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今月のひと駅-2023年8月

上麻生(高山本線)

かみあそう駅 岐阜県七宗町
大正13年開業

ひちそうか飛水峡か

 上麻生駅があるのは七宗町。誰でも「七」を「ひち」と読むと「しち」に直されるものだが、七宗は「ひちそう」と呼び、本来の誤表記が正式名称となっているところ、その強引さは、ある意味で称賛されるものかもしれない。

 しかし、この界隈で「ひちそう」の町名より有名なのは、飛騨川きっての名勝、飛水峡だろう。駅の裏手から始まる、谷底深く刻み込まれた奇岩・甌穴の連続は、車窓から眺めるだけでも吸い込まれそうな迫力。だが、その猛々しい景観は、ぜひとも上麻生駅で下車して、川を渡る道路橋から堪能したいものだ。

 ただ、駅の裏手から国道につながる、その道路橋は、観光用に整備はされていない。というよりも飛水峡全体が、観光資源としてはあまり活用されていない。もともとこの地が、昭和43年のバス転落事故という大惨事によって全国に知られたこともあり、現在に至っても積極的に観光化しようとの動きは乏しい。

 しかし、この素晴らしい景観をじっくり眺めたい人は多いはず。むしろ、わき見などの危険を防ぐためにも、上麻生駅界隈にきちんと駐車場を整備し、遊歩道を確保するなどの環境づくりが望ましい。

上麻生駅裏から望む飛水峡

【2009(平成21)年取材】

(駅路VISION第12巻・飛騨/越中より抜粋)


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