未知の世界(14歳~)

今回は私自身ではなく友人のはなし。
個人情報はフェイクで進行する。

中学校の友人Nは育ちの良いお嬢様であり、同時にギャルだった。目力の強い、愛らしい顔立ちで、学年1、2を争うモテ方をしていた。

私の好きな子もあの子の好きな子もみんなNのことが好き、みたいな無双。羨ましい。

とは言っても中学生の好きな人なんて日替わりランチくらいの頻度でコロコロ変わるような類ではあったが。

そんな無双ギャルNとこじらせクソオタクのテンプレみたいな私が何故に友人となったのか。部活が同じで、二人ともテレビゲームが好きだった。

Nの家に泊まりに行ってバイオハザードをしたりアダルトビデオ観賞したり、あの頃は本当に楽しかった。ホームシアターの大画面で見るアダルトビデオはなんと言うか、凄かった。

クソオタクなのにバスケットボールとか好きで運動部に入ったらギャルと友達になってしまい、学校終わりには私服に着替えてビリヤードやらゲームセンターやらに通い、教師の見廻りにとっつかまって親を呼び出されたりした。

公立中学ではなかったので校則が厳しかった。タバコ吸ってるの見つかった時は退学になるかと思った。

そんなギャルNは、私の知人だった田舎ヤンキーAに恋をした。Aは20歳で、当時流行りのバンドのボーカルに似たイケメンだった。よくヤンキーが乗ってる黒い大きな車を転がしていた。

Nは積極的に体当たりアプローチをし続け、Aとのドライブデートを実現させた。「私の初めてはAに捧げる!!」と全力だった。しかしAは20歳、さすがに中学生に手を出すことはなかった。下心なかったかというと、多少はあったようだが。ナイス自制心。

結局Nの恋は実らず、というか、その後もNの恋は全然実らず、彼氏ができるまで見届けることなく私は転校してしまい、Nと離れた。高校生になってからもしょっちゅう泊まりに行っていたので交流は続いていたが、いかんせん関西の田舎と東京で物理的に離れていた。

Nは高校に進学後、同じ中学校出身の女子と男の子を取り合ったり、相変わらずモテを極めたり、なのに彼氏ができなかったり、いろいろ面白かったようだが、噂話に過ぎないので、面白おかしく素敵なエピソードを書くことはできない。

さて、時は流れ大人になり、Nは美人女医(って雑誌に載ってた)となって東京へやってきた。私は10年ぶりくらいに、Nと食事に行った。

食事の席で、Nは私に話したかったことがある!と笑顔をキラキラさせた。食事の約束の数日前、Nは医療用機器の展示イベントへ行っていた。そこで様々な機器を見て、説明員の話を聞いていて、見覚えのある顔に遭遇していた。

「あれはA。私はAの顔は絶対に忘れない。」

すごい自信だ。大好きだったからね、知ってる、わかる。そしてNはFacebookでAの名前を検索し、その医療機器メーカーに勤めていることを特定した。探偵か。

Aは結婚していた。そしてNも新婚だ。しかし燃える初恋(?)の思い出には敵わず、NはAに連絡した。すぐにAから返事がきた。

展示イベントでAはNのことには気づかなかったようだが、Nのことは覚えていた。突然の再会に、Nからものすごく長い返信がきて、Aはまたキラキラしてた。

2人はしばらく連絡を取っていたようだ。

その後、この2人が会ったかどうかは知らない。会っていればそれはそれで人間的で趣深く、会っていなければそれはそれでガラス飾りのように美しい。

こういう話は、真実を全て知るよりも、途中までしか知らない方がなんかええやん。

出会った時と年齢も場所も大きく変わって、それでも確信を持ってその相手に気づくことができる、恋の力は強いというお話。

ちなみにNは私に愚連隊のDくんを紹介しようとしてくれたが、遠慮しておいた。クソブサヲタクと愚連隊少年はどう考えても合わない。会ってたらどうなってたかな。私も愚連隊に入ってたのかな。

そんな夏の夜のなにがし。

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