離婚へGO!⑤もう引き返せない瞬間

いつどうやって離婚しよう?子魚の中学受験が合格できれば引っ越しても転校しなくていいけど、公立に進んでしまった場合はそうならない。どうしよう。そんな事とかを考えてて、あんまり具体的にどう離婚を進めようとかは考えてなかったのね。てか、考えられなかったの。冬休みはまだ続いてて、これをどう乗り切ろうか、それで頭がいっぱいだった。他人くんの仕事初めまではまだ3日もあるし、その3日間の不安から、それより先のことは何も考えたくなかったんだよね。こんなんじゃ子魚はたぶん受験に失敗するだろうな、とも思ってた。だって全然勉強できてないもん。そもそも、父親に中学受験を全否定されてるし、お前を塾に行かせるために俺は休日出勤してるんだ!なんて恫喝されたらね、もうね。
世の中には、取返しのつかない瞬間って、あると思うんだよね。子魚の中ではどうか分からないけど、傍目に見て、子魚がそう言われているのを目の当たりにした時は、自分の中で「この男は我が子の信頼を完全に失った」と思った瞬間だったのね。もちろん、これは煮魚目線であって、子魚の中ではもっとずっと前に、こいつ信頼できない親失格だ、ってジャッジした瞬間があったらしいけど。
てか、煮魚だってフルタイムで働いてたのにさ。結局女の稼ぎなんて何にもなってないと思ってたんだろう。他人くんはその時働いていた仕事が嫌で嫌でたまらなくてね。その職場は煮魚と結婚するときに、できちゃった結婚なもんだから渋々働き始めたところで、それも親の口利きだったもんだから、内心すごく肩身の狭い思いをしてたみたいなんだよね。でも、コネで入った役立たずって思われたくないから頑張ったって言ってて、社内ではそれなりに信望もあってお給料もそこそこもらってたんだ。でも、本人はやっぱり嫌で嫌でたまらなかったみたいで。でも、それを子にぶつけちゃ、だめだよね。本当に、だめだ。

あ、そういえば「お前が働いてもちっとも俺の小遣いが増えてないのはどうしてだ。やらせないなら他で女探して連れてこい」とか言われたことあるの思い出したよ('ω')風俗代出せ、みたいなのもね。口だけで、そんなことはしてなかったみたいだけど。逆に、だからこそ煮魚に風当たりが強かったのかもしれんね。記憶がうっすらとしてるんだけど、確かこの年の夏は、夫婦喧嘩がものすごかった。夫婦喧嘩でオール(私だけ)とか、何度かあった気がする。煮魚は4時起きの生活だったから、夫婦喧嘩が3時で終わるともう眠れないのね。他人くんは6時起きだから、そこから3時間は眠れるけどさ。煮魚は車運転して出勤してたけど、マジ怖かった。でも、怖さと緊張で気が張ってたせいか、喧嘩でオールしても眠さが一切無かったのは記憶してる。で、のちに子魚の面談で、授業中居眠りしてるって言われて、ああそりゃそうだよね、申し訳ないよねって思って、でも、言えなかった。毎晩夫婦喧嘩でうるさいので睡眠不足なんですすみません、なんて、担任に相談なんかできないよね。夫婦喧嘩のときに、連座で子魚が起こされちゃう時もあったからね。ああ、本当に子魚に申し訳ない。

頭の中に浮かんだことをそのまんま書いてるから、時系列じゃなくってごめんね。話は、当時のことに戻るよ。で。→

自分の家なのに泥棒みたいにこっそり出て、食糧調達して、またこっそり戻って、そして朝が来て。二階に幽閉状態だから、スマホするか本読むか寝るかくらいしかできなくってさ。テレビ見られないのが辛かった。年明けの生さだ見られなかったのをぐずぐず後悔してたっけな。そんな場合じゃないのにねw 

ごろごろしてたら、他人くんの、階段を上る足音が聞こえたんだ。どうしようどうしようって、とにかく寝たふりをすることにしたんだ。ああ、起こされて喧嘩になったらどうしよう、でも熟睡感を出したらスルーしてもらえるかな、実は反省していて寝顔にキスとかされたらやだから顔に布団掛け気味にしておこう…とか思ってたんだけど、今にして思えば激しくアホすぎるよねw

他人くんが、部屋に入った気配がしたんだ。煮魚は目を閉じて、表情が見えづらいように布団にもぐり気味で、規則正しい寝息を演出したのね。
その時。
ふっと、頭が布団に沈んだ。
そして、頭蓋骨に圧を感じた。

踏まれてる。

否定したかったけど、どう考えてもそうだった。
ミシ、って音が聞こえそうな気がした。頭にかかる圧は、強まる。
どうしよう、叫んで突き飛ばしてこの隙に逃げようか、いやまた喧嘩になっちゃうし、どうしようどうしよう。どのくらいで頭にダメージが出るだろう。
徐々に掛かる圧に、パニックになりそうだったけど、規則正しい寝息風味なのを装うのに集中しなきゃって、混乱していた。
そして、圧が、急に消えた。階段を下りる足音が、ゆっくりと遠ざかる。

日本人の文化論として、「人の頭を足蹴にする」または「足で踏む」とは、どういうことなのか。突き詰めて考えたくもなかった。そして、寝顔にキスとか、今だったら腹抱えて笑いたくなるんだけど、そんな甘い期待をこの期に及んでしていた自分にも嫌悪した。そして、ようやく思ったんだ。

これはDVだ。市役所に行って、助けてもらおう。でも正月だし、4日にならないとやってないよな。何が何でも4日は、市役所に行こう。でも、それまで生きてるかな。

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