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ジャムが教えてくれた(食いしんぼうの情景vol.2)

ジャムは買うものだと思っていたので、「うちに着いたらジャムをつくろう!」というアキさんの言葉にわたしはきょとんとしていた。

家中から瓶を集めてきて、グラグラと煮立つ鍋の中に入れて消毒する。よくもまあこんなにも家の中に瓶があるものだ。アキさんは器用にトングを使い、次々と煮沸していく。ジャム作りは文字通りとても甘美だった。みずみずしいフルーツが、砂糖を纏って艶めく。保存するぞ、というパワーも感じる。瓶に入れると愛着が湧いた。

ジャムを作る=丁寧な暮らし。そう思っていた。実際に体験してみて、単純に、自分で作るということは、自分の好みにできるということだと気づいた。甘さを控え目にしたい、とか、別のものを入れたいだとか、そういうことが叶えられる。好みのストライクゾーンど真ん中の、痒い所に手が届くものを探すのは大変だから、自分で作ってしまおうと。そのためには痒いところがどこなのか分かっていないといけない。丁寧に暮らすということは、自分のこだわりを具に見ていくことなのだと、ジャムが教えてくれた。

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