恋人 高校編(18歳)

私の人生では珍しく、本当に恋愛らしい恋愛だったと思う。
時系列的に混沌が生じるので書くか迷ったが、素敵な人なので書くことにした。

高校3年生の夏頃だったか、いちおう進学校に通っていたので、いわゆる受験勉強真っ盛りの時期のお話。

反感覚悟でものすごく正直に申し上げると、私はそこそこ頭が良かった。そして偏差値の高い大学へ進学したいという願望が全くなかった。

そのため、受験シーズン特有のピリピリした雰囲気のなか、私はアートセラピーを学んだり、素描を学んだり、実に空気を読めていない行動をとっていた。

そして恋をした。

同じクラスで仲良くなった2人の男の子SくんとAくんがハンドボール部だったのだが、2年生のときに同じクラスだったVもハンドボール部で、その流れからVともなんとなく交流をもつようになった。

2年生の4月、Vは交通事故で首を痛め、おっきなコルセットを巻いていた。ちょっと強面の容姿で、腕を組んで俯いていたので、私はVのことを、ものすごくこわい人だと認識し、同じクラスの1年間は一言も会話せずに終わった。後から聞くと、首が痛くて動けなかっただけ、とのことだ。

SくんとAくんはVのことをとにかく好きで、Vの面白い話をたくさん聞かせてくれた。そのおかげで、3年生になってからVの印象が良くなり、びびらず話せるようになった。私がVのことを好きになったのも、彼らによる刷り込みが原因かもしれない。

Vはハンドボール部のゴールキーパーだった。彼らの世代は関東大会まで進んだので、公立高校にしてはよく頑張っていたのだと思う。ちなみに私の偏見だが、ゴールキーパーはドMが多い。

Vの面白さに気づいた私は、数学の授業がVの教室だったので、ときどきVの机にウサギやらネコやらの落書きをして帰った。Vは笑っていた。

自分自身、いつからVのことを好きだったのかはよくわからない。Vと話すようになったのは夏頃で、Vの誕生日は11月で、それまでに3回くらい振られている。

「彼氏になって!」「やだ!」と言われ続けた。

それでも不定期で好きと伝え続けたのは、私のメンタルが強すぎるからなのか、自分でもよくわからない。少なくとも好意の表現は重たい感じではなかったし、Vも嫌な感じではなかった。

傍から見ても、私たちは仲が良かったと思う。

12月

クリスマス 放課後

「会いたいな」とメールしたら

「家に来る?」と返事が来た

想定外の返事だった。

すぐに「行く!」と返信した。

Vの家は高校から歩いて20分くらいの距離で、私は場所を知らないので、Vは高校近くの遊歩道まで家から迎えに来てくれた。

Vとはそれまで1度も2人きりになったことがなかった。時間割の都合で既に帰宅していたVは私服姿で、それを見れただけで私は十分に満足した。

私の鞄を自転車のカゴに乗せてくれて、ゆっくり歩いてくれて、女の子扱いしてくれる優しさが嬉しかった。

家に着くとご両親は出掛けていて、ラブラドールレトリバーが出迎えてくれた。Vがお茶を淹れてくれている間、ムツゴロウさんばりに犬と戯れさせていただいた。

リビングでお茶を飲んで、高校の友人や先生の話をして、Vの部屋に移動した。

「リング(ホラー映画)」と「ウイニングイレブン」どっちがいい? と聞かれて2人でウイニングイレブンをした。ぜんぜん勝てなかった。

ゲームに満足して電源を切って、夕方で、少し部屋が暗くなってきて、短い沈黙。私はおそらく最高に満足げにVを見つめていた。

Vは「照れるからそんなに見ないで」と言って、また黙った。

あー可愛いなあ、なんてのんきに考えていたら、「付き合おうか」とVが言った。

実は私は、この瞬間までVから承諾いただけることを想定していなかった。

「え? なんで?」って真顔で聞いた。

Vは苦い感じの笑顔で「楽しいかなって思ったから」と伝えてくれた。

「嬉しい、ありがとう。」

私は抱きついた。押し倒しはしなかった。

受験シーズンのピリピリした空気感の中、突然の交際が始まった。

友人たちは祝福してくれたり、あからさまに嫌悪感を表現されたり、呆れられたり、反応は千差万別だった。

Vは指定校推薦で進学先が決まっていた。私も学部は違えど、同じ大学に進学することにした。

私の受験が終わるまでにVは車の免許を取り、私たちは春からのドライブデートを楽しみにしていた。

Vとお付き合いした2年間は幸せ一色なので、続きの話は読者の皆様にとって面白い内容ではないかもしれない。

Vはお兄さんへの誕生日祝いで、お兄さんの部屋いっぱいにハートの風船をセッティングするような、お茶目でいたずら好きな性格だ。

大学編では、私への様々なサプライズ話を書くので、そういうものが好きな人にとっては面白い可能性はある。

人の不幸は蜜の味タイプの人にとっては、バーテンダーとの続編が面白いだろう。

合間に他の男の人たちの話を挿入しつつ、今後も頑張って書くので、読んでいただけると嬉しい。

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