からっぽの歌詞.txt の歌詞の話.txt

さみぃ~~~~アンドロメダですさみぃ~~~~~~~。2024さみぃ~~~~~~~年がもうすぐやってきますね。寒がりなのでもう4月くらいまで冬眠するのもアリかなって思ってます。とか言ってたら2024年の5月でワロタ

今回は、この前投稿した『からっぽの歌詞.txt』を解説(というか製作途中の気持ちや表現の意図をお話)する記事です。

まだ聴いていない方はぜひどうぞ。

さて、作詞曲をするときに絶対に避けて通れない話題といえば
詞と曲どっちを先に作るのか」ですよね。
これ、一般的には曲を先に作る人が多いと聞きますし、実際ある程度コード感やリズムの流れを先に作ってからの方が歌詞も当てやすいというのも体感として分かります。アンドロメダはどっちのこともあるんですが、今回は完全に詞が先でした。
アンドロメダは「歌詞を書くとメロディも同時に出てくるタイプ」の人間なので、一番作りやすいのは
①サビ頭などの印象的なフレーズの歌詞とメロディが浮かぶ
②そこから前後に歌詞を少し延長する
③サビのメロディとコードを雑にピアノとかで打ち込む
④ドラムを入れ、サビを全体的にざっくり作る
⑤サビ後の間奏/イントロのメロディを考える
⑥他
みたいな順番なんですが、今回は歌詞にメロディが付随してくるのを必死に抑えながら一曲まるごと歌詞を書き、その後メロディを決めていきました。

「俺もこれがやりたかった~~」のやつ

ところで、この曲は「歌詞を書く」ということをテーマにしていますが、そのような楽曲は既にいくつか存在していて、これまで聞いた中では

この曲が特に印象に残っています。
2番サビに出てくるこれとか。

聞く人の人生を狂わせるくらいの
絶望とか終末の祈り 涙だって枯れた
心が疲れ果ててもう二度と聞きたくないや
雁字搦めのプライドが邪魔だな

相川結月『僕には歌詞が書けない』の歌詞より

ね~~~~!!!書きたいよな~~~!!!!
誰かの人生、ぐっちゃぐちゃに破壊したいよな!!!
そうやって誰かの書いた詞に衝撃を受けた経験がたくさんあります。その衝撃が今の自分に歌詞を書かせているはずなのに、何も出てこないことに怒りとも悔しさともとれない感情が湧いてくるんですよね!

しかし、この曲を聞いたからには同じことは歌えません。

さらにはこんな曲もあり。

この曲も大好きなんです。特に

なあ だから俺は魂を売った
詞を書くために 悪魔を内に飼った
いや 今じゃ 俺が悪魔に変わっていた
歌詞を書きゃ 俺が少し消えてく
心がやつに食い潰されてくんだ
だから今さ 忘れないように歌詞を書いてる

Guiano, 理芽『詩を書く化物』の歌詞より

とっても汚くていい歌詞ですよね。
「醜いところを醜いままに表現する」というのはアンドロメダの美学にもかなり適っていて好きなんですが、歌詞を書くときに避けて通れない自己顕示欲や承認欲みたいなものを「悪魔」として一度分離してから詞に織り込んでいるのが面白いです。

しかし、この曲を聞いたからには同じことは歌えません。(2回目)

詞を書く前に考えたこと

というわけで、似たモチーフの曲を2曲紹介しましたが、これらを踏まえたうえでアンドロメダはこの曲をどのように作ったかのお話に移ります。

「言葉」が感情やらなんやらに先行することって結構ありますよね。
これをテーマにしようという構想はかなり前からあって、そのため実はこの曲には前身となるアイデアおよび歌詞が存在しているのです(別の機会に形にできる可能性があるのでここでは公開しないこととします)。
その前身の歌詞はちょっと凡庸すぎるというか、良くも悪くも「パンチ」が足りなかったので、キラーフレーズとなるような歌詞を考えていました。
が、思いつかず。
仕方なくアイデアの固まっている別の曲の歌詞を書こうと、メモ帳を開きました。2時間ほど経ちました。
…が、何も書けず。
諦めてTwitterを開きました。
「歌詞を書こうとメモ帳を開くも、1時間経っても何の進捗も得られず、からっぽの歌詞.txtだけが残された」っと。ツイート…ん?

『からっぽの歌詞.txt』…

『からっぽの歌詞.txt』だって~~!!????

まあまず最初に決まったのは当然タイトルです。これはもう即決でした。

小賢しいことに、良いなと思ったところだけ改訂してる当時のツイート

しかし、この日はこのあと用事があったり、別の曲が捗ったりしていったん完成したことが忘れ去られます。そして、思い出したように11/20の夜ぶっ通しで勢いに任せて歌詞を書いたら全部できちゃったってわけ。テヘ

歌詞の個人的凝りポイント

この曲のテーマは「言葉を使っていながら言葉においついた感情も表現したい思想もないことへの憤りと無情、そしてそれに食らいつこうとする表現者としてのプライド」だそうです。(歌詞.txtにそう書いてあります)
そのため、書くときに意識した点がいくつかあり、

  • 踏むところではとにかく韻を踏みまくる、しかし意味も疎かにしない

  • 後半になればなるほど韻をあえて外したりして、言葉という呪いとそれからの逸脱を表す

  • 言葉が感情より大きすぎることを表現するために、中身(発言者)の無機質感・棒読み感をコンピュータ関連用語で表現する

などは徹底しています。3つ目なんかは、先ほど紹介した2曲とも強く関連していますね。自分が落ち込んだ時によく心の中で反響しているセリフが「みんな人間なのに、私だけが人間じゃないんだ(人に似せて作られたアンドロイドか何かなのではないか?)」なんですが、この歌詞を書いているときに限っては「よっしゃ今こそ詞に落とし込むときや!」となりましたね。

歌詞の各パートを見ていこう

"今年はやけに豊作な
からっぽの歌詞.txt
適当なリリックで埋めてみた
からっぽの歌詞.txt

「今年はやけに豊作」なのはまあほぼアンドロメダの実話&世間話なんですけど、これは「どっかの他人事」という意味合いが強いです。「○○が値上がり」ならみんな興味を示しますが、「○○が豊作」なんて言われても誰も気にしませんし。歌詞もどきの文字の羅列だけができていく、という自虐的なセリフでもあります。
あと、今更ですがこの「からっぽの歌詞.txt」というフレーズは、「からっぽの歌詞.txt(というファイル名)」とも、中身のない「歌詞.txt」とも捉えられることを利用して、2つの意味の間であえて揺らがせておくというテクニック?を使っています。

未完、失陥、罹患、遺憾、如何せん悲観。
皮相、一層、競う、美装、貧相な理想。
資産、四散、悲惨、降参、称賛の精算。
無痛、普通、鬱のない恵まれたストックで

ここはかなり表現者の視点に立った歌詞で、端的に言えば
歌詞書けねえ…でも売れてえな~~~~~
そんで書くこととかねえし、どうしろってんだよ!

を押韻ドカ盛りで歌っています。1行目は「ian」2行目は「io」3行目は「(i)an」4行目は「uu」で踏んでいます。最後の行はそのまま韻を踏みすぎてしまうと次のパートへのつながりがうまくいかなそうだったので、韻ブレイクしてなめらかに接続しました。ここまでガッチガチに固めているのはもちろん「言葉に囚われる」ことの表現ですが、それでもちゃんと意味は通るようにバランスを考えて書きました。

味も分からず何番煎じ
覚えたのは口の形だけ

最初にこの素敵な言葉を生み出した人は、おそらく本来の言葉の意味をちゃんと咀嚼した上で丁寧に紡いでるんだろうけど、今自分が歌詞に使おうとしている頃にはもうその本来の魂は抜けて、ただ響きがいいという理由だけの薄っぺらい言葉になってしまっているね…という嘆きが、これまでの歌詞とサビを繋ぎます。

からっぽの歌詞.txt
からっぽの人生.csv
わたしの大脳.exe は
動作を停止しました
からっぽの押韻.txt
からっぽの形象.bmp
わたしの才能.exe は
有効なプログラムじゃないらしい

「からっぽの歌詞.txt」以降の歌詞をどうするか悩んだんですが、テーマがテーマなのでせっかくなら頭使わず書くか!と思って、「歌詞未満の不満」みたいなものを敢えて「からっぽの人生」「からっぽの形象」みたいな名詞の羅列として出力(実際、ファイルを出力するというイメージと重ねています)してみました。

彼奴の歌詞も盗作さ
からっぽの歌詞.txt
愛だの恋だの白けるね
からっぽの歌詞.txt

2番に入って急に挑発的になりますが、ここは「お前もそうなんだろ、なあ?」と視聴者に対して訴えかけるためにこんな感じにしています。

欺瞞、離反した自我、悔しいか。
起床、就寝、既習、傷心、忘れ去る初心。
規範、違反、嫌、全部本当のくせに。
なんてナンセンス!魂(ソウル)もない囚われたフレーズで

再びガッツリ押韻パートです。意味や役割としては1番と同じような感じなのですが、1番に比べると二字熟語を連呼する形は崩れ、韻の踏み方自体も緩くなっています。これは言葉の罠(型)から脱しつつあることを表現しています。という言い訳のもと、この曲は後半にかけて言葉遊びでどんどん好き勝手していきます。
起床、就寝、既習、傷心のところは「き-しょう」「しゅう-しん」の「しょう」と「しゅう」を入れ替えて繋げています。こういうのやってみたかったんですけど、これが成り立ってしかも創作のうまくいかない苦しみみたいなのを表現しうる熟語の組み合わせを探すのにはなかなか苦労しました。

宛先空けた年賀はがき
紡いだのはその程度のゴミ

個人的に一番虚しさを感じる「型」はこれだな~と思っていたので。

からっぽの歌詞.txt
からっぽの言葉.mp3
わたしの思想.exe は
サポート対象外です
からっぽのメッセージ.txt
からっぽの呪詛.mov
わたしの最期.exe は"
ここまで書いてやっと歌詞ができた。

2サビです。1サビもそうだったんですが、語感が良くてリズムに合って意味も合う拡張子を持ってこなきゃいけなかったので、mp4やaviやらではなくmovになりました。

が!あたしの言葉はこんな所じゃ終わらねえ
まだ止まらねえから座っとけ そうだ木偶の坊なお前らへ

リリックに縛られてんじゃねえ、「ロマンチック」とか片付けんじゃねえ
それで陳腐成り下がって、賭けろワンチャンスとかほざくエンタメ
感じたことにstraight ahead 「ダサい」「恥ずかしい」それはfade away
どうせ案じたとこでお前だけ「すごい」「素晴らしい」とかなるわけない
言葉に負けてくれるなよ、くれぐれも!

ガチラップパートです。よくあるリリック解説動画みたいに色つけるとこんな感じになります。

可視化するととてつもない密度の押韻ですね。意外とこういうリリック得意なのかもしれません。

ちなみに、いきなりラップパートが作りたくなったのは、この曲を聞いたからです。もっと口語的なラップにしても良かったんですが、いかんせん思想がガチガチなのでラップもガチガチにならざるを得ませんでした。

なので最初はテトさんに歌ってもらおうかと思っていたんですけど、キャラクターとして「からっぽ」を強調しやすいのはどちらかといえばミクだなと思ったのと、ミクさんの歌う「くれぐれも"ぉ〜〜↑」が好きすぎたのでテトさんの出番はまた今度。

からっぽの歌詞.txt
書いた分だけ命(ストレージ)が減る
わたしの衝動.exe は
お前ごときにはブロックできない!
からっぽの歌詞.txt
歌いたいことはまだあるかい?
完成した歌詞を読みあげて
また消して書くんだろなあ?どうせ。
死に様を書くまで死ねないわ!

最後の歌詞は自己矛盾ですが、そもそも言葉で何かを表すということ自体がつきつめていくと不可能なことなので、逆にカッコいいみたいな。(?)
漢字にカタカナのルビを振るやつ、ダサいんだけどでもどうしてもやりたくなっちゃう。
真に言葉を使いこなせる人間は、語感も意味もすべて整えた状態の言葉を出力してくれる(はず)だと思っているので、敢えてラップパートも含め曲のリズムは崩さずにメッセージ性だけを段々クレッシェンドさせていきました。

おわりに

気がついたらこの曲を出したのも半年くらい前になってしまいましたが、いかがだったでしょうか。

ちなみに、この記事は書きかけのまま存在を忘れ去られていたのを、1stアルバム『ドッペル・ミュータント』全曲開設記事を書こうとしたときに発掘してきて急いで仕上げたものになっています。
そっちも数日以内に出ると思うのでぜひどうぞ。

みなさんさようなら。アンドロメダでした。

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