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イノベーション・エコシステム形成促進支援事業プロジェクトの担い手が語る、コラボレーションを生み出すために必要なこととは

東京都がイノベーションの活性化に向けた環境を構築するために推進している、イノベーション・エコシステム形成促進支援事業。

AND ON SHINAGAWAを運営する京急電鉄は、品川・蒲田・羽田空港エリアの主幹事企業に認定されている。

今回、昨年度実施された共同プロジェクトのうちの一つで、クリエイターと工場のコラボレーションを促進するWEBメディア、”march on”の立ち上げに取り組まれた”Counterpoint”の瀧原慧さんと、主幹事企業として携わった京急電鉄の須藤一樹さん(以下敬称略)にインタビューを実施した。

プロジェクト着想の背景や、プロジェクトを通して得られた収穫。そして、エリアからコラボレーションを生み出していくために必要なことについて語っていただいた。

クリエイターと工場のコラボレーションプラットフォーム、”march on”が生まれるまで

本日はどうぞよろしくお願いいたします!
今回のプロジェクトについて伺う前に、瀧原さんのことについて伺えればと思います!

瀧原さん

瀧原:改めまして、”Counterpoint”の瀧原慧と申します。現在は、大田区にあるインキュベーションスペース、KOCAを拠点とし、クリエイターと共に金属加工のプロダクトを作ったり、工場とクリエイターのコラボレーションを生み出すための活動に取り組んだりしています。

株式会社城南工業という、板金加工会社の3代目として生まれたこともあり、工場は昔から身近にある場所でした。しかし、最初から工場での仕事に就くことを意識していたわけではありません。

大学院の研究の一環で学んだフィールドワークの視点から職人さんの仕事を見つめ直した経験、留学時代に職人をリスペクトする考え方に触れたことがきっかけで、工場に対する見方が変わりました。

自分のバックグラウンドである「デザイン」と「工場」を掛け合わせたテーマで仕事をしたいと考えるようになり、それが今の活動につながっています。

今回の共同プロジェクトには、どのような経緯で取り組むことになったのでしょうか?

クリエイターと工場のコラボレーションを生み出すための力になりたいという思いが、プロジェクト応募のきっかけです

今私が所属しているKOCAでは、入居者間でのコラボレーションで新しい製品が開発されることがあります。スペースの中でコラボレーションが生まれていること自体は素晴らしいことだと思う一方、KOCAという場所が持つ大きな可能性は、もっと多くの人に広く知られるべきだという課題意識を持っていました。

拠点に囚われない外部との取り組みを増やせるよう、SHIBUYA QWSのチャレンジプロジェクトに参画。KOCAを超えたコラボレーションを創出できるよう取り組んできました。

プロジェクトに取り組む中で自分を採択していただいた方に、「蓄積した知見は、自分たちで囲うよりも、外部に公開し、発信していった方がいいのでは?」という意見をいただきました。

やりたかったのは、まさにこれだと。コラボレーションのナレッジをオープンリソース化し、誰でもアクセスできるようにするという発想に感銘を受け、ぜひ形にしたいと思いました

これがきっかけとなり、今回のプロジェクトで立ち上げたmarch onを構想するに至りました。

"march on"(マーチオン)は、クリエイターと工場が円滑なコミュニケーションに基づいたコラボレーションを行うための有益な情報を提供するメディアプラットフォームです。
"march on"という言葉には、「仲間とものをつくり続ける」という意味を込めました。色んな人と協力し合ってものをつくることを「行進=パレード」という明るく楽しいものとして発信し続けたいと思います。

引用: march on HP

この構想を実現したいと考えているときに知ったのが、今回取り組んだ東京都イノベーションエコシステム形成支援事業 共同プロジェクトの募集です。

資金的な支援があることと、自分が活動している蒲田で実証できることが後押しとなり、チャレンジすることに決めました。

実際にプロジェクトに取り組んでみて、いかがでしたか?

瀧原さん2

瀧原:やはりコロナの影響をかなり受けてしまいましたね。構想していたのが取材をベースにコンテンツを発信するメディアなので、どうしても現場に足を運ぶ必要があります。

取材先に感染リスクを負わせてしまうこともあり、思うように取材を進められませんでした。また、リアルなマッチングイベントを通してコラボレーションの機会を創出したいとも考えていましたが、それも叶わず。。

とはいえ、なんとかプロジェクト期間中に成果出したいという思いで、過去の事例やそこから得られる知見を共有するオンラインミートアップイベントFABRICATEを開催したり、可能な範囲で取材もさせていただいたりと、できることに取り組んできました。

難所は多々あったものの自分が描いていた構想を形にすることができましたし、今後の活動を加速させられる出会いもあったので、実りあるプロジェクトになったと思っています。

蒲田×品川のコラボレーションの可能性

須藤さん2

須藤:今回のプロジェクトにおける最大の収穫は、蒲田で活動をされている瀧原さんとご一緒させていただいたことで、品川と蒲田でコラボレーションを生み出すきっかけが作れたことかなと考えています。

品川でスタートアップの立ち上げを支援し、プロダクト開発を蒲田エリアでサポート。製品ができたら、また品川で販売拡大をするための大企業との連携機会を提供する。ハードを扱うスタートアップが京急沿線で事業を成長させられるような、具体的な実例を今回の取り組みを契機に生み出していきたいです

瀧原:今回のプロジェクトでヒアリングをさせていただいた会社の中にも、スタートアップが工場に発注するための要件定義の仕方を詳説した資料を作って、相談にのっているところがありました。蒲田で活動をしている中でも、仰っていただいたような活動に前向きに取り組みたいと考えている会社は少なくないと感じています。

今お話いただいた内容を実現していくためには、どのようなことが必要になるのでしょうか?

瀧原:工場とスタートアップではバックグラウンドが全く異なり、それ故のリスクや問題が起こることが少なくありません。

例えば、スタートアップが製造知識のあまり無い中で正確な図面(仕様書)をつくって発注するのは難しく、とはいえ、工場は図面の指示通りに製作するしかありません。単に製作上の難易度の高さによる場合もありますが、コミュニケーションコストは見積額に響く場合もあります。仕上がりに納得できなかったり、追加工で余計なお金や日数がかかったり、お互いに損をするような問題は、共通言語の無さや実現したいビジョンの共有不足によって引き起こされます。

自分としてはmarch onをはじめとする活動を通して両者の相互理解を促進したいですし、AND ONのようなスタートアップの支援プレイヤーと連携して、双方のコミュニケーションの障壁を下げるような支援にも取り組めたらと考えています。

対談

須藤:今仰っていただいたようなハードを持つスタートアップへの支援は現状できていないので、ぜひ今後ご一緒できたら嬉しく思います!

あとは当たり前の話ではありますが、今回のようなプロジェクトに地道に取り組んで「点」を作っていくことが大切で、そこに近道はないと思うんですよね。一つ一つ点を作って、それを線とし面とする。京急沿線で起こっているプロジェクトを実直に繋いでいきながら、面白い取り組みを創出できるよう活動していきたいですね。

瀧原:仰る通りだと思います。先ほどは品川×蒲田のお話でしたが、連携で生み出されたプロダクトを羽田で展示をすることで海外との接点を持たせたり、横浜エリアで起こっているプロジェクトを巻き込んだり。沿線でバラバラに走っているプロジェクトが接点を持ち、それが新たな取り組みに繋がっていくという連鎖が生み出せたら、沿線がより良い場所になるのではないでしょうか。

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