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Mami ちゃん

出会いはパリの19区、Parc de la Villette にある
Cabaret Sauvage のコンサート会場の楽屋。

 

 

当時まだパリに着いて1年目で

ダンスの学校に通いながらフェイクファーで作ったウサギの

被りものを作って小劇場でパフォーマンスをしていた私は、

それをたまたまみたロックバンドの女性ヴォーカリストから、

うちのコンサートでなんかやってくれ、

と言われて何も説明されないまま当日会場へ。

 

 

 

 

楽屋に着いて手渡された衣装はハイレグにチュチュ、

胸元にはスパンコールの星が散りばめられた

真っ赤なショーガール風の人生で一生着ないであろうと思っていたものだった。

 

 こんなの着たら公開処刑

 恥ずかしい、帰りたい!!

 これにウサギの被りものなんて アチャパー!!!!

 顔から火が出る             心は撃沈

 

聞いてないよ。。

 

 

その頃別室の楽屋では異様なオーラを放っていた日本人の女の子がいた。

そのバントのコンサートにゲストとして出演するMami Chan band のリーダー、

Mami ちゃん 

 

 最初はお互い警戒していたのか顔を合わせなかった、

挨拶もしなかった、っていうか私はそんな心境では無かった!

 

 コンテンポラリーダンスの学校で現代音楽に合わせて空間演出とか視点とかインスタレーションとか生徒たちと色々話し合って作品を作っている気難しい事がカッコいいと勘違いしている生意気な学生だった。

 

 なのに今夜この衣装でウサギ被って観客の前で踊れだと??

しかも異国のパリ、あまり自分らしくない事はやりたくなかった。。

 なのにもうすぐShowtime

 ギャ~~泣きそう。

でももう腹をくくるしかない

 

 コンサート会場はその日、

劇場をスリーサイドステージ形式にしていた。

舞台とすぐその前にある円形ステージを中心に3周囲を客席がグルリと囲む。

600席、その夜はディナーショー形式

パリ CABARET SAUVAGE


網タイツ、

黒のピンヒール、

半ケツ

ピンク色の照明、

 

 

神さま、私なんか悪いことしました⁇⁇

これは罰ですか?

小3の時に隣の席のクロサワ君に怒ったら、クロサワ君が泣いた。

クロサワ君、ごめんなさい。。

あとは、あとは、なんか懺悔することあったっけ。。

目の前が真っ暗、

プライドズタボロ

心臓が口から飛び出そう、または全身心臓

 

人生終わった。。。

終わった。

そう思ったら段々開き直ってきた

 

 

よしっ!行くぞ!

客席の360度の視線を感じながら

ベトナム風春巻きのように円形ステージを転がったり

リズムに合わせてブルースリーの動きをしたり

お客さんはポカンとして観ている。

 

 

 

お色気のセクシーカードは私には一枚もない。

 

 

お笑い第二、第三世代をみて育ったプライド、

手元にあるお笑いカードを元に動きをコンテンポラリー風に抽象化しアレンジする。

インパクト、リズム、迷うな、何かやれ、空間に !!!!
何でもいい、動きをステージにブッ込め!!!!

 

 

 

衣装や照明は無視して音楽に入り込んで時にはニルヴァーナのカートのように

舞台を駆けずりまわったり出来る事は何でもした。

 

人生もう終わりだ、という思いが時々湧いてくる。

 

決して色っぽい動きではなかったけれどドリフダーズっぽいズッコケエネルギーで嘘の無い動きでぶつかって行けた事はよかった。

 

けどやっぱりあの状況は恥ずかしい。

 

そして客席の向こうからMami ちゃんの眼差しを感じていた。。

出番が終わって楽屋ですぐ衣装を脱いでなんだか興奮と悲しさと泣きたい気分で家に帰った。

よくやった、もうやだ、よくやった、もうやだ、二つの言葉が交互に内臓をハック

 

 

風呂に入って布団にくるまってもまだ恥ずかしい。。

半ケツだったし、網タイツだったし。照明ピンクだったし。。

なんだったの、あれ。。

 

後日、友人のダンサーがMamiちゃんを知っていて私に

「キャバレー ソバージュで踊ったんだって?

Mami ちゃんがウサギの子が一番良かった、って言ってたよ。」

死にたいくらいにこの世から消えたいくらい、おそらく人生で一番恥ずかしい思い出になるはずの出来事だったのにその一言で救われた。

 

冷汗三斗の思い

 

そのお陰でMamiちゃんへの友達切符を手に入れた? 

彼女に何かが伝わった?

 

 

それ以降Mamiちゃんからライブに招待されたり友達付き合いが始まった。

Mami ちゃんは国立音大を卒業し渡仏後Mami Chan バンド結成。

卓越した技術とぶっ飛んだセンスと遊び、リズム感、Mamiちゃんの音楽の世界のファンはパリにフランスにヨーロッパに沢山いた。

 

巻きタバコ、ブラックジョーク、

 

無邪気な毒のある可愛い花のような可笑しな女の子

 

 

 

時にはニヒルなマダムのように笑い、

時には小学生のようにふざける


お互いズッコケてるから馬が合った。

今の地球に最も必要な

ふざけていて根アカで何でもギャグにする大輪の花のような華麗なるシンガー

2020年の2月に天国に旅立った

地球にいても天国にいても宇宙にいても

MamiちゃんはMamiちゃんで変わらずにバンド組んでるに違いない


今の世界で起きている状況を天国から見てMamiちゃんならどんな曲にしてくれるんだろう、と想像する

年下の現仏大統領に彼女だったらどうツッコミを入れるのか知りたい

会いたい、話して一緒に笑いたいし、ふざけたい


ガーリーで豪傑、小さくで華奢だけど大物のオーラ

思い出すだけでも楽しくなっちゃく友人、

宝です





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