無色透名祭Ⅱに投稿した曲の裏話

みなさんどうもこんにちは、アンドロメダです。

無色透名祭Ⅱ、終わりましたね!!!!いや~~~楽しかった。リスナーとしては150曲くらいは聞けたんじゃないでしょうか。(それでも全体の1/30すら聞けてないだって…!?)
アンドロメダもボカロPの端くれということで、一応作り手側としても参加していました。ここではその曲のお話をしようと思います。とはいっても、別に数字については語るほどの面白みはなかった(ことごとく埋もれた)ので、この記事はあんまりイベント自体とは関係ないです。

そして、この記事は(当然のことながら)、曲のネタバレはもちろん、作者の頭の中にある解釈や歌詞の意味などの話も含んでいます。

それも含めて、ここから先を読む際にはお気をつけください。

(ネタバレ防止用の行間)


(ネタバレ防止用の行間)


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(ネタバレ防止用の行間)


(ネタバレ防止用の行間)


(ネタバレ防止用の行間)

1曲目

手抜きの曲

タイトル: それも人生、
ボーカル: 初音ミク

この曲は、当初は元々実験的に「ドラムで暴れてみよう」と考えて作った、ただそれだけの曲でした。
そこにその前のパートを足したまでは良かったんですが、そこから先が全く進まない!

じゃあもう没でええか…

当時のアンドロメダ

こういうことです。
いや流石に適当がすぎるだろ、といった感じですが、逆に考えると、アンドロメダはこういう行動をしたとも言える。

(せっかく無色に参加するのにみんなガチな音でガチな曲ばっかり出してきたら)

無名ボカロPのみんな、不安よな。

アンドロメダ、動きます。

そういうこと。(どういうこと?)
そもそも大御所が若手のために行動しないとこの構文は成り立たないという指摘はさておき。

この曲は、もともと
「何もかも上手くいかず、慰めにすら苛立って、開き直り始めてしまうような精神状態」
がテーマでした。

こんな語ることもないような
苦しみすらあまりに薄い
無味乾燥とした人生には
救済の資格などないな

こういう気持ちになる時って、上手く行かない鬱憤をぶつける先が見つからないときだと思うのです。それが自分に向けばもっと悲劇のヒロインぶることができるし、他人に向けば怒りになる。
でもそれがどこにも向かわなかったときって、たいてい「自分は恵まれていながら何もできない、平坦でつまらない人生を歩んでいるのだ」という自嘲とも悲嘆とも取れないような感情に満たされる。

ああ 忘れたいことだらけだ
私はなぜ心はなぜ命の夢を見てるの

このメンタルでは、比較的冷静なので「平坦な人生をつまらなく感じてしまう自分=非凡でありたいという欲求」をも卑下し、エゴがエゴを排斥しようとするような堂々巡りが始まります。

ああ いつぞやの誰かさん
無責任に「それも人生だ」とか
肯定してくれないか

こんなときに1番ムカつく言葉って、「それも人生だ」だと思います。でも、何かに負の感情をぶつけたいときに限って、他人が無責任な言葉をかけてくれるわけではないのです。無責任な言葉を投げかけてくる他者も、この精神にとっては自分にとって都合のいい仮想の存在でしかないわけですね。

と、いう感じで歌詞は全てが堂々巡りする不快のビュッフェメニューでした。

曲の途中と最後に下手くそなピアノが聞こえてくると思うんですが、これはもちろんわざとそうやって打ち込んだもので、「うまくいかなさ」を端的に表しています。
ちょうど歌詞の「忘れたいことだらけだ」に重なるように聞こえてくるので、過去の苦い失敗がフラッシュバックした時の不快な感触を思い出してもらえたら嬉しいです。(いやだよ!)

2曲目

ド本命の曲

タイトル: もう寝る。
ボーカル: 白寝ねんね
ポエトリーリーディング: No.7

本命の方の曲です。この記事の本編はここから始まります。

まずこの曲ができた経緯について。

1曲目を無色透名祭に出した後、なんか作曲のモチベーションがかなり高かったのでノリで新たに作り始めました。
とはいえ、アンドロメダが「ノリで」と言っているときは大体曲のテーマとかもノリで決まっているので、今回はそれがたまたま形にするまで滞りなく進めたということです。

この曲を作った際、初めに決めたのはボーカルでした。なのでまずはボーカルとして使用しているUTAUの白寝ねんねについてお話しします。
白寝ねんねは、YouTubeなどで主にボカロ曲のカバーを投稿して活動されている白籤ねんね様が、ご自身の声を元に制作されたUTAU音源です。

是非上に貼ったカバー動画を聞いてみてください。本人とUTAUでデュエットをしているのですが、なんとなく聞いただけではどっちが人間か分からないくらいには、UTAUに声質がきれいに収録されているのが分かります。

あまり語りすぎてしまうとこの記事の本筋からも逸れてしまうので、ここまで控えめにしていましたが

白籤ねんね様は本当に、ほんっとうに声がいい!!!!!んです!!!!かわいげのある輪郭も、大人びた空気も、儚げな雰囲気もまとっていて、俺ァ大好きなんです!!!!!そしてもちろん白寝ねんねの方も当然!!!!当然声がいい!!!!!!耳から摂取できる幸福の在り方!!!!!!みんなもっと聴け!!!!!!この良さよ地球を包み込んでくれ!!!!!!

ハァ…ハァ…ということで、

白寝ねんねをボーカルにして曲を作る

人々が白寝ねんねの良さに気づく

白寝ねんねを使う人が増える

白籤ねんねファンも増える

俺も推しもみんなハッピー

アンドロメダの脳内の完璧な計画

というわけです。(どういうわけ?)

そ う は い か ず

良すぎだろ。
こいつだけでよかったやん。
この人ちゃんと歌詞に「ねんね」登場させてるし、声の魅力は存分に生かしてるし、歌詞も語感・流れともに完成してるし、めっちゃ正当に評価されてるし、「声良い」って気付いてる人かなり多いし。

冷静に考えると、俺の当初の目的(布教)この曲によって完璧に達成されてるよな……「白寝ねんね」でタグ検索してこの曲と自分の曲が最新の2つとして隣り合ってる光景、あまりにみじめじゃありませんか。殺してくれ………
…何?こっちの曲。「もう寝る。」って。タイトルのセンス母さんの腹の中に置いてきた?もう寝る…もう寝る(笑)勝手に寝りゃええやん
😆😆

ああ いつぞやの誰かさん
無責任に「それも人生だ」とか
肯定してくれないか

アンドロメダ作:『それも人生、/初音ミク』

さて、仕切り直して曲の話をします。
せっかく白寝ねんねを使おうと決めたので、どうせなら「睡眠」に関連した曲を作ろうと考えました。
そして、「それも人生、」がヤケになっちゃったメンタルの曲なので、こっちは寝て楽になること、もしかしたら現実逃避や問題の先延ばしかもしれないけど、それをも許す曲にしようと。とりあえず6拍子のフレーズをいくつか作って、気に入ったものをイントロとして採用しました。

6拍子の曲もそういえば作ったことがなかったし、どうせなら普段やらないことをとことんやってみたくなったので、
寝具の視点の曲にしちゃおう」と思い付き、歌詞に使う言葉をいろいろと決めました。「同じサイズ」「外の世界」「悪魔の囁き」「おやすみ」「でも今はいいよ」などは特に使いたかった言葉です。このあたりまで決めてから、メロディと歌詞を同時進行で考えていきました。

君の足が重いのは 枷のせいじゃなくて、
帰りを待ってる わたしの引力。
君が下を向くのは 未来を見たくないから?
靴についた泥が 気になるんだね。

この曲は全体を通してそうですが、これは自分の辛さを自分のせいでないところにとことん責任転嫁させる(することを許す)歌詞になっています。
「学校/会社へ行きたくない」じゃなくて「布団が恋しい」
「前を向きたくない、進みたくない」じゃなくて「足元が気になる」
みたいな。

横になってごらん。わたしはいつもそばで、
君の心をぜんぶ、聞いているよ。
海も街も君より、大きすぎるけれど、
わたしだけはおんなじサイズでいたい。
外の世界は嫌?
でも今は、いいよ。

「外の世界は嫌?」のところは、見た目では問いかけのようになっていますが、「(仮にあなたが)外の世界は嫌でも、今は(嫌なままで)いいよ」という一方的な語りかけとも取れるようにしています。

君の声が出なくても 言葉はあるんだ。
ただ大きすぎて 出れないだけ。
君が今日世界から 逃げ損ねたとき、
流れた涙は しょっぱかったね。
目を瞑ってごらん...

この曲が想定している「外の世界」は一つに定まっているわけでなくいろいろあるんですが、「世界から逃げ損ねたとき」という部分に関しては、作詞時に明らかに自殺未遂を意識して盛り込んだフレーズです。これは、知り合いが自殺未遂してた(これは本人がSNS上で言っていただけなので、あくまで情報でしかないんですが)ことを思い出して、それについても自分なりに答えを与えるべきだと思ってけっこう悩みました。(ちなみにその知り合いは現在まあまあ元気なのでご心配なく)
この曲の答えとしては「とりあえず疲れただろうし、寝よう?」という至極当たり前なところに落ち着いています。私は、辛い事だからこそ先延ばしにした方がいい、なんて場合もけっこうあると思っているので。

君が「離れたくない」って言うから。
わたしもずっとそうしていたいけど。
君はそのうち突然立ち上がって、
「行かなきゃ」って言うんだ。
そして君はいつも服を着替えて、
しおれて猫背で帰ってきて、
ぐちゃぐちゃになった顔をわたしに押し付けて、
しばらくすると力と息がだんだん弱くなって、
眠たくないけど、寝たいんだね。
いいよ。今はおやすみ。

ここはVOICEVOXのNo.7に読んでもらっています。
心の調子が悪いときって、本当に何もうまくいかない(あるいはうまくいくように感じない)から外に出るのもだるいし、帰ってきたときにはボロボロじゃないですか。でも、人前でそんな様子を見せるわけにもいかないとなると、そういう苦しんでいるときの人間を観察しているのって多分ベッドや枕だけだと思うんです。彼らの言葉のうち一つを想像で語ってもらいました。

悪魔の囁き?
でも今は、いいよね。

ここがこの曲の最も重要な歌詞と言っても過言ではありません。
起きる時とかにベッドや布団に引き戻されるのを「悪魔の囁き」って言うじゃないですか。我々を怠惰へと引きずり込むという意味で。
でも本当にまだ寝ていたい(寝不足とは違う)ときって、実際のところ精神はまだ休まっていないからこそ寝たいのかもしれません。悪魔の囁きだとしても、それに従うことを悪として、自分を呪わなくてもいいんだよ、私たちは天使ではないのだから。

今日もダメな日で、昨日ももっと前も。
最後うまくいくよ、君はダメじゃない。

今日もダメだった」って言葉、軽薄に見えてその罪悪感と焦燥感とその他いろいろな不快な感情が身体を蝕むときの気持ちの悪さをよく表していますよね。そういうときにかけてほしい言葉って、「ダメじゃない」という現状の擁護というよりも「きっとダメじゃなくなる」だと思います。自分を呪う言葉になる「今日(の私)がダメだった」じゃなくて「今日がダメな日だった」で責任を自分から追い出してあげることも、私は必要だと思います。

「おやすみ、」「おやすみ。」
今日は終わる。
わたしたちの愛が、届きますように。
明日はいきましょ。
でも今は、いいよ。

「わたしたち」は、寝具たちでもあるし、私=作曲者でもあるし、眠りについている誰かを愛している誰か全体のやんわりとした集合体です。
明日、「いきましょ」の中身は人それぞれだと思いますが、そうしようと頑張っているあなたのことを、誰かが見守っています。今日はダメな日だったと思って問題を1日先延ばしにしても、それが明日も明後日も続いても、どこかの誰かはそれを見て、肯定してくれているのかもしれません。


(ちょっとだけ)数字の話

今回、この2曲とも基本的にほぼずっと最下層(再生数の下限+5以内)にあったんですが、「それも人生、」のほうは初動でちょっとだけ再生が多かったです。まあ手抜きなんでコメやいいねはほとんどなかったんですが、この曲を面白がるなんて「初心者の作った、めちゃくちゃやってる曲こそ至高」みたいなマインドでdigりにdigってる変態でもない限りあり得ないと思うので、そこまでショックはなかったです。

終了1時間前時点では再生数少ない順で1ページ目に表示されてたみたい

一方、「もう寝る。」の方は最初の20~30時間くらいコメントもなくうだつの上がらない感じで、かなりメンタルにきました。しかし後の方でぽつぽつとTwitter、ニコニコのコメントで「優しい」「暖かさが好き」などうれしい言葉を発見して、泣きそうになりました。君のコメもぜんぶきいているよ。

実のところ、もっとつかみがキャッチ―で伸びそうな曲の在庫もあったのでそれを出しても良かったんですが、無色でいちばん大事なのは「どこかの誰かを深く刺す」だと思ったので、遊びまくったあとの砂場みたいな曲と、愛を込めに込めに込めた曲の2つが最もふさわしいと考えて選びました。

おわりに

こんな感じで、無色透名祭Ⅱの曲たちの紹介でした。
今回リスナーとして色んな曲を聴いたり、自分の曲の陳腐さや稚拙さを実感したことでめちゃくちゃ作曲のモチベーションが上昇しました。おかげで歌詞も曲もたくさん湧いてきています!(いくつ形になるかはさておき)

どうもさようなら。アンドロメダでした。

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