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雑感:パンドラの箱の底で

 現実世界で「パンドラの箱を開けた」という表現が比喩ではない場面は、そうそうお目にかかることはないだろうけれど、ましてやそれが、全国民の面前で展開される、なんてことは、何事も隠微に済ませることをよしとするこの国では、もっとないことだろう。

 統一教会という団体名は思いもつかなかったけれど、いま盛んに報じられている政治とカルトとのつながりについては、やっぱりそうだったか、という納得感しかない。2016年、谷垣氏が事故で倒れた頃から急速に強まっていた異様な気配は、国政の中心がこの程度におかしくなっていなければ到底ありえない、と確信を抱かせるものだった。あの頃からずっと感じていた、背筋がぞっとする、ひどく邪悪な気配の正体は、これだったんだろう。

 いまはまだ指摘されていないけれど、おそらく、ネット世論対策にも統一教会は動員されていたのではないかと思う。
 これまで、自民党の支持者であったり、保守層であったり、はたまた仕事として請け負っていたり、が世論対策にかかわっていたという報道は断片的にはなされていたけれど、それだけでは辻褄があわないところがいくつかあった。
 ひとつめには、初期の頃から安倍氏個人推しが非常に強かったこと。政権発足直後からネット上に安倍氏の強固な「私兵」がいることは、ずっと不可解に思っていたことだった。ふたつめには、指揮系統があまりにしっかりしすぎていたこと。みっつめには、かなり細かく攻撃ターゲットが選別されていたこと、だ。

 2022/08/14追記:
 ひとつめのネット上の安倍氏「私兵」の存在は、長期政権を築き、保守層に絶大な支持を得ることになったのちは不思議ではないけれど、政権発足直後はそのようなことはなかった。だというのに、他の自民党の議員ではなく、明らかに安倍氏のみを崇拝的に支持する層が政権発足直後から存在していた。自然発生的なネットの保守層、2ちゃんねるをルーツとするようなネトウヨ層については、かつての2ちゃんねるでは、麻生氏や石破氏の方が人気があったと記憶しており、なぜそこで安倍氏なのか、安倍氏ではなくてはならないのかは、ずっと疑問だった。
(2ちゃんねるに書き込みはしたことはないけれど、わたしも覗くくらいはしていた時期はあったのです。)

 ふたつめとみっつめは同じような話ではあるのだけれど、まだ私がTwitter対応を真剣にやっていた時期、情報の伝播ルートを観察していて、いわゆる保守の発する情報発信が統一されすぎていることに気がついた。インフルエンサーが情報を発すれば、それが瞬時に広まるというのは普通のことだけれど、そうではないパターンもしばしばみられた。不思議なことに、インフルエンサーが拡散する前の段階から、同じ内容がbotではないアカウントからほぼ一斉に発信されていたのだ(文面もそれぞれ違うのでコピペではない)。おそらく、表からは見えないどこかに情報共有のための連絡手段があり、そこから情報を得て拡散しているのだろうと推測していた。そうでなければ、わずか数時間内に一斉に(明らかにbotではない個人利用歴のある)別々のアカウントから同じ内容の情報を発信するなんて現象は起きないからだ。(いくつかのアカウントの履歴を遡ってみたけれど、普段は政治性の高くない投稿がもっぱらのアカウントも多くあった。)

 2022/08/14追記:
 もうひとつ、こうした個人アカウントは、他からのリプライによって主張がまったく変化しないという特徴が見られた。純粋に自然発生的な個人アカウントの場合、自分が詳しくない話題についてリプライが飛んできたときに、なんらかの影響が見られることが普通だ。直接リプライを返さないにせよ、その後の発言トーンが微妙に変化したりするものだ。ましてや、当事者にあたる人間からリプライが来れば、それにまったく影響されない人の方が少ない。ところが、こうした個人アカウントには、そうした動揺が一切うかがわれなかった。そこから、あらかじめ明確で強固な「意図」を持って発信している、と推測していた。

 その裏側がどこなのかは、いくつか可能性を考えてみたけれど、ビジネスにしては文面にバラツキがあり、サポータークラブ程度の任意の集まりにしては統制が取れすぎていて、保守層にしては政治性が強くない、そして、botではない個人アカウント、これらの条件を満たし、しかも長期にわたって集団で投稿し続けることが可能なのは、カルト的な団体がもっともあり得そうだ、というところまでは推理していた。ただ、そこで団体の固有名までは思いつかなかった。

 攻撃ターゲットの選別についても不思議に思っていたことだった。というのは、おそらく、2017年頃までは、私は攻撃「除外リスト」に入っていたのだろうと思うからだ。私のまわりのややリベラル寄りの発言をする女性陣は、その時期までには、軒並みひどい攻撃を受けていた。だが、私が同様の発言をしても、それと同じような炎上の仕方にはならなかった。そして、特に福島案件では、私が反論しても、反撃ではなく、明らかに意図的であろうと感じられるほど徹底的に「スルー」されることが何度となくあった。ここから、攻撃ターゲットは、たんに「女性」「リベラル」といった属性ではなく、もっと個人単位で選別されている、と推測していたが、ビジネスや統制の弱い集まりでは、そこまで細かく選別する手間はかけられないし、指揮系統も通らないだろう。もっと忠誠心の強い組織的なネット対応をしている集団がある、という推測をここでも立てていた。
 私が「除外リスト」に入っていた理由は、要は、2017年頃までは利用価値があった、ということではないかと思う。(ばかばかしい話ではある、が、現実世界はこの程度にはばかばかしい次元になりうる、というのは11年間でよく勉強させてもらった。)

 自分の推理の答え合わせがこんなに早くできるとは思わなかった、というのがここのところの感慨といったところだ。

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