バーテンダー 出会い編(21歳)

Aちゃんが登場したので、そのままバーテンダーの話をしたいと思う。

Aちゃんはアルバイト先の男性を3人ほど翻弄した後、パン屋のアルバイトを辞め、レストランバーを新たなアルバイト先として選んだ。ちなみに私は類友ではないので残念ながら1人たりとも翻弄していない。モテないって言うな、知ってる。

話を戻すと、そのレストランバーの店長がDである。Dは当時32歳、私の11歳年上だ。念のため補足すると、独身だ。

ある休日、Aちゃんからカラオケに行こうと連絡があった。アルバイト先の男性社員2人と一緒に、閉店後、深夜のお誘いだ。

特に翌日の予定もなかったので快諾し、Aちゃんのアルバイト先へ伺った。カラオケまで車移動とは聞いていなかったので、警戒しつつ、Dの車へ乗り込んだ。彼らの職場をおさえていたので、万が一の時、通報はできる、と雑な判断をした。

※ 良い子のみんなは深夜にアンノウンの車へ乗り込むのはやめましょう

無事、カラオケまでたどり着き、2時間ほど楽しく過ごした。AちゃんがDを狙っていたようで、私はもう1人(名前も顔も記憶にない)の相手をしてね、という意図で呼ばれたようだが、物事は計画どおりには進まないものである。

始発前の時間帯、つまり3時過ぎに解散、Dが全員の家まで送り届けることになった。

私→Aちゃん→男性社員

もしくは

男性社員→私→Aちゃん

という順番で送り届けるのがセオリーだと思う。正解はわからないが。ところが、Dは、男性社員→Aちゃん→私の順に送り届けた。

アンノウンの車で2人きりは気まずい。そして危険だ。我ながら危機管理能力の低さに呆れる。

結果的には運良く、Dは紳士的に世間話をしながら私の自宅へ送り届けてくれた。自宅を特定されることを警戒し、すこし離れた場所に停めてもらった。

車を降りる前にDは自身のメールアドレスを裏書きし、私に名刺を渡してきた。帰宅後、私はお礼のメールを送った。

Dはたまに連絡をよこし、私は返信していた。内容は本当に普通の世間話だったし、大学生の当時はそんなやりとりをする異性の友人は複数いた。私にとって特別なことではなかった。そして私は真面目なので「返信しない」という行為がとても苦手だ。なお、相手から返信がなくても何ひとつ気にならない。

しばらくして、美味しいイタリアンを食べに行かない?と誘われ、食事にでかけた。

Dの略歴はここで初めて知った。

小学生の頃からヤンキー
中学校の卒業式は刺繍入りの白い特効服
高校は1年で中退
ありとあらゆる薬物に手を出し
バイク事故で左足にはボルトが入っている

覚えている内容はこの程度だ。だが、目の前に居るのはただのバーテンダーである。ヤンキーでもないし、薬物中毒者でもない。

Dの話を淡々と聞き、受け止めた。ヤンキーかっこいいとかは思わないし、むしろ育ちが悪い人間は苦手だ。

この日は飲酒していたので電車で解散した。

バーテンダーという職業柄、生活の時間帯がなかなか合わない。Dの休日は週に1度、月曜のみだ。仕事のある日は昼から深夜まで働いていた。

2度目の食事は1か月ほど後だったと思う。その日は車で横浜まで出て、お昼ご飯を食べた。夕方、家に送り届けてくれる際、車のドアを開けたところでDは「キスしていいですか?」と聞いてきた。

Dの車は大きなアメリカ車で、乗り降りする際にパワーが必要なため、いつもドアを開けてくれる。さて、私は車の中、ドアの前にはD、ここで断るのはなかなかに難しく、そして身の危険を感じる。承諾しても危険を感じる。

5秒ほど考え、承諾を選択した。誤解しないでほしいが、私は流されやすいわけではないし、誰にでもOKをする女ではない。むしろ守備範囲は狭い。私もそれなりにDに対して好感を抱いていたのだ。

Dは触れるか触れないか程度のキスをして、そのまま帰宅させてくれた。

紳士やん、と思っていたが、私の認識は甘かった。

Dの中で、私はその時点から「彼女」になっていたのだ。

「note:蠍座の男」で書いたが、当時の私は傷心で、他者を傷つけることを好まなかった。なんだかよくわからないが、そんなこんなでDと私の交際は始まった。

Aちゃんに報告すると「わたし彼氏いるから♪」とニッコリばっさりであった。

Dとはここからパッション溢れる交際を2年ほど続ける。Dの部屋から埃をかぶった注射器とゴムバンド?が出てきたり、大喧嘩の末、見知らぬ路上に捨て置かれたり、長くなるので、また別のnoteにて語りたいと思う。

書きやすいので受け身の話題から書いているだけで、私は流されやすい人間ではない。断じて違う。次回は、私が好きで好きで仕方なかった方の話をしよう。

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