっとあって然るべきだ、ということだ。
だが実際に研究がレベルが高い営みかどうかはひとまず置いておくとして、「レベルが高い」からといってそれで全てが免罪符になるわけではない。
東大入試において古代ギリシャ語やラテン語をどれだけ勉強したところで全く無意味なように、「レベルが高い」ことをどれほどやっても、それが金にならないのなら待遇の悪さはいつまで経っても改善しないのである。

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