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テーマ作問をやろう【AMC2022】

みなさんどうもこんにちは。アンドロメダです。
街に出れば、至る所のスピーカーから何やら鈴の音が聞こえる季節になってきましたね。まあ僕の場合は、学校と家以外の場所にほとんど行かなくなってしまったので、今年はまだクリスマスソングのひとつも耳にしていませんが。

この記事は、仮の人 (@kari_math) さん企画
Advent Math Calendar 2022」の12日目の記事となっています。

前半ラスト(?)となるこの記事では、みなさんがOMCなどで作問をする際の助けになればいいな、という気持ちで、作問のネタ作りについて話していきます。

…といっても、僕はたくさん作問しているわけでも、良問で名が知れているというわけではないので、先輩方(ここで言う"先輩"は"作問の先輩"の意味です)の良問紹介(と自作問の宣伝)がてら、主に「テーマ作問=数値や式以外に、背景設定やストーリーを決めて作問する」ということに的を絞って話していくこととします。

俺の原点はここにある

いきなりですが、OMCにこれまで出された中で僕が最も好きなセットを紹介します。
それがこちら、2×3×5×7さん (@2357_math) の OMC088 (for beginners) です。(同様に今後何問か紹介しますが、まだ解いていないなどの理由でネタバレをされたくない方は次の大見出しまで飛ばしてくださいね)

このセットは、6問すべての問題が「図書館」というテーマに関連した設定となっています。個々の問題としても、セットとしても遊び心に満ちていながら高いクオリティで、とても印象に残っています。

ちょうどその時期、僕はOMCに本格的に参戦しはじめたころだったので、このセットを見て「世の中には面白れぇ問題を書くやつもいるもんだなァ」と感動し、競技数学(とその界隈)とより深く(深いのか?)関わっていくようになったのです。(実はこれ以降、体調不良などを除けばほぼ皆勤賞です)

アンドロメダのレートグラフ

さて、自分語りはこのくらいにして、このセットの中でも特に好きな問題がこちらです。

OMC088-C

この問題、実は「なんちゃらCなんちゃら」を計算しなくても答えが出るのですが、ぱっと見でそんなことに気付けるかといわれると…(少なくとも僕は)分からなくてしばらくえっ…(フリーズ)となります。
問題としての面白さもさておき、「何冊かおきに仕切りを加える」という設定は(さすがに何百冊も本持ってないけど)割と現実味がある行為なのもポイント高いですね。こういうところもテーマ作問の妙といったところ。

閑話休題。(ってこういうブログ記事とかでよく使われるイメージ)
このセットを作った経緯を知りたかったので、writerの2×3×5×7さんに、思い切って尋ねてみました。

ストーリーのあるセットが作りたくなり、「図書館」というテーマで、「延滞料金発生→図書館経営」という大まかな流れを思いついた。 (本はページ数や並び替えなど、問題が作りやすそうな設定であることも一因)
テーマをもとに問題の原案を考えて4,5問作り、最後に分野のバランスをみてE問題を作って完成した。

DMで聞いたら快く答えてくれた

とのことです。それで6問生やせるのか…最後に作ったのはA問題かな?と予想していましたが、まさかE問題とはこれ意外。
教訓としてまとめるとすれば、
「設定のベースになる親設定」から「子設定」をたくさん生やして作問する
という手法はかなり有効そうですね。

四字熟語を六問にするのは無理がある

かくいう僕もテーマを決めて1セットまるごと作問をしたことがあります。
アナザー鏡花水月」と題し、鏡花水月、それぞれの字にちなんだ問題6問をセットにしたものです。

BMC039-F writerはこの俺
コンテスト3分前くらいに急いで作った補足図も置いておきます

こちらはそのセットの最終問題として作った問題で、「鏡」をテーマとしています。まあただの鏡というよりは「マジックミラー」や「ハーフミラー」と呼ぶべきですが。
この問題は、作るに至った経緯からテーマだけが最初に決まっていたので、まず同じく「鏡」に関係する問題を探しました。中でも下の2問が印象に残っていたので、せっかくなら逆張りしてAもしくはC分野の問題を作ろうと考えました。

  • N分野 : OMC117-F writer:金木犀さん (@ZwS1BtHP0XpwirW)
    4bのボス問であり、良問です。

  • G分野 : (元祖) 鏡花水月-F write:カルボニルさん (@Calvonil_v3)
    ぽもどーろさん (@1468_math) の作問チーム戦という企画で作っていただいた問題で、かなりの難問です。700点以上相当の難易度だと思います。

「4bのボス問」くらいの難易度感にしたかったので、とりあえず自分が詰まりそうな問題を作ろうと意識して、普段OMCで見ない高校数学の内容に思いを馳せた結果、案外「無限級数」って出題範囲内なのに触ることないな…と思い、構想を立てました。
鏡にまつわるもので無限といえば合わせ鏡が想起されたので、無限に反射と透過をする問題にしよう!と考えつき、問題設定を書きました。

解説はこちら

最初はガラス2枚で考えていたのですが、これ奥が深いな…と思い、とりあえず透過率を文字(a)にして一般化を試みました。
通り抜ける光の割合はa/2-aだとわかったわけですが、計算すると (至極当然のことながら) 通り抜ける光と戻ってくる光の合計は1に等しいのが示せたので、
「このガラス2枚を透過率a/2-aの1枚のガラスとみなせるやん!」と気づき、試しに
a/2-aをa/2-aのaに再帰的に繰り返し代入してみると、a/4-3a、a/8-7a...と綺麗な形にまとまってしまいました。感動。

こんな風に、現実の(自然法則的な)事柄から着想した問題って、意外とシンプルな結論に落ち着くことが多い(体感)ので、高難易度の問題に化けることは少ないかもしれないけど、すっきりした問題を作りたい方はぜひ。
(僕みたいな問題文が長いことに定評のあるwriterは特に)

また、四字熟語や既に存在する「何個かのものがセットになった概念」をテーマに据えてセットを作ると、普通のテーマセットに比べて設定の自由度が高く問題を揃えやすいです。セット提出を検討している方はぜひぜひ。

統一のテーマすらも数学にしてしまえばよい

続いて、自作問題の宣伝後のお口直し(というよりお脳直し?←字面が怖い)がてら、こちらのセットを紹介します。

pepperさん (OMC運営の一人) の OMC036 (Wolfram Cup)です。
(ちなみにpepperさんはIMO2022日本代表メンバーの一人でもあり、OMCerなら全員知っているであろう超ド級の実力者です。)

さて、セット本編ですが、このセットはすべての問題文にこのような断り書きが付いています。(面倒なので画像を一つだけ貼って、推し問題の紹介と同時に説明します)

OMC036-F

あたりまえですが、セットである以上全分野の問題を取り入れる必要があります。そして当然のように、こじつけ感を全く出さずに全問が直方体とうまく関係した問題になっています。
正直、G分野以外に分類されるような直方体関連の問題を作れと言われても、各面を塗り分ける100点のC問題以外全く思いつかないのですが…

その中でも特に好きなのがこのF問題です。
700点問題ですが、解説を追うこと自体はそんなに困難ではない(体感)くらいの絶妙な問題です。的確な条件の言い換え、数列の隣接項間での大小比較など、一問あたりの教育的価値がめちゃくちゃ高いです。数学の宝石箱や~
唯一詰まるとすれば、いわゆる「積の和典型」という考え方を使っている点くらいですが、みなさんならその程度のテクニックはご存知でしょうし…

ここだけの話、最初はかの有名な「peer村のセット」を紹介しようと思っていたのですが、そっちがあまりに有名なのと、こちらは6問ともテーマ統一のセットなのも相まってこちらを紹介することにしました。

かわいいが侮れない

最後に紹介するのは、自分の知ってるOMC過去問の中で最もかわいい問題です。

OMC077-E かわいい

なんだ、「チョコレートたち」って。めちゃくちゃかわいい。
信用ならない村人だらけのとか、高血圧待ったなしの量めんつゆを注ぐ人とか、北米並の人口を誇る謎の姉妹とか、とにかく正気とは思えない人物・設定の多いOMCにおいて、こんなにもかわいい問題があってよいのだろうか。
(追記:Day8と微ネタ被りしました 先手必勝)

しかも、超良問じゃないか…(惚れました)
問題設定の分かりやすさと、使う知識の少なさから見ても美しいですね。

個人的に、この問題は「チョコレート」という設定を使ったことにかなり大きな意味があると思っていて、例えば問題文が

999 以下の正整数 n に対し,1 目盛り 1 で縦 n × 横 1000-n ,周長 2000 の長方形状のマス目があります.この長方形に対角線を 1 本ひき、その通ったマス目すべてを2つの領域にわけます.このとき,対角線によって分割されたすべてのマス目内の領域について,面積が 1/2 以下となっている部分の個数は m 個でした.m としてありうる非負整数値の総和を解答してください.

だったらどうでしょう。問題の本質は一緒です。

…まあ分かりにくいですよね、正直。それに、「対角線によって分割されたマス目の領域」など、厳密な表現をするのが意外と難しいです。
でも、チョコレートというだけで、たとえ問題を適当に読んでも
「あーなんか四角がめっちゃあってそこを対角線がずばばばーって通っていくんやな~」くらいの理解がたやすくなるんです。(主観)
これに関してはwriterの方が問題の本質部分と文章、どっちを先に作ったのかはわかりませんが、とにかく、問題の表現のしかたもひっくるめて"上手い"問題です。

実践編…はちょっと無理

熟練つよつよwriterの方々の記事なら、ここから実際に問題を作っていく過程をお見せするところだと思うのですが、そんなにいい問題が6問も作れる自信がない(奮闘したが作れなかった)ので、テーマ付きのセット作問の流れの一例をまとめてみました。詰まった時は見返してみましょう。

①大きな設定を考える
(例えば、"グローバルなセット")

②そのテーマから思いつく言葉を書き連ね、そこからさらに派生する言葉を書いてみる
(国→国連→条約→同盟、資本主義→世界経済→貿易→輸出入、多様性→言語→通訳、etc…)

③連想した言葉を目の前に眺めながら、問題の原型となりそうなものを探す
(C分野ならば、条約や同盟は"同盟網"という形でグラフの問題にできそう。貿易は利益最大化を試みるゲーム問題にできそう。通訳は誤訳や誤読の確率を設定して問題にできそう…)

④それらの問題を実際に、分野をあまり気にせず(←ここ重要)作っていく
(できれば1,2問くらい余分に作った方が、不採用が出た際の予備やバランス調整に役立ちます)

⑤分野難易度のバランスを見て配置

⑥足りないものを根気で作る
(最も重要な工程です。めんどくさかったら好きな構図をうまいことこじつけて幾何として出しましょう。)

大事なのは、数を意識しないことです。減らすのは後でもできるので、出たアイデアはできるだけ書き記しておきましょう。

クリスマスプレゼント(中古)

それと、自分ではどうにも作れずじまいになってしまったセットの構想をいくつか放出します。案外沢山溜まっていました。まあアンドロメダサンタからの一足早いプレゼントだと思ってください。
ちなみに、著作権はここで完全に放棄するので、面白そう!とビビッときた方はぜひ遠慮なく使ってあげてください。作ってもらえると非常に喜びます。

  • 雪月花をテーマにしたセット
    (雪月花をそれぞれ2問ずつ)

  • 宇宙をテーマにしたセット
    (Gが思いつかなかった)

  • オリンピックをテーマにしたセット
    (スポーツ見ないので何も出てこない)

  • 歴史上の出来事をテーマにしたセット
    (できれば時代順に。題材は無限にある)

  • "作問"をテーマにしたセット
    (作問が下手なので)

  • 人生をテーマにしたセット
    (誕生とか入学とか結婚とか死とか)

  • 恋愛をテーマにしたセット
    (二重の意味で経験不足ゆえ断念)

  • 何かしらの映画をテーマにしたセット
    (チャーリーとチョコレート工場とか場面ごとに特色があるから面白そう)

  • 1日の流れをテーマにしたセット
    (起床とか飯とか勉強とかゲームとか)

  • 文学をテーマにしたセット
    (走れメロスとかでもいいし、あるいは春望とかでも面白い)

ちなみに、もし「アイデアだけもらうのも申し訳ないし、1,2問くらいアンドロメダさんが生やしてくれた方が…」という方がいらっしゃいましたら、私アンドロメダ、共同writerのお誘いはいつでも待っておりますのでDMへどうぞ…(ゲス笑い)(手を擦る)(媚びムーブ)

おわりに

いかがだったでしょうか。
作問のやり方一つに絞ってみても、かなりアプローチの仕方はあるようです。案外、普段と異なるやり方を試すと作りやすかったりするかも?
僕含め作問初心者の皆さんは、ぜひ参考に(なればいいけど)。作問上級者の皆さんも、たまには気分を変えて、普段触れない分野からインスピレーションを得て作問してみるのも案外楽しいかもしれません。

どうもさようなら。アンドロメダでした。

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