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ときのそら 2ndアルバム『ON STAGE!』私的レビュー

はじめに

このnoteは、VTuber事務所「ホロライブ」に所属するバーチャルアイドル[ときのそら]さんの2ndアルバム「ON STAGE!」の主観且つ私的レビューです。毎度のことながら低レベルな内容かつ主観モリモリですが、暇つぶし程度になれば幸いです。

2020年10月21日にビクターエンタテインメントからリリースされた、[ときのそら]さんの2ndアルバム「ON STAGE!」

Twitterでもハッシュタグ「#ときのそらONSTAGE」で多くの感想を見ることができます。

尚、今回のアルバムは「初回限定盤A」「初回限定盤B」「通常盤」の3種類が発売されていますが、レビュー対象は「初回限定盤B」を対象としております。理由は後述していますが「非常に特別な意味を持つ」と考えているからです。まずはアルバムの物理的な部分を見ていきたいと思います。

※以下、敬称略。


アルバムジャケット

初回限定盤Bのアルバムジャケットには、「soraArtグランプリ」と銘打って開催された公募企画から選ばれたファンアートが採用されている。

アルバムジャケットにファンアートが採用される、という例は他のアーティストでもあるだろうが、かなり少ない例だと思われる。安堵のような、笑顔のような、泣きだしそうにも見える表情の彼女の瞳の中に映るのは、会場を埋め尽くした藍のペンライトの海。今はまだ夢への道半ばな彼女ではあるが新たな一歩を進めたその先に、このアルバムジャケットの風景が必ず待っていると思わせてくれる。

歌詞ブックレット

開いた瞬間、そこには「soraArtグランプリ」で応募されたイラストの数々。前述した「非常に特別な意味を持つ」アルバムであると考える理由である。応募されたイラストはブックレット内の見開きページや、同封されたトレーディングカード、アルバムジャケットという形で「アルバムの構成要素」となっている。1stアルバム・ミニアルバムと同様に、巻末のSpecial Thanksには「そらとものみんな」とクレジットされているが、より強く「そらとも」の存在が形として残ったアルバムではないかと思う。

※「そらとも」=「ときのそら」のファン呼称。

視点を変えて気づいた点は、「歌詞の文字数」が増えているように思える。1曲辺り3分程度と考えると、その曲に込められる歌詞の表現の幅がより広がったことになる。地味ではあるが、彼女がさらに進化したことがブックレットからも伝わってくるようである。

次からはメインとなる楽曲をレビューしていきたい。


M01. Step and Go!!

1stアルバムの「コトバカゼ」、ミニアルバムの「フレーフレーLOVE」と同じ多田慎也氏のしっとりとした楽曲がアルバムのリードトラックとなっている。「フレーフレーLOVE」が「背中をそっと押してくれるような」行動が感じられる応援ソングなら、こちらの「Step and Go!!」は「隣に腰掛けながら諭すように励ましてくれる」感じの寄り添うような応援ソングのように聞こえる。歌声の表情は、AメロBメロで落ち着いていて、それでいて語り掛けるようなトーンから、サビでは力強さも加わってくる。

曲中で明確に変化を付けてきたのはこの曲が初めてだと感じている。多田慎也氏の楽曲も、ときのそらの進化を促す応援ソングなのかも知れない。


M02. Chu-Chu-Lu

昭和のソロアイドルのデビュー曲のようでありながら、古臭さは感じない。曲は火の玉ストレートのド直球ラブソング、今までの彼女の楽曲でラブソング自体は何曲もあるがここまで真っすぐな曲は無かったのではないだろうか。その割に彼女の歌声は、甘さ全開でも可愛さ全振りでも無く、「どことなく客観的」に聴こえる。「好きなのは判ってるし、私も好きなんだからもっと積極的に来てよ」という感情が伝わってくる為、個人的には[ときのそら]の小悪魔的な面が見え隠れしている気がする。

曲的にはゆったりとしているので、ライヴパフォーマンスが非常に楽しみな一曲である。


M03. リア/リモシンパサイザー

サーフロックのお手本とも言うようなギターサウンドで始まる、令和の時代に聴くには懐かしくも新しい曲調かもしれない。ライヴ会場では横乗りツイストで手拍子しながら盛り上がれるシーンが思い浮かぶ。その為、少々レトロな曲かと思いきや、歌詞には「リアル/リモート」、「Wi-Fi」など現代のコミュニケーション様式に欠かせない要素が使われていて「今風の付き合い方」が表現されている。

「秒速で会いに行く、リアル/リモートどちらにしよう?」と歌う部分、リモートなら朝も夜も地球の裏側でも秒速だろうが、「リアルであっても秒速でと言えるくらい会いたくて」と震えることなく表現している部分は、「リモ」が浸透し始めた2020年ならではの表現だと思う。M02.Chu-Chu-Luの次の曲と言う観点でも面白い曲で、前曲の想いをリア/リモどちらで伝えよう?とドライに悩んでいる様子にも聴こえる。

完全に個人的趣味趣向だが、もし仮に「生バンド演奏をバックにライヴ」となった暁には、鍵盤はハモンドオルガン(B-3)全開でお願いしたいお願いします。


M04. ブルーベリームーン

平成のグループアイドル風楽曲(○ー○○○娘的)を、令和のバーチャルアイドルが歌う味付けをしたような曲。Gt、Bass、Keyが印象的なバンドサウンドを意識した曲で、特にベースラインがウネリまくっていることが曲に適度な緊張感、切羽詰まった印象を与えている。曲のメロディに絡みつくようなBassラインは、間違いなく「フロアにいる人間を動かしてやる」という強い意志を感じる演奏。

もっぱら「格好いい」との印象が多いこの曲、確かに印象的なメロディラインに曲中のラップ調フレーズ、「見上げて!」「届いて!」と言った決め台詞的フレーズから納得できる感想である。が、[ときのそら]の歌声の表情に「艶っぽさ」を感じたのは自分だけだろうか?セクシーでもなく色気でもなく、艶っぽく聞こえる歌唱は、彼女のオリジナル曲としては初めての印象を持った。

「ブルーベリームーン」というタイトルがそう聴かせるのか、彼女の表現の成長なのか、アルバム中だけではなく[ときのそら]の楽曲の新しい一面が開拓された曲だと思う。

薄青い月に照らされたステージ上でのパフォーマンスを見てみたい。


M05. 空祭り

1stアルバムの「おかえり」、ミニアルバムの「ゆっくり走れば風は吹く」に続けて瀬名航氏の楽曲。

「おかえり」がゆったり優しく語り掛けるような曲調で、「ゆっくり走れば風は吹く」は爽快感のある[ときのそら]のストーリーソングで、聴く人の涙腺を刺激する威力を持った曲であるが、今回まさかのお祭りソングである。

とは言え、しっかり聴いていくと曲の根底にあるのはやはり[ときのそら]のポジティブな個性を踏まえたうえで、「前向いて進むために、今を精一杯楽しもう」と歌う内容になっており、曲調とも合わさって非常に元気な一曲となっている。アルバムのレビューとしては不適切かもしれないが、この曲はライヴ会場で「体感」することが必要になると考える。


M06. ぐるぐる・ラブストーリー

個人的にこの曲がリードトラックになるものと考えていた曲で、アップテンポ&可愛さ特盛のポップなラブソングである。

但し、曲の可愛さとは裏腹に「歌唱の難易度」は可愛いくない。キーの高さは勿論、符割りやリズムに「こここ恋する」のようなフレーズの発声など、「ライヴで振り付きで歌えるものなのか?」とも思える曲ではあるが、MVと同じ振り付けを取り入れたパフォーマンスで、既にライヴ披露済みである。

作詞/作曲の戸嶋友祐氏の感想ツィート

M02.Chu-Chu-Luとは方向性が違うラブソングで、この2曲を聴き比べると「歌声の表情」の違いで表現される曲の感情が分かりやすい。曲の構成や楽器隊の演奏もライヴを強く意識した作りで、特にステージ上のライティング(照明効果)が楽しそうなものになるのが容易に想像できる、ライヴ映えが約束された曲である。


M07. マイオドレ!舞舞タイム

全国のゲームセンターで絶賛稼働中の音楽ゲーム「maimai でらっくす」とのコラボオリジナル曲で、[ときのそら]と同じ事務所に所属している[さくらみこ]とのデュエットソングとなっている。作詞/作曲はボカロPのキノシタ氏で、[ときのそら]の「Dream☆Story」や[さくらみこ]の「マイネームイズエリート☆」が既に提供されている。

リズムゲームの曲という事で、テンポチェンジも多く終始テンションの高い曲となっており、M05. 空祭りと同じように難しいことを考える必要はなく純粋にノリと勢いを楽しめる曲である。

歌詞には「Dream☆Story」や「マイネームイズエリート☆」から引用されたと思われるフレーズが使われており、所謂「関係性」と言う観点でも楽しめる一曲ではないだろうか。


M08. 青空のシンフォニー

「Lyrics, Music / ときのそら」

切っ掛けは「2018/03/27の生放送」中の1コーナーで、即興で演奏されたものだった。そこから「19歳のうちに作詞作曲をしてみたい」との想いを経て「2020/5/15」の彼女の20歳の誕生日にリリースされた本作が、メジャーレーベルからリリースされたアルバムのラストを飾っている。

主旋律はほぼ当時のまま、編曲やMIX等制作陣の協力もあり「彼女の素直な想いや気持ち」が晴れ渡る青空のように奏でられている。

綴られた歌詞の解釈は、人それぞれの解釈があるのではないだろうか。

「過去のときのそらから、今のときのそらへ」、「今のときのそらから、未来のときのそら」へ、「ときのそらから、そらともへ」、「そらともから、ときのそらへ」。どのような解釈であったとしても、ポジティブな歌詞とメロディーから伝わる「他者へのリスペクト」は、間違いなく彼女の内面から出てきたものであろう。


アルバム全体

ここまでで既に8回も「ライヴ」と使用しているように、今作で一番強く感じたのは、「ライヴで生演奏することも視野に入れた曲が多い」ように思える点である。アルバムコンセプト自体が「ライヴで盛り上がる」なので、バックバンドと共に全国ライヴツアーという思惑もあるのではないだろうか。ヴァーチャルと生演奏でのライヴも事例自体は多数あるので、彼女のステージパフォーマンスという観点でも、「リアルとヴァーチャルの融合で表現するパフォーマンス」という生演奏ライヴは期待したい。

新しい挑戦で生まれた曲も興味深い。「M03.リア/リモシンパサイザー」や「M04.ブルーベリームーン」は[ときのそら]の魅力の幅を広げた意欲作だと考えている。裏を返せば楽曲制作陣から彼女へ提示された、進化促進剤とも取れる楽曲で、新たな魅力を表現する今の[ときのそら]が記録されたマイルストーンとなるアルバムである。

昨今の複雑な社会状況の中でも、彼女の物語を紡ぎ続けてくれる楽曲制作陣とビクターエンタテインメント、制作関係者各位に改めて敬意と感謝を伝えたいと思う。


おわりに

相も変わらず乱筆・乱文・支離滅裂な内容にも関わらず、お付き合い頂きましてありがとうございます。以降は完全に主観からの感想です。

2020年中、2枚目となる本作ですが「ときのそらの活動に対する思いやスタンスが、彼女の周囲に更に深く浸透した」ように思います。「歌だけではなくダンスやパフォーマンスで表現したい」と涙声で伝えたあの時の思いが、「ライヴで盛り上がれる曲てんこ盛り」のアルバムに反映されているようで、「ときのそらとは、彼女を応援する人達と一緒に物語を紡いでいく」存在なのだと、改めて強く感じました。

昨今の「噴煙が晴れないような社会情勢」の中、ポジティヴな感情を提供してくれる存在は本当にありがたいのです。

2ndアルバム『ON STAGE!』を引っ提げてのオンラインライヴも間近。このライヴを経た先の白紙のページ、どんな物語が書かれていくのでしょうか。素敵なアルバムをありがとうございました。


Appendix.1

今回、意表を突かれたのはアルバムのリードトラックが「ぐるぐる・ラブストーリー」ではなく「Step and Go!!」だったことです。1stアルバム「Dreaming!」もミニアルバム「My Loving」も1曲目は「明るく元気で快活な」曲だったので、全曲トレーラーが公開された直後に「しっとりと落ち着いた雰囲気のStep and Go!!」で始まることを知って、ちょっと意表を突かれました。

只、全曲通して聴くと「しり上がりにアガって行って、ラストはしっかり〆る」構成で、このままライヴのセットリストに組み込めそうなんですよね。今回のアルバム、「ライブで盛り上がる」というコンセプトなのですが、裏のテーマと言うか方向性として、「温故知新」というコンセプトがあったのでは?と想像しています。

10年前に、ちょっとしたムーブメントがあったのです。

「ライブでアルバム完全再現」

パラレルタイムで、アルバム完全再現あるかも?