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メタバースの紹介

はじめに

2021年10月28日、時価総額が1兆ドルを超える有力企業であるFacebookが、世界中に浸透した名前を捨てて「Meta(正式名称:Meta Platforms)」に社名を変更しました[1]。
また、Google傘下のYoutubeがメタバースに進出することを2022年2月18日に表明したほか[2]、かのMicrosoftもメタバースサービスの2022年の提供開始を発表しています[3]。
テック・ジャイアンツ[4]が心血を注ぐメタバースとはなんでしょうか。そしてメタバースのなにがそんなにも魅力的なのでしょうか。この記事ではそれらをなるべくわかりやすくご紹介します。

メタバースとは何か

統一的な見解は定まっていないものの、メタバースを一言で表すなら「インターネット上の仮想世界」[5]となります。語源は英語のmeta(超えた)-universe(世界、宇宙)からの合成語[6]です。
メタバースをイメージするには、次に示すような仮想現実(Virtual Reality:VR)をはじめとする仮想世界の概念をつかみ、それらを体験するための各種デバイスについて知ることが近道です。

VRの進歩

メタバースを体験する上で欠かせないのがVRの技術です。一般にVRヘッドマウントディスプレイを被り、高精細な映像と聴覚から臨場感を味わいます。いまは発展の過渡期にありますが、今後はさらなる映像技術の進歩と、触覚[7]、嗅覚[8]、味覚[9]を加えた体験が期待されています。世界中のあらゆる地域や稀有なシチュエーションの体験を人混みや費用、移動時間に煩わされることなく手軽に繰り返し実現できるという点で、実体験をも上回る価値が見込まれます。

付録-仮想世界に関する技術の分類[10]と対応デバイスの例

        Meta[11]                                 Microsoft[12]                                Google[13]

メタバースの活用領域

ビジネス活用のモデルとして、上記のようなデバイスと仮想空間(一定の範囲を持つ仮想世界)を提供するプラットフォーマーと、仮想空間内でサービスやコンテンツを提供する生産者、そしてそれらを利用する消費者が相互に発展させていく形が考えられます(下図[14]参照)。
仮想空間が活用された実例としては、世界的に有名なラッパーがオンラインゲーム内の空間で新曲を披露して1000万人以上が同時接続[15]したり、仮想空間に建設現場を具現化して安全に現場作業員の研修や検証を行ったり[16]、なかなか立ち会えない貴重な症例や名医の手術を360°再現された環境で追体験でき、医療のデータ蓄積管理と医療教育を同時に実現する[17]などがあります。


メタバースは次のキラーサービス

メタバースの市場規模は、2024年に90兆円にのぼると言われています[18]。メタバースはゲームやSNS、VRと相性が良く、企業もそれらの延長線上にメタバースを構築しようとしています。なかでもSNSは発展途上の技術であり、それゆえ巨大なビジネスチャンスであるとみなされています[19]。
というのも、人が持っている利用可能な時間を考えれば、SNSはその品質次第でもっと「時間泥棒」になり得るからです。そして、その品質アップの鍵を握るのがメタバースです。

SNSからメタバースへ

SNSは人と人とのつながりを促進するサービスとされています[20]。ですがその実態は、他者とのつながりを絶って同属性の人々を囲い込む技術[21]です。同じ意見、同じ趣味を持った囲いの中は、自分の発言が認めてもらえるし、他人の発言には共感できる、とても快適な空間です。フィルター[22]の外には意見が対立しかねない異なる属性の人々が本当はいるけれども、お互いが接触しなければ存在しないのと同じというわけです。
こうして居心地のよい環境で長い時間を過ごし、その間に広告を見てもらうというのがSNSのビジネスです。そしてその特性を尖らせ、SNSの完成度をさらに高めるポテンシャルを持っているのがメタバースです。

おわりに

ではSNSの完成度が仮想空間によって最大限に高まったら、つまりメタバースが完成したらどうなるでしょうか。
前述の様々なサービスに自在にアクセスできる、あらゆるニーズを満たすことのできる空間が広がっている様子が想像できます。そこでお金を稼ぐことさえ当たり前になるかもしれません。授業が受けられ、業務もこなせ、友だちと会って話すことも、仮想のペットを飼って癒されることも、その中で完結します。しかも、それぞれが現実世界の不都合を取り除いた、快適な体験となるのです。それが健全かどうかは別として、人々のニーズに食い込んできそうな予感がします。もしもメタバースが人々にとって無くてはならないものとなった時、私たちは消費者かつ生産者として「もう一つの世界」とつき合うことになるでしょう。


参考資料
[1] NHK“米フェイスブック 社名を「メタ」に変更 仮想空間の開発強化へ”
[2] Youtube日本語公式ブログ“2022 年の展望: コミュニティ、コラボレーション、コマース”
[3] Microsoft“Mesh for Microsoft Teams が目指す、「メタバース」空間でのより楽しく、よりパーソナルなコラボレーション”
[4] 世界規模で支配的な影響力を持つ巨大IT(情報技術)企業群の通称。ビッグ・テック。
[5] 岡嶋裕史『メタバースとは何か――ネット上の「もう一つの世界」』(光文社、2022年)、14頁。
[6] 同書、26頁。
[7] 慶応義塾大学ハプティクス研究センター。
[8] VAQSO Inc「VAQSO VR」
[9] 明治大学宮下芳明教授の研究成果「味覚ディスプレイ」がEXPO2021で受賞。
[10] 近畿経済産業局『 VR ・ AR 等の先進的コンテンツを活用した取組実態及び知的財産権活用に関する調査 』
[11] Meta「Meta Quest2」
[12] Microsoft「HoloLens2」
[13] Google「GLASS Enterprise Edition 2」
[14]KPMGコンサルティング『【報告書 】令和2年度コンテンツ海外展開促進事業(仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業)』
[15] “1230万人が参加 トラヴィス・スコットが「Fortnite」で音楽ライブ”『販促会議2020年7月号』。
[16] NECソリューションイノベータ「NEC VR現場体感分析ソリューション」
[17] ジョリーグッド「オペクラウドVR」
[18] NHK“米フェイスブック 社名を「メタ」に変更 仮想空間の開発強化へ”
[19] 岡嶋、前掲書、65頁。
[20]、[21]、[22] 総務省webサイトhttps://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd114210.html

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