白雪姫(18歳)
大学に入学し、新たなクラスメイトができた。クラスの男女比はちょうど半々くらいだった。
私の通っていた大学はとてもとても華やかな文学部や、合コンの盛んな経営学部、経済学部などがあり、そんな賑やかさを横目に我が法学部は地味に存在していた。むしろ存在感を消していた……かもしれない。
とは言っても大学1年生。右に左に恋愛模様が見られた。クラスの友人Oくんは、私が中国語クラスで親しくしていた友人Sちゃんに一目惚れした。
学内でSちゃんに一目惚れして、穴が開くほど見つめ続けていたところ、たまにSちゃんの近くに私がいることに気づいた、という失礼な言葉とともにSちゃんを紹介して欲しいと頼まれた。
Oくんは柔道をしていて、大柄で純朴。大変失礼だが、モテないだろうなあと私は思っていた。
Sちゃんは色白で顔立ちも可愛らしく、異性にも同性にも好かれる素敵な人だ。Oくんの件があり、恋人の存在を確認したところ、フリーだった。
OくんがSちゃんのことを白雪姫と呼んでいて、容姿からつけたコードネームかと思いきや、Sちゃんが授業中に使っているボールペンの模様が白雪姫だった。そんな細かいところまで観察して……。
さて、この美女と野獣的な組み合わせ、どう考えても成就しない片思いだ。それどころか、野獣Oくんを白雪姫Sちゃんに紹介する行為自体がSちゃんの私に対する好感度下がるやつなのでは、など悶々としつつ、Oくんの人柄は悪くないため、渋々紹介を実行することにした。
「Sちゃん、実はお願いがあって……。」
Oくんから私への依頼内容
・Sちゃんを紹介してほしい
・Sちゃんの連絡先を知りたい
私からSちゃんへの依頼内容
・Oくんと言う男性を紹介させてほしい
・できれば連絡先を交換してあげてほしい
・メールに一度だけは返事してあげてほしい
・うざければ着信拒否でOK
・デートとか一切不要
この条件調整は悪意なのか善意なのか自分でもわからない。Oくんは容姿は良くないけど、内面はまあ悪くはない少なくともストーカーになるタイプではない、とフォローしておいた。
優しい白雪姫Sちゃんは承諾してくれた。しかもしばらくOくんとメールのやりとりを続けてくれた。
OくんはSちゃんとメールできるだけで舞い上がっていて、微笑ましかった。デートに誘うなんて畏れ多くてできない、とのことで安心した。
報酬としてOくんにはランチをご馳走してもらい、ドラクエ8で行き詰まる度に即レスで助言してもらった。
忘れた頃にOくんから「好きです、付き合ってください。」というメールが(私宛に)届いた、と同時に電話がかかってきた。
私「送り先間違えとるで」
O「練習!! 練習!!! 今のどうかな!?」
私「想いを伝えるのは自由だ。相手がどう答えるかも自由だ。がんばれ。」
O「がんば……っいややっぱ無理……いやでもやっぱ略」
Sちゃん本人へ送る勇気がどうしても出ないようだった。まあ振られるのわかってて想いを伝えるのつらいよね、わかるよ。でも伝えたいくらい好きなんだよね、わかる。
と心の中で返事しつつ「まあがんばれ」と伝えて電話を切った。
その後、Oくんはなんとか気持ちを伝えることはできたようだが、その報告はSちゃんからいただいた。Oくん、残念だよ。
Oくんは大学の4年間、彼女ができた気配はなかった。
Oくんの片思いは報われることなく終わった。
次回は同じくクラスメイトのJくんの恋物語を書こうと思う。
男の子たちよ、私に恋愛相談するのは賢い選択だと思うが、私に惚れてもええんやで。いややっぱダメ。
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