アルケミー探訪記(イニストラード〜ニューカペナ)
1.はじめに
2021年12月9日。MTGアリーナに新フォーマット「アルケミー」がもたらされました。賛否両論で始まったこのフォーマットも、「イニストラード」「ネオ神河」「ニューカペナ」から3つの追加セットを貰い、だいぶスタンダードとは趣きの違ったフォーマットになったのではないでしょうか。
そして、来たる2022年7月7日に、「アルケミー:バルダーズ・ゲートの戦い」がリリースされることになり、俄然注目されるようになったと思います。
今回は、バルダーズ・ゲートのリリース前に、現在のアルケミーの環境の総括をしてみたいと思います。
2.アルケミーの主要アーキタイプ
まずは、現在のアルケミーの主要アーキタイプを説明したいと思います。今月のランク戦で対戦したデッキの上位4種です。
・グルール狼
アルケミーの初期から存在するアーキタイプですね。「執拗な仔狼」「指名手配の殺し屋、ラヒルダ」というアルケミーのカードの中でも単純に強いカードをフル活用できます。
・イグナスコンボ
「にやにや笑いのイグナス」+「語りの神、ビルギ」のコンボはストリクスヘイヴン期にスタンダードに僅かながら存在しました。アルケミーでは「ビルギ」の代わりになれる「ゆすり屋のボス」、コンボパーツを出せることもある「審問官の隊長」、更なる勝ち筋「舞台座のお祭り騒ぎ」を得て躍進した印象です。ランク戦のダイヤモンド帯で多く見かけるようになりました。
恐らく、現アルケミーのランク戦では「告別」を採用したコントロールが少ないことも躍進の原因かと思います。
・ラクドス吸血鬼
「鬼流の金床」を利用したデッキは、アルケミーでも一定の人気があります。「電圧のうねり」が1マナで「ラフィーン」を除去できるラインにあることから、このデッキの地位も向上した模様。「鏡割りの寓話」のゴブリンから出る宝物でも「鬼流の金床」を誘発させたり、「電圧のうねり」のコストになるのも追い風です。
・エスパーミッドレンジ(ダンジョン型)
今月のランク戦で最も戦ったデッキです。アルケミーでは「勝利した冒険者」のパワーが2になり、クリーチャー3体がかりじゃないと戦闘でのブロックが不毛になり、実質的にアンブロッカブルに。
「運命の占者」+「策謀の予見者、ラフィーン」、ダンジョン探索等兎に角攻め手が減らないデッキですね。
3.エスパーミッドレンジ
ここで、私が今月のランク戦で使ったデッキを紹介します。
エスパーダンジョンとは大きく違い、除去・打消しを増やしてフラッシュとしても動けるようになりました。
全体的なカード選択として、「運命の占者」と共に戦うデッキ構築を意識しています。カードタイプを散らすよりも固めた方が良い部分、逆に敢えてカードタイプの枚数を減らして「謀議」をサーチと見立てる部分と分けました。
インスタントはデッキの対応力に直結するので、枚数は多く取りつつ、種類を分散させています。旬を過ぎた「かき消し」を「消失の詩句」に「運命の占者」を通した謀議で替えて逆転に繋がることも多かったです。
クリーチャーも「運命の占者」と戦うよう、自らディスカードできるもの、捨てても役割を果たすものを取り入れています。ここまでが、エスパーダンジョンと差別化した部分ですね。
では、個別カードの解説へ移ります。
・「幽体の報復者」
実質的には2青青位のコストだと思っていただきたいカードですね。これまでは、コンバットトリック用途が強かったですが、「神河:輝ける世界」で登場した「鏡割りの寓話」の3章を止める役割がここに来て追加され、万能感に拍車が掛かりました。
・「敬虔な新米、デニック」/「敬虔な心霊、デニック」
基本的に「謀議」で捨てるためのクリーチャーです。即座に4マナで裏面で場に戻すというわけでもありませんが、このデッキの強さを支えています。
裏面の「敬虔な心霊、デニック」は謀議で手札からクリーチャーを捨てたり、対戦相手のクリーチャーを除去して墓地に落としても調査が誘発することには驚きましたね。
表面のデニックは絆魂持ちということで、「ラフィーン」の謀議や「放浪皇」の+1で強化する土台としても適しているのも忘れてはいけません。
・「常夜会一家の介入者」
スタンダードのエスパーフィッシュでも採用されている優秀クリーチャーですね。環境が遅くなるほど有効になる局面が増えます。「謀議」は「運命の占者」が居る状態で使うと手札を増やせる行動になるので、謀議を持つクリーチャーをもうひと枠増やしたかった所に噛み合ったカードです。
・「現実の断片化」
このカード、この一ヵ月間アルケミーのランク戦で使っている対戦相手を見なかった一枚でした。恐らくデメリットを嫌ったものと思われます。
しかし、1マナ以下のパーマネントに対しては完全な除去になります。長い目で見た時に、クリーチャーを呼ばれたとしても驚異になるものがどれだけあるのでしょうか。「ラフィーン」「無常の神」「ラヒルダ」「鬼流の金床」等放っておけばゲームを壊すカードがひしめく環境に於いてこれほど頼れる除去はまたとないと思いますね。
折しも、現アルケミーのトップメタに君臨しているエスパーダンジョンに1マナクリーチャーは居ませんね。「勝利した冒険者」を被害なく最小のコストで処分できるのは、同デッキと対戦したときに大きな利点となり得ます。
・「情け無用のケイヤ」
これはTwitterのフォロワー様から教えてもらったカードです。この枠に本来は「欲深き者、エヴリン」が入っていました。単純に相手のクリーチャーをブロックして2ドローでも強いという判断からです。
しかし、先に紹介した4種のデッキをはじめ、アルケミーはえげつない程アドバンテージを取るカードが多く、クリーチャー1枚で押さえつけることができません。
結果、デッキの対応力を引き上げるカードを探したところ、「情け無用のケイヤ」を教えてもらったわけですね。-3で厄介なパーマネントを確実に対処して、そこから+1で自軍のクリーチャーを保護するのが非常に強かったです。結果的に使って良かったと心から言える一枚でした。
ちなみに、「情け無用のケイヤ」の+1でカウンターを置くカードとして優れているのは「幽体の報復者」と「敬虔な心霊、デニック」です。後者は除去されたら追放される降霊クリーチャーの問題点を補っていると言えます。
ここまで長くなりましたが、サイドボードの簡単な説明に移ります。
各マッチアップに於けるサイドボーディング
ナヤ・ルーンやイグナスコンボは同一ターンに多くの呪文を唱えることが勝ち筋なので、「エメリアのアルコン」で減速を狙います。クリーチャー主体の相手には「復讐の伝令」が攻守を切り換える一手となりますね。機体やミシュラランドも壊せる点も優れています。
お相手のゲームレンジや採用カードの重さ次第ですが、「常夜会一家の介入者」でテンポを稼げない時は「ヘンリカ・ダムナティ」と入れ替えを行います。これは全てのマッチアップで共通事項です。
アルケミーをやって最も多く戦ったデッキタイプですが、基本的にお相手の繰り出したカードを一手で仕留めることを念頭に戦います。アーキタイプは同じでも使用カードは当然ながら差がありますので、「消失の詩句」を残すか等柔軟性が必要です。
「ラフィーン」や「運命の占者」は、打ち消すか「現実の断片化」等で素早く対処しましょう。とにかく、フラッシュデッキのように振る舞います。
1ゲーム目は「現実の断片化」に「鬼流の金床」「鏡割りの寓話」等を処分して貰いますが、2ゲーム目以降はよりリスクの少ない方法で対処します。「血塗られた刷毛」のダメージが怖いマッチアップなので、血トークンを無闇に増やされたくはない為です。
ゲートプランとしては、飛行がノーマークなので「ラフィーン」の個人技で突破したり、「冥府の予見者、ヘンリカ」の絆魂で回復しつつ素早くビートダウンします。
・その他マッチアップについて
スタンダード/アルケミーは「表現の反復」も使える等、遅めのデッキが強い環境です。そういった「運命の占者」を使わないデッキには「真っ白」を使います。
簡単ではありますが、アルケミーのエスパーミッドレンジの解説は以上となります。
ここまで、ミシックランクに到達した喜びや、調整過程の記録としてこの長文を綴りましたが、この文章を読んでいただいた皆様に感謝いたします。アルケミーで、皆様のマジックライフに新たなる彩りが齎されますように祈っております。
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