【書評】同病相憐れむつもりが当てが外れた件~「子どもを連れて、逃げました。」
タイトルまんまじゃんね。こういう本って、どんな人が読むんだろ?少なくとも煮魚は、自分もDV離婚をした身として、どんなケースがあって、自分はどれに類似するのか、「ああわかるわかる、これこれ」が欲しくて、手に取ったんだよね。あとは、これから子を連れて逃げようという人が手に取って参考にしようとする、とかかな?つまり、DV離婚「した人」と「これからしたい人」は手に取るだろうし、後は、ワイドショーを見る感覚で人の不幸を読み飛ばしたい人、身近にDV離婚しそうな人がいる、社会問題の一ジャンルとして知っておきたい人、とかかな?
内容は、何人もの「子どもを連れて逃げた人」のケースが並んでいるというものなんだけど。
そもそも、前書きを読んでおどろいたんだけどさ。著者は男性、自分が子を連れて逃げられた側という内容が綴られててね。DVとかじゃなくて、ワンオペに愛想を尽かされたパターンらしい。「愛し合って結婚するほどの仲だった夫たちに、子どもを”奪い取る”という酷い仕打ちを与えることができたのは何故なのか」って一文が書かれてる時点で、いやーな感じがしたよね。そして、読む前から、自分の中に葛藤が生じるのね。著者の経歴を聞いただけで読む前から批判的に身構える自分の心の狭さに落ち込むのよ。嗚呼。で、このモヤモヤを抱えたままで読むからもう、いろいろだめだった。自分がね。グダグダ。一番参考になったのは、1章の一人目の、シェルターに逃げた人の話。シェルターのことは、煮魚も配暴センターに相談したときに散々脅されてね、踏み絵を出された感じだったよね。シェルター利用します!ってくらいの人じゃないと配暴センターはしてあげることないわよね、的な。で、その時詳しく聞けなかったシェルターの様子が書かれていて、実際にシェルターで過ごした人の気持ちや状態がよく分かるケースだったので、とても参考になったの。シェルターのことってやっぱり秘密にしなきゃいけない事が多いから、そんな中でも貴重な資料。
でも、他は、なんだろう?自分のような、おそらく底辺の、貧乏な身寄りのない自分が読むには「まぶしすぎる」話が並んでいて、「自分もこんな離婚が出来ればよかったな」って羨むパターンが多かった。いや、もちろん、このインタビューに応じた方たちは必死で辛くて乗り切ってきたというのはよーっく、分かるんだけどね。女医さんの子連れ離婚とか、弁護士雇える人の離婚とか、司会者とかやって華やかな仕事で離婚後も余裕で生計立てられる人とかさ。もう、何ていうんだろう?「勝ち組離婚」って言葉が頭をよぎって、いやいやこの語ってくれた人たちはそう思われると憤慨するよねごめんね、って気持ちが湧き上がってきて、本当に、辛い。だから最後まで読めなかった。あとは、著者がこれを書こうと思った動機から、離婚後に子どもと父親の関係性がどうなのか、という点に焦点が当てられてるのね。だから煮魚みたいにいやいやもう子どもに会わせられる状態じゃないでしょ、子から生ごみって言われてるんだよあんた?みたいな立場から読むと、辛い。子魚本人が会いたくないって言ってるしその方がいいに決まってると自分では分かり切ってるけど、結局は子を連れて逃げられた父親が書いているって「圧」に負けそうで、それを感じて、読めない。贖罪のためにこれ書いたのかもしれないけど、あんたのオナニーに付き合わされる気はないんだよね、って気持ちになっちゃうよ。おっとごめんよ、毒魚な煮魚がポロリじゃんね!
目次だけ見ると、興味をそそられて参考になりそうなものもあるから、読み続けたいんだけど。著者の変な雑念が邪魔して読み進められない。
という訳で、弁護士を雇えない人とか、そもそも夫と子を会わせるとか危険でしょ、ってような人が読むとしんどくなると思うよ。
なんとも歯切れの悪い書評でごめんじゃん。最後まで読めたら、続きを書きたい。けど書けるか自信ないじゃん。読んでて自己嫌悪に落ちるの、しんどみ。
【追記】
後半を読んでなかったから、えいっ!と、手に取ってみて開いたところが最悪だった。3度の離婚を繰り返した人の話で、まあ、よくあるダメンズ系の話かなと思って気の毒な方いるよねと思いながら読み進めてると、女性側が男性にDVしてるパターンだったのね。それについての著者からのツッコミは無し。「(再婚相手に)バカバカってずっと言ったり、手を出したりしました。」ってあって、その後、生活費を全然入れてくれなかった相手が5万円入れてくれるようになって、最終的には16万円入れてくれるようになりました、とか。怖いって。しかも逃げてなくて追い出してるよね?そして今更気付いたんだけど、「子どもを連れて逃げた」取材対象は女性ばかり。せっかく今の時代に書かれてるんだから、男性でもいそうなのにそれが無い。そして、割と金回りのいい人がよく出てくる。離婚して得たお金200万で調理学校に入りました、とか。いや、そういう人がいるのは大いにいいんだけど、「子どもを連れて逃げ」た女性の多くはそんなに金回り良くないはずなんよね。なのに、この本に出てくる人たちの金回りの良さ率は高い上に額も多い。更に、読んでてうっすら湧き上がってきた気持ち悪い想像が拭えなくて、困ってる。この本は、著書の、「子どもを連れて逃げた」女性へ対する復讐なんじゃないか、と。だって、そっか辛いよね、とか、これは参考になった、よくぞ取材を受けてくれました!みたいな、取材を受けた人に対する共感の気持ちがあまり持てなくて、なんだかドラマを見てるようなレアケースっぽい場合が多い。そしてきっと、著書本人は、それに気付いていない。こんな本を逃げられた側が書いたんだから、いい事して、自らの懺悔を昇華させてますって思ってるんじゃないか。でも、違う気がする。というような事例ばかりな気がするのですが、どうよ???考えすぎかなあ。もう一回気持ちをリセットして読もうか迷ってる。というか、最早当初の、自分の参考になるかとかそういう気持ちは遠くにいってしまい、著書の思惑を探りながら読むサイコミステリー作品の体を成している件。うぉ。そう思えば面白い、の、か?