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【Active Book Dialogue】『数学ガールの秘密ノート/学ぶための対話』感想レポート

こちらの本を通しで1回、Active Book Dialogueで2回読みました。感想レポートです。

ABDについてご存知無い方は、過去にnoteを書きましたのでそちらを読んでみてください。

この本に期待していたこと

数学、学ぶため、対話。タイトルに私にとってのホットトピックが3つも入っています。

数学は、かつて高校2年まで友達でした。しかし3年の数学Ⅲ・Cから急によそよそしくなり、しかしプログラマの端くれを名乗るのなら学び直さねばならぬと思って今仲直りのために足掻いている所です。
最近は書籍「オイラーの贈物」を亀足ペースで読んだり、「ヨビノリ」というYouTubeチャンネルで線形代数を学んだりして、徐々に仲直りの兆しが見えつつあります。

学ぶためというのも刺さります。誰から聞いたのか、いつからか分からないのですが、私は「常に道半ば」という言葉が好きです。ゴールというのは即ち袋小路に見えていて、ゴールなんてしたくない。常に道半ば、学び続けていたい。そのために何が必要なのか、この本から受け取れたら最高です。

対話は会社でActive Book Dialogueを推進したり、ありのまま対話委員会という活動に参加していることからホットなテーマになっています。私はついつい対話ではなく議論に持ち込みがちな人間であるからこそ、対話と議論を使い分けられるようにしたいと思っています。
数ページめくればこの本は「僕」「ユーリ」「ノナ」の3人が対話をしている事はすぐ分かります。対話のお手本にさせて貰うことにしました。

著者の結城浩先生の本は過去に「プログラマの数学(第1版)」を読んでおり、とても分かりやすかったですし、かねてから「数学ガール」シリーズはいつか全巻通して読んでみたいと思っていました。

これは読了後に見つけたのですが、こんなコラムも書いておられるようですね。

Active Book Dialogueの活動を始めてすぐにこの本が発売されたので、必ずABDで読むと決めて購入した本です。

概要

数学が得意な「僕」と、知識は僕より少ないが理解力の高い「ユーリ」、その友人で数学がからきしな「ノナ」の3人が、平面幾何学を題材に数学と数学を学ぶ事について対話していく、という物語になっています。

大きなドラマはありませんが、先が気になる読みやすい本でした。

学び1 : 例示は理解の試金石

「ノナ」は数学が苦手で、「暗記しますか?」とよく問いかけます。「僕」は「暗記より理解をしよう」と促します。

自分の学生時代を振り返ると耳が痛いですし、今でも資格試験対策などは暗記しているのですが、理解することが重要なのは流石に分かります。

その理解できたかの指標として「例示は理解の試金石」という言葉が挙げられていました。言葉通り、自分が理解できたかは、例を出せるかどうかで測れば良いということ。これは自分の中で腹落ちしましたし、今後あらゆるジャンルでこれが言えそう。

学び2 : 分からないというにも勇気が必要

これは自分としては胸に来る言葉でした。

教わる側は、分からないというのにも勇気が必要、
かつ話を止めても、どこが分からないのか分からない。

私は、何かモノを教えて貰う時、分からない時に分からないという事ができる人間です。そうしなければ教えてくれている人に失礼だとすら考えてきました。なので、分からないのに分かると言ってしまう人間が自分には理解できませんでした。

この本を読んでいて、そういう状態もあるのだということを理解しました。

学び3 : 納得が得られることを期待しつつ学び続ける

「これ勉強して何に使うの?」「何の意味があるの?」と思う事は数知れません。意味の理解はできるけど、意義の納得ができない状態です。

そういった状態に対して、作中では「いつか納得できると期待する」という表現があり、これが学生時代の私には理解できていなかった事だなと思いました。

自分の中で警鐘のように時々思い返す言葉で、学生時代に教授が言っていたのですが、「すぐ役に立つものは、すぐ役に立たなくなる」というものがあります。

今すぐ役に立たずとも、役に立つ時には長く役立ってくれることを信じて、学び続けるのも良いと思います。

対話での学び

この本をABDで読んで、Dialogueのタイミングで出た話が面白かったのでいくつか紹介させてください。

数学の意義
「意義が分からなくとも、いつか分かると信じて学び続ける」といった事を書いている部分に着目して、意義が分かると急に面白くなるよね、という事が話題になりました。
私はかつて三角関数の意義について気付いた時の事を思い出していました。物理の力学の問題の中でsinとcosを使って計算ができることを知った時、ぞくぞくしました。「早く言え!」という気持ちになりました。残念ながらどのように使うのか今ではあまり覚えてはいないのですが、sinとcosは今でも好きです。
数学が苦手な人と好きな人が6:4くらいだったのですが、数学好きな人はいずれも、数学の意義を何らかで見出している人でした。

なぜ勉強しないといけないのか
同じ部分について、子供に勉強しないといけない理由を説明する時の問題だよな、という話になりました。
ふりかえって思うと、学ぶことが楽しいと思えるようになったのは大人になってからです。子供の頃より学ぶことの意義が多く分かるようになった事が大きいです。
子供の頃は全く勉強しない子供で、それは思い返すと、学ぶことの意義が「良い大学に行ける」だったのが主な理由だろうなと。

2つの世界
デザイナーの方が対話の場に参加されていたのですが、「ひとつの答えがある学問ならではの考え方であると思う」という事を話されていたのが印象的でした。

「自分の育ってきた芸術の世界では、決まった正解が無い。むしろ『これが正解である』と言い切る事が重要になることすらある。どうしてそうなるのか理由がはっきりしないこともある。だからどうしてという問いに答えがある世界ならではの考えだと思った」

だから自分には適用できないという文脈ではなく、そういう世界の考え方に初めて触れたのだという事でした。

この本でもそうですが、結城先生はよく2つの世界の話をされますが、ここでも2つの世界があることに驚きと感動を覚えました。

おまけ

この記事の画像は、作中に出てくるリサージュ図形を用意しました。

Excelで描こうとして挫折した後、Pythonで書く方法が見つかったので以下のコードでカキカキしました。

import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
import math

# リサージュ図形の式は以下3行
t = np.arange(-100, 100, 0.01)
x = np.cos(2*t + 2*math.pi/9)
y = np.sin(3*t)

plt.plot(x, y)
plt.show()

そんなに時間がかかったわけではないですが、実行してみて本と同じリサージュ図形が描けた時はちょっとした感動を覚えました。

簡単にコードを描いて数式の描く図形を確認できるのも、大人になって数学を学ぶ楽しみかもしれません。

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