2025年の法改正でなにがどう変わるのか 4号建築見直し/建築物省エネ法改正(前編)
こんにちは。ANDPAD ZEROの髙橋です。
いつもANDPAD ZEROのnoteを読んでいただきありがとうございます。
今回はテクノロジーではなく、法改正のお話をさせていただきます。
少しとっつきにくいトピックかもしれませんが、プロダクトやサービスを開発していくには、このようなゲームルールのトレンドをしっかり押さえていく必要があります。
そんな目線で私たちの顧客を取り巻く環境にどんな変化が訪れていくのかをまとめていきたいと思います。
さて、日本での労働環境が日々進化していく中、関連する法律や制度についても現状に合わせて年々変化しています。
例えば、民間企業全体においては、2023年10月から始まるインボイス制度対応や改正電子帳簿保存法への対応。
建設業界においては、2024年の時間外労働の上限規制への対応、さらに、2025年の4号特例の見直し、建築物省エネ法の改正などが挙げられます。
少し先のことだから大丈夫、と顧客が考えていても、そのタイミングに合わせてサービスを提供していくことを考えると、ほとんど時間はありません。
ちなみにアンドパッドでは、2月に指定確認検査機関 大手3社と協業について発表しました。
のちほどまた触れますが、すべての建築の着工前に必要となる建築確認について、今回の協業により、申請側の工務店様・ビルダー様等にとって、審査中のステータスなどが把握しやすくなる機能となっています。
この連携が今後どう上記と繋がっていくのか、、、いろいろと考えることが山積みで非常に楽しいところです。
今回は上記のような検討をするための背景整理として、前編・後編の2回分に渡って、特に2025年の4号特例の見直し、建築物省エネ法の改正についてまとめてみます。
前編では法改正の概要について簡単にご紹介し、後編では、その改正によって建築業界にどのような変化が起こりうるか、この変化をどう乗り越えていくか、といったあたりについて洞察をご紹介したいと思います。
是非一緒に今後について考えていきましょう。
4号特例の見直し
4号特例とは
現行の建築基準法では、建築の着工前に建築確認申請が必要とされています。
建築確認申請は、建築基準法で規定されている制度であり、建築物に関する性能や安全性について建築基準法等の法令に適合しているかどうかを審査するためにあります。
しかし、建築基準法第6条の4に基づき、小規模建築物においては、建築士が設計を行う場合に構造関係規定等の審査が省略されるという制度があります。
この制度が「4号特例」です。
4号特例の見直し
この審査省略制度、いわゆる「4号特例」が2025年4月に見直されることになっています。この4号特例の見直しにあたっては、まず審査省略制度の対象範囲が変わります。
大きく影響を受けるのが、工務店やビルダーの皆様が手掛ける一般的な規模の2階建て木造住宅です。これまで、木造2階建てについては、4号特例として審査が省略されていましたが、見直し後には、審査省略制度の対象外となります。
対象範囲の変化に伴い、これまでは構造規定などの一部の審査が省略されていても、同改正法の施行以降は特例の対象外となる建築物については、建築確認の際に軸組計算書や構造図等の設計図書の提出が必要となります。
なお、申請に必要な図書の種類や、明示すべき事項などについては、今後建築基準法施行規則において2023年秋ごろを目途に規定される予定です。
なぜ4号特例が見直されるのか?
背景には、省エネ基準の適合義務化があります。木造戸建住宅にも省エネ性能が求められる中、断熱材などの添加により構造物全体の重量が増加し、構造に与える影響も少なくないとも言われています。
では続けて、この省エネ基準の適合義務化に関連して、建築物省エネ法の改正についてもみていきましょう。
建築物省エネ法の改正
建築物省エネ法とは
建築物省エネ法とは、エネルギー消費の増加が著しい建築物について、建築物のエネルギー消費性能の向上を図るため、一定規模以上の建築物のエネルギー消費性能基準への適合義務、エネルギー消費性能向上計画の認定制度等を定めた法律です。
特に、省エネ基準適合義務・適合性判定については、以下の2点がポイントとなっています。
①新築時等に、建築物のエネルギー消費性能基準(省エネ基準)への適合義務
②基準適合について所管行政庁又は登録判定機関の判定を受ける義務
これらの実施にあたっては、建築基準法に基づく建築確認手続と連動することで実効性が担保されています。
建築物省エネ法の改正
2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス46%排出削減(2013年度比)の実現に向け、2021年10月、地球温暖化対策等の削減目標を強化することが決定されました。
さきほど、「エネルギー消費の増加が著しい建築物」と紹介しましたが、実は、建築物に起因するエネルギー消費は、日本のエネルギー消費量のうち約3割も占めています。
今般、建築物の省エネ性能の一層の向上を図る対策の抜本的な強化や、建築物分野における木材利用の更なる促進に資する規制の合理化などを講じるため、省エネ法が改正され、2025年に施行されることとなりました。
建築省エネ法の主な変更点は、以下の7点です。
1.建築主の性能向上努力義務
2.建築士の説明努力義務
3.省エネ基準適合義務の対象拡大
4.適合性判定の手続き・審査
5.住宅トップランナー制度の拡充
6.エネルギー消費性能の表示制度
7.建築物再生可能エネルギー利用促進区域
今回は、これらのうち、建築確認申請の実務的な部分に特に影響してくる「3.省エネ基準適合義務の対象拡大」「4.適合性判定の手続き・審査」について取り上げます。
省エネ基準適合の拡大、省エネ適合性判定の手続き
新築の場合、現行の制度では、中規模以上の非住宅建築物のみ省エネ基準の適合義務となっていました。住宅については届出義務、加えて小規模(300㎡未満)の非住宅建築物と住宅は適合努力義務となっています。
適合義務対象の建築物については、基準適合について所管行政庁又は登録判定機関の判定を受ける義務があるため、審査期間が長期化するほか、準備する図書も多いことが特徴です。
今回の法改正により、省エネ基準適合義務の対象が拡大されます。
新築の場合、非住宅・住宅問わず、全ての建築物に対して省エネ基準への適合義務が課されるようになります。
これにより省エネ適合性判定の対象件数が大幅に増加することが見込まれており、申請側にとっても、審査側にとっても、負担が増大することに繋がります。
そこで、改正に伴い、一部の建築物については、審査が不要・省略されることとなっています。(例:都市計画区域外の200㎡以下の平屋住宅、都市計画区域内であるが建築士が設計・工事監理を行った200㎡以下の平屋住宅、仕様基準により建築された住宅など)
参考までに、省エネ適合性判定が必要な場合と不要な場合の審査フローについても以下に記載してみました。
おわりに
今回の記事では、2025年の4号特例の見直し、建築物省エネ法の改正について、制度改正の概要についてご紹介いたしました。
工務店やビルダーの方々においては、これらの法改正を熟知し、省エネ適合性判定の必要性、審査の省略可否等をしっかりと認識いただくことが必要だと思います。さらに、確認申請や省エネ適合性判定対象案件の増加に伴う、社内の体制などについても早いうちから対策をたてることも重要だと考えます。私たちもどのようにこのような状況をプロダクトやサービスでサポートできるか、引き続き検討を進めていきます。
次回の記事では、今日紹介した制度改正に伴い、どのような点で業務量が増加しそうか…といった業務変化、それにともなう業務変革の必要性等についてもお話できればと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。