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ゲーム感想記⑫ーイース・オリジン

「イース・オリジン」はファルコムの「イース」シリーズ七作目である。「オリジン」という名前が付けられているように、「イース」の始まりの物語を描いた作品であり、「イース0」と銘打っても差し支えない。
  
 そもそも本作がでた当時の段階で、「イース」シリーズは六作まであったが、その中で本当の意味で「イース」(舞台の名前)だったのは最初の二作だけである。それ以降は主人公アドルと相棒のドギが変わらず登場し、時系列上は続編であるとは言えるものの、基本舞台としての「イース」は無関係である。本作以降も7、8、9と発売されているがやはり「イース」を舞台としていない。

 そんな中、本作は「イース」を舞台にしたもので、本当の意味での「イース」の作品と言える。そしてその起源を描くのだから、続編であり前日譚なのである。

本作においてシリーズの主人公アドルは登場せず(別のモードで条件を満たせば使用できる)、代わりに三人の主人公を選ぶこととなる。

三人の主人公 左からユニカ=トバ、ユーゴ=ファクト、鉤爪の男

最初はユニカとユーゴしか使用することができず、三人目の鉤爪の男はその二人でクリアしてから使用可能となる。そして鉤爪の男が物語の真相に迫る、続編の「イース」へと繋がっていく。

 舞台は初代イースの最終ダンジョンであった「ダームの塔」(ただし今作ではそのような名称はなく一貫して「塔」としか呼ばれない)。そして物語はその塔を登っていくことに終始する。仕掛けやアイテムも「ダームの塔」とゆかりのあるものもある。

 ゲームとしては作り込みは丁寧であり、爽快感を感じながら気持ちよく物語を進めていくことができる。基本は通常攻撃で敵を駆使していくが、風・火・地のアビリティが各々のキャラにあり、それを補助にして敵を倒したり仕掛けをといていったりする。ボスも今にもシリーズの「イース」を思わせるような、個性あるボスと戦うことになる。「イース6」と3のリメイクである「フェルガナの誓い」をゲームの構造上の土台として本作が出来上がっているが、実際それらの製作経験は十分に活かされていると私は思う。

ただ基本は塔内部で物語は完結しているのだから、広々としたフィールドは今作にはないし、村や街もない。塔の内部には(なぜか)砂漠や水や溶岩とかのフィールドがあり、解いていく仕掛けもある程度多様だが、シナリオ上だけでなく画面上としても一本道感はどうしても拭えない。味方のNPCもいるにはいて話したりもできるが(基本塔の最下層にいる)、RPGでよくあるような気軽に色々と住民に話しかけるような、そういう雰囲気はあまり感じられない。基本ひたすら登っていくのである。

何より本作の真髄を味わいたければ、主人公三人でクリアしなければいけない。つまり三回この塔を登りきらないといけないのである。主人公ごとにシナリオの流れはある程度異なるし、当然性能も違う。進め方や戦うボスにも差異はあるのだが、それでも根本的な部分は同じである。だから前述の一本道感も加わり、どうしても作業感は拭えない。三人目の主人公のみ真のラスボスと戦うことになり、その際の演出はシリーズファンにとっては感動もするが、そこまで辿りつくのは(難易度とは別に)結構きつい。
 ゲームとしてはやはり面白いが、作業感もシリーズ随一である。完全クリアには難易度とは別の意味での、根気が必要となる。

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