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運動器の解剖学(靭帯学まとめ)全テキストデータ!総論~各論まで!

運動器の解剖学(靭帯学の総論)から(靭帯学の各論)の全テキストデータです。
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靭帯学
(総論)

骨の連結は線維性の連結軟骨性の連結滑膜性の連結に大きく分類される.一般的に使われる関節は、滑膜性の関節である。

A.線維性の連結
Fibrous joint

 骨と骨が強い線維性の結合組織で連結される.関節腔を持たず可動性は少ない.靱帯結合,縫合,釘植がある.

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靱帯結合syndesmosis
縫合suture
     骨結合osseous joint
釘植gomphosis

靭帯結合 骨と骨が靱帯または膜状の線維性結合組織で結合するもの.脛腓靱帯結合,骨間靱帯,骨間膜(前腕骨間膜,下腿骨間膜)などがある.
縫合 骨と骨がわずかな結合組織で接近して結合するもの.加齢により結合組織が骨化すると骨結合となる.頭蓋骨の冠状縫合,矢状縫合,ラムダ縫合などがある.
釘植(ていしょく) 歯根が歯槽にはさまって結合組織の歯根膜により結合するもの.

B.軟骨性の連結
Cartilaginous joint

骨と骨が硝子軟骨や線維軟骨により結合するもので関節腔を持たず可動性は少ない.軟骨結合と線維軟骨結合がある.

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軟骨結合synchondrosis
     硝子軟骨hyaline cartilage
     骨結合osseous joint
(線維軟骨)結合symphysis
     線維軟骨fibrocartilage

軟骨結合 骨と骨が硝子軟骨によって結合するもの.その表面は骨膜につづく軟骨膜で被われ成長終了後は骨結合となる.幼若期の頭蓋底,骨端成長板,小児期の寛骨(腸骨,恥骨,坐骨間の結合)などがある.
(線維軟骨)結合 骨と骨が線維軟骨によって結合するもの.その表面は硝子軟骨の薄い層で被われる.線維軟骨は通常,骨化しない.恥骨間円板で結合する恥骨間結合,椎間(円)板で結合する椎体間結合がある.

C.滑膜性の連結
Synovial joint

一般的な(狭義の)関節.連結部は関節包(ほう)に包まれ,その中(関節腔(くう))は関節液(滑液)で満たされる.関節面は関節軟骨に被われ関節頭とそれを受ける関節窩からなり可動性がある.関節の可動範囲を関節可動域(ROM;range of motion)という.

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関節包joint capsule
  関節腔joint cavity
  滑液synovial fluid
関節面 articular surface
  関節軟骨articular cartilage
  関節頭joint head;articular head
  関節窩glenoid fossa;glenoid cavity
関節可動域ROM;range of motion

(滑膜性)関節の構造と機能

関節包joint capsule
  線維膜fibrous membrane
  滑膜synovial membrane
    滑液synovial fluid
関節軟骨articular cartilage
  関節面 articular surface
  硝子軟骨hyaline cartilage
  線維軟骨fibrous cartilage

滑膜性関節の特徴

関節包(ほう) 滑膜性関節を包む膜で,線維膜(外側)と滑膜(内側)の2層からなる.線維膜は骨膜(骨の表面を被う)が線維性の厚い膜(密性結合組織)に移行したもので神経終末(しゅうまつ)(感覚神経など)が多数分布するが,血管供給は少なく損傷回復には時間がかかる.一方,滑膜は柔らかな膜(疎性結合組織)で血液に富み,関節腔内に滑液(関節液)を分泌する.
滑液(かつえき) 滑膜から関節腔内に分泌される関節液で透明で粘稠性の高い弱アルカリ性の液体である.関節軟骨に栄養を与え,関節の衝撃緩和と潤滑作用がある.膝関節でも容量は2ml程度である.(▲関節リウマチでは関節液の粘稠性は低下しサラサラになる.)
関節軟骨 関節面すなわち関節頭と関節窩の表面を被う軟骨で0.5~4mm程度の厚みがある.関節軟骨の殆どは硝子軟骨からなるが,例外的に顎関節,肩鎖関節,胸鎖関節,下橈尺関節は線維軟骨である.

(滑膜性)関節の補助装置


関節唇acetabular labrum
関節円板articular disc
  線維軟骨fibrous cartilage
関節半月articular meniscus
靱帯ligament
滑液包synovial bursa(⇒筋の補助装置)

関節唇(しん) 関節窩の縁にあり,その深さを補い関節適合を助ける線維軟骨.肩甲骨の関節窩と寛骨臼にある.
関節円板 関節腔を二分する線維軟骨で顎関節,胸鎖関節,肩鎖関節,下橈尺関節などの特定の関節にある.関節半月は形状が半月状で膝関節にある.
靱帯 骨と骨を結合させる強力な結合組織線維で関節運動の方向を限定し,過度の関節運動を制限する.また,感覚受容器も多く分布する.
滑液包,腱鞘 (⇒筋の補助装置)

(滑膜性)関節の補強靱帯


関節(包)靱帯capsular ligament
副靱帯accessory ligament
    関節(包)内靱帯intracapsular ligament
    関節(包)外靱帯extracapsular ligament
側副靱帯collateral ligament

関節(包)靱帯 関節包の線維膜の一部が発達したもの.関節運動が激しい部位にある.
例)Y靱帯(腸骨大腿靱帯),坐骨大腿靱帯,恥骨大腿靱帯,肩関節の関節上腕靱帯など.
副靱帯 靱帯の一部または全部が関節包の線維膜から分離したもの.関節の両側に形成される場合,側副靱帯という.
 1)関節(包)内靱帯 関節腔内にある副靱帯.大腿骨頭靱帯,膝の前および後十字靱帯など.
 2)関節(包)外靱帯 関節包外に靱帯の一部または全部がある副靱帯.膝関節の外側側副靱帯など.

(滑膜性関節の)関節面の形状による分類


蝶番関節hinge joint
ラセン関節spiral joint
車軸関節pivot joint
球関節spheroid joint (ball and socket joint ) 
臼状関節cotyloid joint
顆状関節(楕円関節)condylar joint
鞍関節saddle joint
平面関節plane joint
半関節amphiarthrosis

1. 蝶番関節
屈曲と伸展のみ可能.関節頭に骨の長軸と直交する縦の溝(導溝(どうこう))があり,それを受ける関節窩も同様の隆起(導稜(どうりょう))を有す.
例)PIP関節,DIP関節,母指MP関節,脛骨大腿関節※
2. ラセン関節
蝶番関節に属し屈曲と伸展のみが可能だが,関節頭の溝(導(どう)溝(こう))と関節窩の隆起(導(どう)稜(りょう))による運動方向がラセン様となり骨の長軸と直交しない.
例)距腿関節,腕尺関節,(脛骨大腿関節※)
3. 車軸関節
関節頭が運動軸となり関節窩の周りを回旋する.
例)上橈尺関節,下橈尺関節,正中環軸関節
4. 球(きゅう)関節
関節頭と関節窩が半球状で最も運動範囲が広い.
例)肩関節,腕橈関節,胸鎖関節※
5. 臼状関節(きゅうじょう、うすじょう)
球関節に属すが,関節窩が深く関節頭が半分以上はまり込む.
例)股関節
6. 顆状関節(楕円(だえん)関節)
球関節が変形したもので関節頭と関節窩が楕円形であり運動方向が2方向に制限される.
例)環椎後頭関節,橈骨手根関節,顎関節,距骨下関節,距踵舟関節,中足趾節関節,手指MP関節
7. 鞍関節(あんかんせつ、くらかんせつ)
一方の関節面が縦に凹み横に凸であれば,それを受ける関節面は縦に凸で横に凹んだ鞍(くら)状をした関節.運動方向は2方向に制限される.
例)母指CM関節,膝蓋大腿関節,胸鎖関節※,踵立方関節,第1足根中足関節
8. 平面関節
関節面が平面に近い関節.相互の滑りが生じる.靱帯による制限が大きく運動範囲は,通常狭い.
例)椎間関節,外側環軸関節,肩鎖関節,肋骨頭関節,肋横突関節,手指CM関節,手根間関節,近位脛腓関節,距骨下関節,足根間関節,第2~5足根中足関節
9. 半(はん)関節
平面関節の一種.関節面は平滑でないものが多く可動性も少ない.
例)仙腸関節

運動形式による(滑膜性)関節の分類

①一軸性の関節
運動軸が1つ(自由度:1),一つの面で運動可能.
例)蝶番関節,ラセン関節,車軸関節
②二軸性の関節
運動軸が2つ(自由度:2),二つの面で運動可能.
例)楕円関節(顆状関節),鞍関節
③多軸性の関節
運動軸が無数(自由度:3),多方向の運動可能.
例)球関節,臼状関節,平面関節,半関節

靭帯学
(各論)

脊柱および頭蓋の連結
Articulations of the Vertebral Column
and with the Cranium

脊柱を構成する椎骨,仙骨,尾骨および頸椎と頭蓋骨の連結でA. 椎骨間の連結,B. 仙骨と尾骨の連結,C. 頸椎と頭蓋骨の連結に分類する.

A. 椎骨間の連結

 [1]椎体間の連結,[2]椎弓間の連結,[3]椎間関節がある.

[1] 椎体間の連結

椎体間を連結するもので,椎体と椎体の間にある椎間(円)板,椎体の前面を縦走する前縦靱帯,椎体の後面を縦走する後縦靱帯がある.

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椎間円板intervertebral disc
  髄核nucleus pulposus
  線維輪anulus fibrosus
  椎体終板vertebral endplate
前縦靱帯anterior longitudinal ligament
後縦靱帯posterior longitudinal ligament(PLL)
  蓋膜tectorial membrane
  ▲後縦靱帯骨化症OPLL
▲椎間板ヘルニアintervertebral disc herniation

椎間円板(椎間板) 椎体と椎体の間(C2/3~L5/S1)にある(C1には椎体がないため,その上下にはない).厚い円板状で線維輪と髄核から構成される.
髄核 椎間板の中心部にあるゼラチン様の線維軟骨で水分が80~85%含まれ弾力,膨張性に富み,脊柱への長軸方向の衝撃を吸収し脳を保護する.
線維輪 走行が異なる多数の層で髄核を囲んでいる.線維輪の外側部はタイプⅠコラーゲン線維が様々な角度で互いに交差し椎体の上面と下面の外周部に付く.線維輪内側部はタイプⅡコラーゲン線維が椎体内側の硝子軟骨性の関節面(椎体終板:椎体内側中央部にある)に付く.成人の椎間板は主に椎体終板からの拡散diffusionによって水分や栄養分を得ている.
成人の髄核には神経,血管はないが線維輪の外側1/3は神経,血管支配があり疼痛の受容器も存在する.(▲変性,外傷などによる椎間板の亀裂に神経が侵入し疼痛の原因となる)椎間板は頸部に5(C2/3~6/7),胸部に12(C7/T1~T11/12),腰部に5(T12/L1~L4/5),仙骨部に1(L5/S1)の合計23ある.
前縦靱帯 後頭骨底部から椎体前面,椎間板前縁と僅(わず)かに結合しながら仙骨前面までを被う長い靱帯.上端は狭く厚いが下端は広く薄くなる.
後縦靱帯 蓋膜(がいまく)(後頭骨の斜台に付く)から脊柱管の前壁(椎体の後面)を被う長い靱帯.椎間板の後面と固く結合し椎体の縁とも結合するが椎体後面の中央とは結合がゆるい.▲後縦靱帯骨化症OPLLでは,この靱帯の肥厚が徐々に進行し後方にある脊髄が圧迫される.

腰部椎間板ヘルニアについて

腰部の椎間板が膨隆した状態.椎間板は後方中央に裂けやすいが,中央に後縦靱帯があるため髄核の脱出は後外側方向へが多い.L4/5のヘルニアではL5神経根,L5/S1ではS1神経根が損傷されやすい.中心性の腰部椎間板ヘルニアにより排尿障害が生じることがあるが,これはS2,3,4の神経線維が腰部中央で障害されることによる.

[2] 椎弓間の連結

椎弓間の連結には,脊柱管の後壁にある黄色靱帯,棘突起間にある項靱帯および棘間靱帯,棘突起上を結ぶ棘上靱帯,横突起間を結ぶ横突間靱帯がある.

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黄色靱帯yellow ligament(ligamenta flava)
   ▲黄色靱帯骨化症OYL
棘間靱帯interspinous ligament
項靱帯nuchal ligament
棘上靱帯supraspinous ligament
横突間靱帯intertransverse ligament

黄色靱帯(おうしょく) 脊柱管の後壁にあり軸椎(C2)から第1仙椎の上下の椎弓板を結ぶ短く強い靱帯.弾性線維を50~80%含み黄色で後方は棘間靱帯と結合する.▲黄色靱帯骨化症OYLでは,この靱帯の前方にある脊髄が徐々に圧迫される.
棘間靱帯 上下の棘突起間を結ぶ薄い靱帯.その線維は棘突起に並行から斜めに張る.垂直な線維はないため脊柱の屈曲運動の制限は比較的少ない.
項靱帯 後頭骨の外後頭隆起から頸椎の棘突起上をC7棘突起まで張る膜状の靱帯.頸部の固有背筋を左右に分ける中隔でC7以下は棘上靱帯に移行する.
棘上靱帯 項靱帯につづきC7棘突起の尖端から棘突起上を仙骨後面まで張る.
横突間靱帯 隣接する椎骨上下の横突起間(腰部は副突起間)を結ぶ.

[3] 椎間関節

上位の椎骨の下関節突起と下位の椎骨の上関節突起による平面関節.椎骨の場所で関節面の傾きが異なり,関節運動もそれに応じて生じる.

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椎間関節zygapophysial joint(=facet joint)
  平面関節plane joint
  下関節突起inferior articular process
  上関節突起superior articular process

頸椎の椎間関節 薄くて強くゆとりのある関節包に包まれ関節面は上前方から後下方へ約45°傾き屈曲,伸展,回旋,側屈の可動性が大きい.
胸椎の椎間関節 関節面は前額面に近く関節包もゆとりがないため屈曲,伸展の可動性は小さい.
腰椎の椎間関節 関節面は矢状面に近いため可動性は屈曲,伸展で大きく,回旋や側屈で小さい.

B. 仙骨と尾骨の連結

仙尾関節 仙骨と尾骨が薄い線維軟骨板により連結される線維軟骨結合.しばしば骨化して骨結合となる.女性は可動性が大きい.主な靱帯は浅後仙尾靱帯,深後仙尾靱帯,前仙尾靱帯,外側仙尾靱帯の4つ.

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仙尾関節sacrococcygeal joint
  線維軟骨板fibroplate
    線維軟骨結合symphysis
浅後仙尾靱帯superficial dorsal sacrococcygeal             ligament
深後仙尾靱deep dorsal sacrococcygeal ligament
前仙尾靱帯ventral sacrococcygeal ligament
外側仙尾靱帯lateral sacrococcygeal ligament

1)浅後仙尾靱帯 仙骨裂孔縁から尾骨後面に至り下部は左右に分かれて仙骨管下口を挟む.
2)深後仙尾靱帯 後縦靱帯のつづきとして仙骨管の前壁から尾骨背面に至る.
3)前仙尾靱帯 仙骨尖の前面から尾骨前面に至る.
4)外側仙尾靱帯 仙骨尖の側縁から第1尾椎横突起に至る.

C. 頸椎と頭蓋骨の連結

 頸椎上端(C1,2)と後頭骨との連結.この三者間の連結には椎間板が存在せず比較的緩い関節包を持った小さな滑膜性関節の組合せからなる.全体として頭(とう)関節とも呼ばれる.

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環椎後頭関節atlantooccipital joint
    楕円関節(顆状関節)condylar joint
環軸関節atlantoaxial joint
    正中環軸関節median atlantoaxial joint
      車軸関節pivot joint
    外側環軸関節lateral atlantoaxial joint
      平面関節plane joint
環椎十字靱帯cruciate ligament of atlas
    環椎横靱帯transverse ligament of atlas
    縦束longitudinal bands
翼状靱帯alar ligament
歯尖靱帯apical ligament
蓋膜tectorial membrane
前環椎後頭膜anterior atlantooccipital membrane
後環椎後頭膜posterior atlantooccipital membrane
外側環椎後頭靱帯lateral atlantooccipital ligament

環椎後頭関節 後頭骨の後頭顆とC1の上関節窩による楕円関節(顆状関節)でC0/1とも記載される.C1の上関節窩は楕円状に凹んで外側部が高いため頭部の屈曲,伸展,側屈方向へのみ可動性を有する.頭部の回旋では環椎後頭関節は動かず,軸椎の上で環椎と後頭骨が一体となって動く.

環軸関節 C1とC2の間の関節で正中環軸関節,外側環軸関節からなる.一般にC1/2と記載される.

1)正中環軸関節
軸椎の歯突起と環椎との連結で車軸関節に分類される.歯突起の前方部分は歯突起の前関節面とC1の歯突起窩,後方部分は歯突起の後関節面とC1の外側塊の間を結ぶ環椎横靭帯の前面で連結する.それぞれ別の関節包に包まれ頭頸部の回旋の大部分に関わる.関節包は薄くゆるい.

2)外側環軸関節
環椎(C1)の下関節面と軸椎(C2)の上関節面との平面関節.関節包は広くてゆるく頭頸部の回旋に関わる.

環椎十字靱帯 C2の歯突起を後方から十字形に被う2つの靱帯(環椎横靱帯,縦束)の総称.歯突起をC1の前弓部に保持し頸椎回旋時の軸を安定させる.1)環椎横靱帯(かんついおうじんたい)
環椎(C1)の両外側塊の間に張る厚く強い靱帯で環軸関節を構成する歯突起を保持し,歯突起の後方への移動を制限し延髄,頸髄を守る.
2)縦束(じゅうそく)
蓋膜の前で歯突起の後方にありC2の椎体後面と大後頭孔の前縁を縦方向に結び環椎横靱帯を補強する.


翼状靱帯(よくじょうじんたい) 歯突起上部から上外側に走り後頭顆内面に付く一対の靱帯.頭部の過度の回旋を制限する.
歯尖靱帯(しせんじんたい) 縦束の前方にありC2の歯突起尖と大後頭孔前縁を結ぶ.
蓋膜(がいまく) 後縦靱帯の上部に続く幅広い膜.環椎十字靱帯を後方から被う屋根を形成する.後頭骨の斜台やC2,3の椎体後面に付く.
前環椎後頭膜 C1の前弓と大後頭孔の前縁との間に張る線維性の膜.
後環椎後頭膜 黄色靱帯の続きとされ,C1の後弓と大後頭孔の後縁との間に張るが椎骨動脈溝(環椎にある)の上は欠けており,ここを椎骨動脈と第1頸神経(後頭下神経)が通る.
外側環椎後頭靱帯 後頭骨とC1の横突起の間に張り,環椎後頭関節の関節包の外側面を補強する.

Ⅱ.頭蓋の連結
Joints of skull

頭蓋の骨の大部分は縫合により連結される.頭蓋骨と下顎骨は滑膜性関節(顎関節のみ),舌骨は靱帯により頭蓋骨と連結する.その他,軟骨結合するものがある.

1.頭蓋の縫合
Cranial sutures

 線維性の連結(⇒靱帯学総論)である.

 1.冠状縫合coronal suture
 2.矢状縫合sagittal suture
 3.ラムダ縫合(=人字縫合)lambdoid suture
 4.その他の縫合
・後頭乳突縫合occipitomastoid suture
・蝶前頭縫合sphenofrontal suture
・蝶篩骨縫合sphenoethmoidal suture
・蝶鱗縫合sphenosquamosal suture
・蝶頭頂縫合sphenoparietal suture
・鱗状縫合squamosal suture
・前頭縫合frontal suture
・頭頂乳突縫合parietomastoid suture
・鱗乳突縫合squamomastoid suture
・前頭鼻骨縫合frontonasal suture
・前頭篩骨縫合frontoethmoidal suture
・前頭上顎縫合frontomaxillary suture
・前頭涙骨縫合frontolacrimal suture
・前頭頰骨縫合frontozygomatic suture
・頰骨上顎縫合zygomaticomaxillary suture
・篩骨上顎縫合ethmoidomaxillary suture
・蝶頰骨縫合sphenozygomatic suture
・蝶上顎縫合sphenomaxillary suture
・篩骨涙骨縫合ethmolacrimal suture
・蝶形鋤骨縫合sphenovomerine suture
・側頭頰骨縫合temporozygomatic suture
・鼻骨間縫合internasal suture
・鼻骨上顎縫合nasomaxillary suture
・涙骨上顎縫合lacrimomaxillary suture
・涙骨甲介縫合lacrimoconchal suture
・上顎間縫合intermaxillary suture
・口蓋上顎縫合palatomaxillary suture
・口蓋篩骨縫合palatoethmoidal suture
・正中口蓋縫合interpalatine suture
(=median palatine suture)
・横口蓋縫合palatomaxillary suture

2.頭蓋の軟骨結合
Cranial synchondroses

 頭蓋底の骨の間の軟骨結合(⇒靱帯学総論).

<成人>
1.蝶後頭軟骨結合sphenooccipital synchondrosis
2.蝶錐体軟骨結合sphenopetrosal synchondrosis
3.錐体後頭軟骨結合petrooccipital synchondrosis

<乳児>
・前後頭内軟骨結合anterior intraoccipital synchondrosis
・後後頭内軟骨結合posterior intraoccipital synchondrosis

3.頭蓋の靱帯結合

舌骨の連結・・・舌骨と頭蓋底との連結.茎突舌骨靱帯stylohyoid ligament(側頭骨の茎状突起から起こり舌骨小角に付く)による連結.

頭蓋の小靱帯・・・頭蓋各部を結ぶ小さい靱帯.翼突棘靱帯pterygospinous ligament(蝶形骨翼状突起外側板の翼棘突起と大翼の蝶形骨棘を結ぶ靱帯),蝶形骨の前床突起、中床突起、後床突起を結ぶもの,舌下神経管内,頸静脈孔内で孔内突起間を結ぶ小靱帯がある.

頭蓋の滑膜性関節

4. 顎関節
Temporomandibular joint (TMJ)

下顎骨にある下顎頭と側頭骨にある下顎窩およびその間にある関節円板からなる滑膜性関節で楕円関節(顆状関節)に分類される.頭蓋では,唯一の滑膜性関節である.

 下顎頭head of mandible
顎関節の関節頭となる部分.左右に長い楕円球状(左右径は前後径の約2倍の長さ)で,内側端がやや後方に位置する.関節面は薄いが,咀嚼時の衝撃吸収能力が高い線維性の結合組織(線維軟骨)により被われる.

 下顎窩mandibular fossa
顎関節の関節窩となる部分.前方にある側頭骨の関節結節下面までが実際の顎関節の関節窩となり,そこまで線維軟骨で被われる.窩の長軸は外前方から内後方に傾く.前後に凸で左右に凹の鞍状のゆるい曲面を呈している.縁が厚い関節円板(周囲が3~4mm,中央が1~2mmの厚さ)で被われ,上面は鞍状のゆるい曲面,下面は深い曲面を呈し,広く浅い関節窩と前後径が短い関節頭との適合を補っている.

 関節包articular capsule
顎関節と関節円板を包む線維性の結合組織.下顎窩(関節窩)の周囲から起こり,関節円板と固く結合し,下顎頸の上部へ付く.後壁の深層は多量の弾性線維を含んだ線維束を含んでおり関節円板に付着する.関節包と関節円板の前方は外側翼突筋の上頭腱に付く.顎関節の前後方向の動きはゆるいが,外側へは補強靱帯(外側靱帯)により固くなっている.

Ⅲ.胸郭の連結
Joints of thorax

 胸郭は肋骨(12対),胸椎(12個),胸骨(1個)からなり,その連結については肋骨と胸椎が肋椎関節,胸骨と肋骨が胸肋関節,肋骨と肋骨の間が肋間膜,胸骨内の胸骨結合がある.

肋椎関節
Costovertebral joints

肋骨と胸椎の椎体との肋骨頭関節,肋骨と胸椎の横突起との肋横突関節からなる.各肋骨の運動軸はこの2つの関節を通り上位肋骨では前額面,下位肋骨では矢状面に近い.そのため,呼吸の際に上位肋骨は前後方向,下位肋骨は横方向へ大きく動く.

関連するキーワード

肋骨頭関節joint of head of rib
  肋骨窩costal fovea
  上肋骨窩superior costal fovea
  下肋骨窩inferior costal fovea
  肋骨頭関節面articular surface of head of rib
    放線状肋骨頭靱帯radiate costovertebral
ligament
    関節内肋骨頭靱帯intraarticular ligament of
head of rib
肋横突関節costotransverse joint
  肋骨結節関節面articular surface of tubercle of rib
  横突肋骨窩transverse costal facet
    肋横突靱帯costotransverse ligament
    外側肋横突靱帯lateral costotransverse ligament
    上肋横突靱帯superior costotransverse ligament

肋骨頭関節 T1~12の椎体側面(肋骨窩)と肋骨頭の関節.椎体の肋骨窩は位置により上肋骨窩(T1~10にある),下肋骨窩(T1~10にある),肋骨窩(T11~12にある)の3種類がある.何れの場合も肋骨にある肋骨頭関節面と連結する.T2~10では上肋骨窩と下肋骨窩の間(上下の椎骨の間)に1つの肋骨が連結する.ただしT1は上肋骨窩,T11,12は椎体後側面中央の肋骨窩とのみ関節を持つ.それぞれ独立した関節包に包まれ,前方は厚く,肋骨頭から上下の椎体と椎間(円)板に放射する放線状肋骨頭靱帯がある.第2~10の肋骨頭稜(りょう)には関節内肋骨頭靱帯が張り関節包を二分する.

肋横突関節 第1~10肋骨の肋骨結節関節面と第1~10胸椎の横突起前面の横突肋骨窩との連結.関節包は多くの靱帯が補強する.肋横突靱帯は横突起から肋骨頸,外側肋横突靱帯は横突起尖端から肋骨結節,上肋横突靱帯は肋骨頸と上位の椎体の横突起を結ぶ.

胸肋関節
Sternocostal joints

第1~7肋軟骨の前端と胸骨にある肋骨切痕との(滑膜性)関節.

関連するキーワード

肋軟骨costal cartilage
肋骨切痕costal notch
第1胸肋関節
  軟骨結合synchondrodial joint
第2~7胸肋関節
  半関節amphiarthrosis
  関節内胸肋靱帯interarticular sternocostal ligament

第1胸肋関節 関節腔を持たず直接胸骨と結合する軟骨結合.
第2~7胸肋関節 固い関節包に包まれる半関節.関節包は通常,関節内胸肋靱帯により二分される.

肋間膜
Intercostal membrane

肋間隙(げき)に張る膜状の靱帯(外肋間膜,内肋間膜).外肋間膜は外肋間筋(肋間神経)が欠ける胸郭前方部分,内肋間膜は内肋間筋(肋間神経)が欠ける胸郭後方部分に張る.
(※肋間筋と肋間膜で肋間隙は全て被われる.)

関連するキーワード

外肋間膜external intercostal membrane
外肋間筋external intercostal muscle
内肋間膜internal intercostal membrane
内肋間筋internal intercostal muscle

外肋間膜 外肋間筋(肋間神経)の前内側への延長部分で胸郭前方の肋間隙(上下の肋軟骨の間)に張る.
内肋間膜 内肋間筋(肋間神経)の後内側への延長部分で胸郭後方の肋間隙(上下の肋硬骨の間)に張る.

軟骨間関節
Interchondral joint

第5~9肋軟骨間で,上下に隣接する肋軟骨を連結する滑膜性関節で半関節に分類される.第8, 9肋軟骨の前端は軟骨間靱帯で補強され靱帯結合である.

関連するキーワード

肋軟骨costal cartilage
半関節amphiarthrosis
軟骨間靱帯interchondral joints

肋骨肋軟骨連結
Costochondral joint

肋骨と肋軟骨の連結.肋骨の胸骨端に肋軟骨後端が連結し周囲はひと続きの肋骨膜または肋軟骨膜に包まれ固定される.

胸骨結合
Sternal synchondroses

胸骨を構成する胸骨柄,胸骨体,剣状突起の間の軟骨結合で胸骨柄結合と胸骨剣結合がある.硝子軟骨結合で年齢とともに線維軟骨結合となり老齢では骨化(癒合)し1個の骨となる.

関連するキーワード

軟骨結合synchondrodial joint
胸骨柄結合manubriosternal joint
胸骨剣結合xiphisternal joint
胸骨角sternal angle(ルイ角Louis' angle)
  第2肋骨切痕costal notch

胸骨柄結合 胸骨柄と胸骨体の間の結合.結合部位は前方へ突出し胸骨角(ルイ角)と呼ばれ,その両側に第2肋骨が付く肋骨切痕がある.
胸骨剣結合 胸骨体と剣状突起の間の結合. 

Ⅳ.上肢の連結
Joints of upper limb

上肢の連結は,上肢帯(=肩甲帯)の連結と自由上肢の連結からなる.

A.上肢帯(肩甲帯)の連結
Joints of pectoral girdle(Joints of shoulder girdle)

[1] 肩甲骨固有の連結

第2肩関節(機能的な関節)に関係する靱帯,滑液包と上肩甲横靱帯がある.

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第2肩関節 (=三角筋下関節subdeltoid joint,肩峰下関節subacromial joint,上腕上方関節suprahumeral joint)
  烏口肩峰靱帯coracoacromial ligament
    烏口肩峰アーチcoracoacromial arch
    肩峰下腔subacromial space
  肩峰下(滑液)包subacromial bursa
  三角筋下(滑液)包subdeltoid bursa
  烏口下(滑液)包subcoracoid bursa
 (烏口腕筋の滑液包coracobrachial bursa)
上肩甲横靱帯superior transverse scapular ligament
  肩甲上神経suprascapular nerve

烏口肩峰靱帯 烏口突起から肩峰に張り第2肩関節の天蓋(てんがい)(屋根)をつくる.この靱帯は肩甲上腕関節の上部を補強し肩関節の上方への脱臼を防ぐ.烏口肩峰アーチ(烏口肩峰靱帯と肩峰から形成)と上腕骨頭との間(肩峰下腔)は約1㎝で棘上筋(肩甲上神経),肩峰下包,上腕二頭筋(筋皮神経)長頭腱などがある.

第2肩関節

三角筋下関節,肩峰下関節,上腕上方関節などとも呼ばれる機能的な関節.解剖学的な関節とは異なり関節包には包まれない.烏口肩峰アーチが関節窩,上腕骨の大結節,小結節,腱板上部が関節頭として関節の様に機能し,滑液包(⇒筋学総論)が腱板や大結節の動きを滑らかにする.

肩峰下(滑液)包 肩峰および三角筋と肩関節包の間にあり上腕骨頭の上部にある滑液包.三角筋下包や烏口下包としばしば交通する.三角筋下包 肩峰下包の外側で三角筋と大結節の間の滑液包.多くは肩峰下包と交通する.
烏口下包(烏口腕筋の滑液包) 烏口突起の下で肩甲下筋と肩関節包の間にあり肩峰下滑液包の前下方に位置する滑液包.多くは肩の関節腔と交通する.肩峰下包と交通することもある.

上肩甲横靱帯 肩甲骨上縁の肩甲切痕に張る.この靱帯の下の小孔を前方から肩甲上神経が通りぬけ棘上筋,棘下筋を支配する.肩甲上動脈はこの靱帯の上を越えて通る.靱帯は,しばしば骨化する.

[2] 肩鎖関節
Acromioclavicular joint;AC joint

肩峰の内側と鎖骨の外側端との平面関節.不完全な関節円板を持つことがある.鎖骨の関節面は後外側やや下,肩峰の関節面は前内側やや上を向く.僧帽筋(副神経,頸神経)と三角筋(腋窩神経)はこの関節をまたいで付く.

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平面関節plane joint
関節円板articular disc
肩鎖靱帯acromioclavicular ligament
烏口鎖骨靱帯coracoclavicular ligament
  菱形靱帯trapezoid ligament
    菱形靱帯線(⇒鎖骨)
  円錐靱帯conoid ligament
    円錐靱帯結節(⇒鎖骨)

肩鎖靱帯 肩鎖関節の関節包の上面が厚く強くなって肩峰と鎖骨を結び関節包を補強する.

烏口鎖骨靱帯 鎖骨外側下面とその下の肩甲骨の烏口突起とを結ぶ強力な靱帯で菱形靱帯と円錐靱帯からなる.両靱帯の間に鎖骨下筋(鎖骨下筋)の外側部がある.この靱帯は肩甲骨をつり下げ,肩鎖関節の脱臼防止に働く.また,肩甲骨の上方回旋に伴う烏口突起の移動に連動して鎖骨を後方へ回旋させ上腕骨の外転を助ける.
1)菱形靱帯 烏口鎖骨靱帯の前外側部分で烏口突起の内側縁(一部上面)から起こる.前部線維は垂直に近く前上方および上方,後部線維は斜め外上方へ向かい鎖骨の菱形靱帯線に付き肩甲骨の前方,内方への動きを制限する.
2)円錐靱帯 烏口鎖骨靱帯の後内側部で,烏口突起が外側に折れ曲がる部分の内側縁から起こる.外上方に捻れながら拡がり鎖骨(の下面外側後方)にある円錐靱帯結節に付く.

[3] 胸鎖関節
Sternoclavicular joint;SC joint

上肢帯(肩甲骨と鎖骨)を体幹に連結する唯一の関節.胸骨柄の鎖骨切痕(および第1肋軟骨の関節上面)が関節窩,鎖骨の胸骨関節面が関節頭となる.形態的には鞍関節,機能的には球関節.関節腔を二分する関節円板は上部が鎖骨,下部が胸骨に固定されている.鎖骨の関節面は胸骨の関節面よりも広く関節軟骨も胸骨より厚い.関節軟骨および関節円板の厚さが13mmに達することもあり肩関節の可動性拡大に貢献している.

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鞍関節saddle joint
球関節ball-and-socket joint
関節円板articular disc
関節包joint capsule; articular capsule
  前胸鎖靱帯anterior sternoclavicular ligament
  後胸鎖靱帯posterior sternoclavicular ligament
肋鎖靱帯costoclavicular ligament
鎖骨間靱帯interclavicular ligament

関節包 ゆるく,前方を前胸鎖靱帯,後方を後胸鎖靱帯が補強する.
肋鎖靱帯 鎖骨の下面(肋鎖靱帯圧痕)から第1肋軟骨内側端の上面に付き,胸鎖関節を補強し鎖骨の挙上(肩甲骨の挙上)を制限する.
鎖骨間靱帯 両鎖骨の内側端上部から胸骨柄の上を渡って結び関節包の上面を補強する.

B.自由上肢の連結
Synovial joints of free upper limb


自由上肢骨(上腕骨から指先までの骨)の連結.肩関節,肘関節,橈骨と尺骨の連結,手の関節がある.


[1] 肩関節(肩甲上腕関節)
Shoulder joint(glenohumeral joint)

上腕骨頭と肩甲骨の関節窩による典型的な球関節.上腕骨頭の関節面は肩甲骨の関節窩の2~3倍の広さがある.肩甲骨の関節窩は浅いため,関節窩の周囲にある線維軟骨性の関節唇(しん)が深さを補っている.
(広義の肩関節には肩甲上腕関節,肩鎖関節,胸鎖関節,肋椎関節,胸肋関節,肩甲胸郭関節,第2肩関節がある.)

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球関節ball-and-socket joint
  上腕骨頭head of the humerus
  肩甲骨の関節窩glenoid cavity
    関節唇glenoid labrum
関節包joint capsule
  上腕二頭筋の長頭long head of biceps brachii
肩甲下(滑液)包subscapular bursa(=肩甲下筋腱下包subtendinous bursa of subscapularis muscle)
  Weitbrecht孔
関節上腕靱帯glenohumeral ligaments
  関節包靱帯capsular ligament
烏口上腕靱帯coracohumeral ligament
上腕横靱帯transverse humeral ligament
  結節間溝intertubercular groove
  上腕二頭筋の長頭long head of biceps brachii

関節包 ゆるく柔らかく広い.後面は薄く,靱帯の補強がない.肩甲頸および関節唇とその外周,烏口突起基部付近から起こり上腕骨の解剖頸,大結節,小結節に付く.関節包の中を上腕二頭筋(筋皮神経)の長頭腱が通り上腕三頭筋の長頭腱とも癒合する.また,肩甲下包,烏口下包と交通することが多く,肩関節の関節包との間で滑液が出入りし肩関節の圧を調整する.
肩甲下(滑液)包 肩甲下筋と肩関節包の間で烏口下包の後方にある滑液包.肩関節の関節腔とWeitbrecht孔によって交通し,肩関節の圧を調整する.▲炎症や外傷でこの孔が閉塞すると運動時痛や可動域制限が出現する(信原).
関節上腕靱帯 主に関節包の内面の線維からなる関節包靱帯.上,中,下3つの線維からなり関節唇の上,前,下部から出て上腕骨の解剖頸に付く.肩関節の外転と外旋を制限し肩の前方部分を補強する.
烏口上腕靱帯 烏口突起の外側縁の全長から起こり関節包の上部を被って補強し上腕骨の大結節,小結節に付く.肩関節の屈曲と伸展を制限する.
上腕横靱帯 上腕骨の大結節と小結節の間に張り,その間にある結節間溝を被ってその中を通る上腕二頭筋(筋皮神経)の長頭腱を支持する.

[2] 肘関節
Elbow joint

腕尺関節,腕橈関節,上橈尺関節(近位橈尺関節)が共通(一つ)の関節包に包まれる複関節.

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複関節compound joint
腕尺関節humeroulnar joint
腕橈関節humeroradial joint
上橈尺関節proximal radioulnar joint

腕尺関節

上腕骨滑車と尺骨上端の滑車切痕とのラセン関節.肘関節の屈曲と伸展が可能.上腕骨滑車は,外側部よりも内側部が大きいため,その運動軸は外側に傾く.そのため連結する尺骨は上腕骨の長軸に対して外側へ傾斜する.この傾斜角度を運搬角と呼ぶ.X線を使ったB. KUMARらの研究では,男性17.023±1.93°,女性17.77±2.13°であり女性が若干大きい.
▲肘関節の完全伸展位では上腕骨の内側上顆,外側上顆,尺骨の肘頭が一直線上(ヒューター線),屈曲時には肘頭を頂点とした二等辺三角形(ヒューター三角)となり肘関節脱臼の指標とされる.

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ラセン関節spiral joint
上腕骨滑車trochlea of humerus
滑車切痕trochlear notch
運搬角carrying angle
ヒューター線Hueter line
ヒューター三角Hueter triangle

腕橈関節

上腕骨小頭と橈骨上端の橈骨頭との球関節.橈骨頭の動きは輪状靱帯で制限され機能上は平面関節.

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球関節ball-and-socket joint
上腕骨小頭capitulum of humerus
橈骨頭head of radius
輪状靱帯annular ligament

上橈尺関節(近位橈尺関節)

橈骨頭の関節環状面と尺骨の橈骨切痕との車軸関節(⇒ [3] 橈骨と尺骨の連結).

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車軸関節pivot joint
関節環状面articular circumference
橈骨切痕radial notch


肘関節の関節包

鈎突窩(上腕骨滑車の前上方),橈骨窩(上腕骨小頭の前上方),肘頭窩(上腕骨滑車の後上方)の上までを包み,橈骨頸と尺骨の滑車切痕の周辺に付く.内側上顆,外側上顆は包まない.関節包の前面や後面の線維は長くゆるいが,肘関節の屈曲の際は関節包前面に付く上腕筋の筋束,伸展する際は関節包後面に付く上腕三頭筋の筋束が働き関節包が関節に挟み込まれるのを防ぐ.

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鈎突窩coronoid fossa
橈骨窩radial fossa
肘頭窩olecranon fossa
滑車切痕trochlear notch

[3] 橈骨と尺骨の連結


上橈尺関節(近位橈尺関節)
Proximal radioulnar joint
(=Superior radioulnar joint)

橈骨輪状靱帯の中で橈骨頭が回旋する車軸関節.回内回外は上橈尺関節と下橈尺関節による.関節包の内側と外側の線維は強く,短く,常に緊張し内側側副靱帯および外側側副靱帯となる.

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橈骨頭radial head
内側側副靱帯ulnar collateral ligament
外側側副靱帯radial collateral ligament
橈骨輪状靱帯anular ligament of radius
方形靱帯quadrate ligament
嚢状陥凹sacciform recess

内側側副靱帯 上腕骨の内側上顆から三角形に広がり尺骨の鈎状突起と肘頭の内側へ付く.
外側側副靱帯 外側上顆から橈骨輪状靱帯および尺骨の鈎状突起下縁に付く線維と尺骨の橈骨切痕後縁から尺骨の回外筋稜に付く線維の2つ.
橈骨輪状靱帯 橈骨の関節環状面を輪状に被う強い靱帯.尺骨の橈骨切痕前縁から尺骨の橈骨切痕後縁に付く.外面は関節包と固着.
方形靱帯 尺骨の橈骨切痕の下縁と橈骨頸とを結ぶ線維束で滑膜を下から支え,橈骨頭の回内回外の動きを制限する.
嚢状陥凹 橈骨頸部で関節包が尺骨の橈骨切痕と橈骨の関節環状面との間から下方へ膨隆する部分.

前腕骨間膜
Interosseous membrane of forearm

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斜索oblique cord
骨間裂孔interosseous hiatus

橈骨と尺骨との骨間縁の間に張る強靱な膜.回外の主要な制限因子であり前腕回内で弛緩し回外で緊張する.その線維は橈骨粗面より遠位では橈骨から尺骨へ斜め下方,下端では尺骨から橈骨へ斜め下方に張る.手で支える際,手掌から橈骨の長軸方向へ伝達される力を尺骨に伝え上腕骨へと導く作用がある.
前腕骨間膜の掌側には前腕の屈筋群である深指屈筋(正中神経,尺骨神経),長母指屈筋(正中神経),背側には伸筋群である長母指外転筋(橈骨神経),長母指伸筋(橈骨神経),短母指伸筋(橈骨神経),示指伸筋(橈骨神経)が付く.
前腕骨間膜よりも上方には尺骨粗面から橈骨粗面の少し下の骨間縁へ斜め下方に張る細長い線維(斜索(しゃさく))があり,これと前腕骨間膜との間(骨間裂孔)に後骨間動脈を通す.

下橈尺関節(遠位橈尺関節)
Distal radioulnar joint
(=Inferior radioulnar joint)

尺骨頭の関節環状面と橈骨の尺骨切痕による車軸関節.尺骨下端と手根骨との間には三角形の関節円板(橈骨の尺骨切痕下端を底辺,尺骨の茎状突起を頂点とする三角形)があるため橈骨手根関節腔とは隔てられ尺骨は手根骨と直接関節を持たない.

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関節環状面articular circumference
尺骨切痕ulnar notch
関節円板articular disc

[4] 手の関節


①手根の関節

橈骨手根関節(手関節)
Wrist joint; radiocarpal joint

橈骨下端の手根関節面とその尺側に付着する関節円板が関節窩,舟状骨,月状骨,三角骨およびその間をつなぐ骨間手根間靱帯が関節頭となる楕円関節.豆状骨,尺骨は関与しない.

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手根関節面carpal articular surface of radius
骨間手根間靱帯interosseous intercarpal ligaments
背側橈骨手根靱帯dorsal radiocarpal ligament
掌側橈骨手根靱帯palmar radiocarpal ligament
背側尺骨手根靱帯dorsal ulnocarpal ligament
掌側尺骨手根靱帯palmar ulnocarpal ligament
内側手根側副靱帯ulnar collateral ligament of wrist joint
外側手根側副靱帯radial collateral ligament of wrist joint

背側橈骨手根靱帯 橈骨下端の背側から舟状骨,月状骨,三角骨,有頭骨に放散する.
掌側橈骨手根靱帯 橈骨下端の掌側から舟状骨,月状骨,三角骨,有頭骨に放散する厚く強力な靱帯.
背側尺骨手根靱帯 尺骨頭から三角骨に至る短い靱帯.
掌側尺骨手根靱帯 尺骨の茎状突起の掌側および関節円板と三角骨および月状骨を結ぶ深層の線維束.
内側手根側副靱帯 尺骨の茎状突起下端から豆状骨および三角骨に至る.
外側手根側副靱帯 橈骨の茎状突起から舟状骨および大菱形骨の外側面に至る.


手根間関節
Carpal joints; intercarpal joints

手根骨の近位列にある舟状骨,月状骨,三角骨の相互の関節,遠位列にある大菱形骨,小菱形骨,有頭骨,有鈎骨による相互の平面関節の総称.近位手根列の骨には一定の運動性があるが,遠位手根列の骨は骨間手根間靱帯で強く結合され,中手骨とも同様の結合で個々の関節の動きは著しく制限される.遠位手根列と中手骨は一つの機能単位として動く.

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骨間手根間靱帯interosseous intercarpal ligaments

手根中央関節
Midcarpal joint

近位手根列と遠位手根列の間の複関節.関節腔は手根の中央をS字状にうねっている.近位手根列の舟状骨と遠位手根列の大菱形骨および小菱形骨との間は平面関節,近位手根列の舟状骨,月状骨,三角骨と遠位手根列の有頭骨,有鈎骨との間は楕円関節である.

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放射状手根靱帯radiate carpal ligament
背側手根間靱帯dorsal intercarpal
掌側手根間靱帯palmar intercarpal ligaments
骨間手根間靱帯interosseous intercarpal ligaments

放射状手根靱帯 有頭骨を中心に放射状に広がり有頭骨,月状骨,三角骨の掌側に付く.
手根靱帯には以下の3つがある.
1)背側手根間靱帯 手根骨の背面を結ぶ.
2)掌側手根間靱帯 隣り合う手根骨の掌側面を結ぶ.
3)骨間手根間靱帯 近位手根列の手根骨相互及び遠位手根列の手根骨相 互を結ぶ.


豆状骨関節
Pisiform joint

豆状骨と三角骨との間の平面関節.関節腔は独立するが,時に橈骨手根関節と交通する.

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尺側手根屈筋flexor carpi ulnaris
豆鈎靱帯pisohamate ligament
豆中手靱帯pisometacarpal ligament

豆鈎靱帯(とうこうじんたい) 豆状骨から有鈎骨に至る掌側にある強力な靱帯で尺側手根屈筋腱のつづきと考えられる.
豆中手靱帯 豆鈎靱帯から分かれて第5中手骨底の掌側に至る強力な靱帯.

三角線維軟骨複合体(TFCC)
Triangular Fibrocartilage Complex (TFCC)

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三角線維軟骨triangular fibrocartilage(TFC)
背側橈尺靱帯dorsal radioulnar ligament
掌側橈尺靱帯palmar radioulnar ligament
尺骨三角骨靱帯ulnotriquetral ligament
尺骨月状骨靱帯ulnolunate ligament
下橈尺関節distal radioulnar joint
  ▲Fovea Sign
    尺骨茎状突起styloid process of ulna
    尺側手根屈筋flexor carpi ulnaris

尺骨下端と手根骨との間にあり三角形で中央が凹んだ関節円板(三角線維軟骨TFC)とその周辺の靱帯(背側橈尺靱帯,掌側橈尺靱帯,尺骨三角骨靱帯,尺骨月状骨靱帯など)からなる.下橈尺関節の安定性,手根骨から尺骨への衝撃吸収作用がある.▲損傷するとFovea Sign(尺骨茎状突起と尺側手根屈筋の間の圧痛の有無で評価するテスト)が陽性となる.


手根管
Carpal tunnel

屈筋支帯(横手根靱帯)とその下の手根骨との間隙.屈筋支帯は,手掌外側にある橈側手根隆起(舟状骨結節,大菱形骨結節からなる)と内側にある尺側手根隆起(豆状骨,有鈎骨鈎からなる)の間に張る一種の副靱帯.正中神経,橈側手根屈筋(正中神経)腱,長母指屈筋(正中神経)腱,浅指屈筋(正中神経)腱,深指屈筋(正中神経,尺骨神経)腱が通る.
▲手根管症候群carpal tunnel syndromeでは,手根管より遠位で正中神経から枝をもらって支配される手内筋(母指対立筋,短母指外転筋,短母指屈筋の浅頭,第Ⅰ,Ⅱ虫様筋)が麻痺する.

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橈側手根隆起radial eminence of wrist
尺側手根隆起ulnar eminence of wrist
屈筋支帯(横手根靱帯)flexor retinaculum

尺骨神経管(ギヨン管)
Ulnar canal(Guyon's canal)

豆状骨の橈側,有鈎骨鈎の尺側の間で屈筋支帯(横手根靱帯)と豆鈎靱帯が底部となり掌側手根靱帯の遠位部と短掌筋の近位部に被われてできる掌側の管.尺骨神経および尺骨動脈を通す.小指掌側の感覚神経(尺骨神経掌枝)はギヨン管を通るが,手背尺側の感覚はギヨン管の手前で分枝した尺骨神経手背枝が支配する.そのため▲ギヨン管症候群は小指掌側の感覚障害,▲肘(ちゅう)部(ぶ)管(かん)症候群cubital tunnel syndromeは小指掌側と小指背側の感覚障害が生じる.

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屈筋支帯(横手根靱帯)flexor retinaculum
豆鈎靱帯pisohamate ligament
掌側手根靱帯Palmar carpal ligament

掌側手根靱帯 屈筋支帯の中央から分かれ尺側にある豆状骨に帯状に付く.その下を尺骨動脈,尺骨神経が通る.(掌側手根間靱帯とは異なる.)

③指の関節

中手指節関節(MP関節)
Metacarpophalangeal joints

中手骨頭と基節骨底との関節.骨の形態上は球関節だが,補強靱帯や筋の補助装置により随意的な軸回旋は行えないため手指は楕円関節,母指は蝶番関節に分類される.
 手指のMP関節 屈曲,伸展,内転,外転が可能.
 母指のMP関節 屈曲,伸展が可能.内転,外転は著しく制限される.

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中手骨頭head of metacarpal bone
基節骨底base of proximal phalanx
楕円関節condylar joint
側副靱帯collateral ligaments
掌側靱帯palmar ligaments
掌側板volar plate
深横中手靱帯deep transverse metacarpal ligament
手指の線維鞘fibrous sheath of finger

側副靱帯 中手骨頭の両側面から斜めに掌側に向かい基節骨底に付くためMP関節伸展位で緩み屈曲位で緊張する.▲長期間MP関節を伸展位でギプス固定すると側副靱帯が短縮し屈曲困難となるためMP関節は屈曲位固定を行う.
掌側靱帯 側副靱帯より大きく,中手骨頭の両側面から起こり斜め掌側に向かって放散する.この靱帯は線維軟骨性の掌側板(しょうそくばん)を形成し,基節骨の関節窩の掌側部をつくる.掌側板は基節骨底とは強力に,中手骨とは弱く結合する.
深横中手靱帯 第2~5中手骨頭の掌側にある帯状の強い小靱帯.MP関節部では掌側靱帯の線維と混じり合い手指の線維鞘に固着し骨とは直接結合しない.この靱帯の背側に骨間筋(尺骨神経),掌側に虫様筋(正中神経,尺骨神経)がある.

指節間関節(IP関節)
Interphalangeal joints

第2~5指では基節骨と中節骨,中節骨と末節骨,母指では基節骨と末節骨の間の蝶番関節.屈曲,伸展の運動が可能.

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蝶番関節hinge joint
近位指節間(PIP)関節proximal interphalangeal joints
遠位指節間(DIP)関節distal interphalangeal joints
母指の指節間関節interphalangeal joint
側副靱帯collateral ligaments
掌側靱帯palmar ligaments

近位指節間関節(PIP関節) 手指の基節骨と中節骨の蝶番関節.
遠位指節間関節(DIP関節) 手指の中節骨と末節骨の蝶番関節.
母指の指節間関節(IP関節) 母指の基節骨と末節骨の蝶番関節.(母指にはPIP関節,DIP関節はない.)
側副靱帯 骨頭(基節骨頭,中節骨頭)の両側面から骨底(中節骨底,末節骨底)に付く線維束で手指の屈曲,伸展運動の支点となる.
掌側靱帯 指節間関節の掌側にあり側副靱帯と結合し関節包の前面をつくる.

Ⅴ.下肢の連結
Joints of lower limb

下肢の連結は,下肢帯(寛骨)の連結と自由下肢の連結からなる.

A. 下肢帯の連結
Joints of pelvic girdle

下肢帯の連結は上肢帯(肩甲骨と鎖骨)の連結より強力だが,可動性は著しく制限される.


[1] 寛骨各部の連結

寛骨,靱帯組織である閉鎖膜,閉鎖管,鼠径靱帯,腸恥筋膜弓が含まれる.

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寛骨 hip bone (=innominate bone)
閉鎖膜 obturator membrane
閉鎖管obturator canal
  閉鎖神経obturator nerve
  閉鎖動脈obturator artery
  閉鎖静脈obturator vein
鼠径(鼡径)靱帯inguinal ligament
  上前腸骨棘anterior superior iliac spine
  恥骨結節pubic tubercle
  筋裂孔muscular lacuna
    腸骨筋iliacus
    大腰筋psoas major
    大腿神経femoral nerve
  血管裂孔vascular lacuna
    大腿動脈femoral artery
    大腿静脈femoral vein
    深鼠径リンパ節deep inguinal lymph node
  腸恥筋膜弓iliopectineal arch


寛骨 軟骨結合している腸骨,坐骨,恥骨が22~25歳に骨結合してできる(⇒骨学).
閉鎖膜 閉鎖孔に張る靱帯性の薄く強い膜.外面に外閉鎖筋(閉鎖神経),内面に内閉鎖筋(仙骨神経叢)の一部が付く.
閉鎖管 閉鎖膜を貫き閉鎖孔の上内側に開く管.大腿内側へ下る閉鎖神経,閉鎖動脈,閉鎖静脈が通る.
鼠径(鼡径)靱帯 上前腸骨棘ASISと恥骨結節の間に張った靱帯.鼠径靱帯の下で寛骨との間は,さらに腸恥筋膜弓によって外側の筋裂孔,内側の血管裂孔に分割される.
筋裂孔 外側に腸骨筋(大腿神経),内側に大腰筋(腰神経叢),大腿神経が通る.
血管裂孔 外側に大腿動脈,内側に大腿静脈,さらに内側に深鼠径リンパ節が通る.

[2] 恥骨結合

両側の恥骨は線維軟骨性の恥骨間円板により恥骨結合として連結される(線維軟骨結合).

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恥骨結合pubic symphysis
恥骨間円板interpubic disc

[3] 仙腸関節と関連する靱帯

仙腸関節
Sacroiliac joint(SI joint)

仙骨と左右の腸骨とを連結する半関節.仙骨と腸骨の不規則な関節面は同じ名称であり耳状面(じじょうめん)という.

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半関節amphiarthrosis
耳状面auricular surface
前仙腸靱帯anterior sacroiliac ligament
後仙腸靱帯posterior sacroiliac ligament
骨間仙腸靱帯interosseous sacroiliac ligament
   仙骨粗面sacral tuberosity
   腸骨粗面iliac tuberosity

前仙腸靱帯 仙骨と腸骨の前面に張る.
後仙腸靱帯 仙骨と腸骨の後面に張り深層は骨間仙腸靱帯に移行する.
骨間仙腸靱帯 仙骨粗面と腸骨粗面の間に張る短く強力な靱帯.

寛骨と腰椎の靱帯

腸腰靱帯iliolumbar ligament
  肋骨突起costal process
  腸骨稜の内唇inner lip of iliac crest

腸腰靱帯 (L4,)L5の肋骨突起から腸骨稜(内唇)の後端へ張る強力な靱帯で,腰部や骨盤の側方安定性に関与する.

寛骨と仙骨,尾骨の靱帯

仙結節靱帯sacrotuberous ligament
  坐骨結節ischial tuberosity
  鎌状突起processus falciformis
仙棘靱帯sacrospinous ligament
  坐骨棘ischial spine
大坐骨孔greater sciatic foramen
  大坐骨切痕greater sciatic notch
  仙棘靱帯sacrospinous ligament
  梨状筋上孔suprapiriform foramen
  梨状筋下孔infrapiriform foramen
小坐骨孔lesser sciatic foramen
  小坐骨切痕lesser sciatic notch
  仙結節靱帯sacrotuberous ligament

仙結節靱帯 坐骨結節から腸骨稜後縁および仙骨,尾骨側面にかけて張る.坐骨結節内面で鎌状に曲がり前進して閉鎖膜に至る線維束を鎌状突起という。
仙棘靱帯 坐骨棘から仙骨下部および尾骨側縁にかけて張り仙結節靱帯の前方を交差するように走る.
大坐骨孔 大坐骨切痕と仙棘靱帯に囲まれた孔.梨状筋が中央に通り,その上方に梨状筋上孔,下方に梨状筋下孔が形成される.梨状筋上孔には上殿神経,上殿動脈,上殿静脈,梨状筋下孔には坐骨神経,下殿神経,下殿動脈,下殿静脈,後大殿皮神経,陰部神経,内陰部動脈,内陰部静脈が通る.
小坐骨孔 小坐骨切痕が仙結節靱帯と仙棘靱帯に囲まれた孔.

B. 自由下肢の連結
Joints of free lower limb

自由下肢骨(大腿骨~足趾)に関する連結.


[1] 股関節
Hip joint


大腿骨頭(2/3が関節面)が半球状の寛骨臼に入る臼状(きゅうじょう)関節.肩関節(球関節)より安定性はあるが可動域は制限される.寛骨臼の深さと適合は関節唇と寛骨臼横靱帯が補っている.大腿骨頭を被う関節軟骨は骨頭中央部が最も厚く,縁は薄い.(▲脱臼はAllisテスト,疼痛はPatricテストが陽性となる.)

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関節唇acetabular labrum
寛骨臼横靱帯transverse acetabular ligament
関節包joint capsule
関節包内靱帯intraarticular ligament
  大腿骨頭靱帯ligament of head of femur
    閉鎖動脈obturator artery
  輪帯zona orbicularis
  腸骨大腿靱帯iliofemoral ligament(Y靱帯)
  恥骨大腿靱帯pubofemoral ligament
  坐骨大腿靱帯ischiofemoral ligament
腸恥包iliopectineal bursa

関節唇(しん) 寛骨臼と寛骨臼横靱帯の全周をとり囲む幅0.5~1cmの線維軟骨性の三角柱.そこに入る大腿骨頭の適合を補う.月状面の軟骨および寛骨臼横靱帯に移行し寛骨臼の骨縁に固着する.
関節包 寛骨臼の周囲および寛骨臼横靱帯から起り大腿骨の前面では大転子と転子間線,後面は転子間稜より約1.5cm上方で大腿骨頸に付く.そのため前面は大腿骨頸を全て包み,後面は頸の内側2/3を包む.表層の線維は縦走,深層は斜走,横走および輪走する.股関節の関節包は厚くて丈夫であるが最も薄くなる部分は各補強靱帯の間と寛骨臼切痕付近にある.
寛骨臼横靱帯 関節唇の一部で寛骨臼切痕の上に張る.この靱帯と寛骨臼切痕の間から脂肪組織や血管(閉鎖動脈の枝)が関節腔に入る.関節包も起始する.
大腿骨頭靱帯 大腿骨頭窩から寛骨臼切痕(月状面の尖端)に三角形に広がり寛骨臼横靱帯に付く関節包内靱帯※.大腿骨頭に入る血管(閉鎖動脈の枝)を関節腔内に通す.寛骨臼の下方(寛骨臼切痕の周辺)に付着部があるため過度の股関節の内転(大腿骨頭窩の過度の上方への移動)を制限する.
輪帯(りんたい) 関節包の深部で大腿骨頸部をとりまく靱帯.上部は腸骨大腿靱帯(Y靱帯),下部は坐骨大腿靱帯の線維と結合し骨頭が脱臼するのを防ぐlocking ringとして作用する.坐骨大腿靱帯の続きとされる場合もある.
腸骨大腿靱帯(Y靱帯) 下前腸骨棘(AIIS)および寛骨臼の上縁から起こり二つに分かれ大転子および転子間線に付く関節包靱帯※.逆Y字型をした人体最強の靱帯で長さ6~8cm,厚さ0.5~1.4cm,幅2.5~3cm.関節包の前面と上面を補強し股関節の伸展と内転を制限し直立姿勢の保持を助ける.
恥骨大腿靱帯 腸恥隆起,恥骨体,恥骨上枝から起こり関節包と混じりながら腸骨大腿靱帯(Y靱帯)の内側部の深層(小転子の上方付近)に付く関節包靱帯※.股関節の外転と伸展を制限し関節包を前面から補強する.
坐骨大腿靱帯 寛骨臼縁の後下部(坐骨上部)から起こり大腿骨頸部を上外側にラセン状に被い輪帯と大腿骨の転子窩付近に付く関節包靱帯※.股関節の外転,内旋および伸展を制限し関節包を後面から補強する.

腸恥包(ちょうちほう) 股関節の前面,腸骨大腿靱帯と恥骨大腿靱帯の間に存在する人体最大の滑液包.腸腰筋(大腿神経,腰神経叢)と腸恥隆起または股関節の関節包の薄く力学的に弱いところにある.2包に分かれることも多く,股関節の関節包とも交通することがある.

関節(包)内靱帯は関節包内にある靱帯.(⇒靱帯学)
関節(包)靱帯は関節包の線維膜が発達したもの.

[2] 膝関節
Knee joint


脛骨大腿関節および膝蓋大腿関節が共通の関節包に包まれた関節.腓骨は関与しない.正常な膝関節は生理的な外反を伴うため内側の安定化機構は強力になっている.

脛骨大腿関節
Tibiofemoral joint;Femorotibial joints

大腿骨と脛骨との蝶番関節(orラセン関節).前額面で大腿骨と脛骨の長軸のなす角度(膝(ひざ)外側(がいそく)角(かく)FTA)は正常で約175°, O脚(▲内反膝)では180°を超える.大腿骨頭中心と足関節の中心を結ぶミクリッツ線は正常では膝関節の中心,O脚(内反膝)では膝関節の内側,X脚(外反膝)では外側を通る.

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蝶番関節hinge joint
ラセン関節spiral joint
膝外側角femorotibial angle(FTA)
ミクリッツ線Miclicz Line
  ▲O脚(内反膝genu varum)
  ▲X脚(外反膝genu valgum)

膝蓋大腿関節
patellofemoral joint(PF関節)

大腿骨と膝蓋骨との鞍関節.(⇒膝蓋骨)

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膝関節の関節包
関節腔joint cavity
膝蓋下脂肪体infrapatellar fat-pad
翼状ヒダalar folds of intrapatellar synovial fold
膝蓋下滑膜ヒダinfrapatellar synovial fold

関節包 側方では内側上顆と外側上顆のやや下方,大腿骨の前面と後面では関節軟骨縁の1~2㎝上部から起こり脛骨関節面の周縁に付く(腓骨頭は関節包の外にある).関節包に包まれた膝関節の関節腔(関節の容積)は人体で最も大きい.関節包の内層(滑膜)は後上部から十字靱帯の上および脛骨にまでたどることができる.滑膜は関節半月に付着するものと関節腔の内腔に向かってヒダをつくるものがある.
膝蓋下脂肪体 脛骨と膝蓋骨および膝蓋靱帯の間に関節腔に突出した脂肪の塊(かたまり)があり,膝関節の運動時これが骨の間に入り死腔(しくう)を埋める.▲脂肪体の炎症で膝に痛みが生じる(Hoffa's diseaseとして知られる).
翼状ヒダ 膝蓋下脂肪体の表面で膝蓋骨の両側縁から広がった滑膜性の2つのヒダ.
膝蓋下滑膜ヒダ 膝蓋下脂肪体の中央からは前十字靱帯へと関節腔を貫く1本の滑膜性の索(さく).これは関節包の内層(滑膜)が関節腔内に伸びたもので大腿骨の顆間窩から起こり膝蓋骨尖に達した後,十字靱帯およびその間の組織を被って垂直に下り関節腔の下壁に行き関節腔を左右に分ける(関節腔が2つに分かれていたことを示す遺残).

関節半月

関節面の接触面積を広げ関節の適合性を高める線維軟骨.内側および外側半月(板)の2つが脛骨の上面にある.断面は辺縁部(関節の外周部)が高い三角柱状を呈する.外面は関節包と結合する.上面は大腿骨の内側顆と外側顆,下面は脛骨に接触する.半月の前面は膝横靱帯で結合する.

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線維軟骨fibrous cartilage
外側半月(板)Lateral Meniscus(LM)
後半月大腿靱帯(=¬Wrisberg靱帯)posterior meniscofemoral ligament
内側半月(板)Medial Meniscus(MM)
膝横靱帯transverse ligament of knee
▲McMurrayテスト
▲Appleyテスト

外側半月(板) 環状(O字形)で内側半月(板)よりもやや小さく,前端は脛骨の前顆間区(前十字靱帯の付着部と一部混ざりながら),後端は後顆間区と一部が顆間隆起(内側,外側顆間結節)に付き22)前端と後端は接近している.外縁の一部(後部,外側部)は関節包と結合し膝の屈曲の際に膝窩筋(一部,関節包に付く)に引かれ後方移動する.外側側副靱帯とは結合しないため内側半月(板)よりも移動量は大きく,損傷されにくい.
後半月大腿靱帯(Wrisberg靱帯) 外側半月(板)の後端から起こる細い関節内靱帯.後十字靱帯の後面に沿い大腿骨内側顆の外側面に付く.
内側半月(板) C字形で大きく幅広(特に後部が広い)で外側半月(板)の端(脛骨への付着部)を前後からはさみ,前端は前顆間区の前方(ACLの付着部の前方),後端は後顆間区の内側前方(PCLの付着部の前)に付き前端と後端は離れている.外縁全体が関節包と強く結合し内側側副靱帯とも固着するため,内側半月(板)は動きにくく損傷され易い.
▲内側や外側の半月板損傷はMcMurrayテスト,Appleyテストで鑑別.

膝関節の靱帯

前十字靱帯Anterior Cruciate Ligament(ACL)
  脛骨の前顆間区anterior intercondylar area of tibia
  顆間窩intercondylar fossa
   ▲Lachmanテスト
   ▲Nテスト(jerkテスト)
   ▲前方引き出しテストanterior drawer test
後十字靱帯 Posterior Cruciate Ligament(PCL)
  脛骨の後顆間区posterior intercondylar area of tibia
  顆間窩intercondylar fossa
   ▲後方落ち込みposterior sagging,
   ▲後方引き出しテストposterior drawer test
外側側副靱帯Lateral Collateral Ligament(LCL)
   ▲内反ストレステストvarus stress test
内側側副靱帯Medial Collateral Ligament(MCL)
   ▲外反ストレステストvalgus stress test
内側膝蓋支帯medial patellar retinaculum
外側膝蓋支帯lateral patellar retinaculum
膝蓋靱帯patellar ligament
  大腿四頭筋quadriceps femoris
斜膝窩靱帯oblique popliteal ligament
弓状膝窩靱帯arcuate popliteal ligament

前十字靱帯(ACL) 脛骨の前顆間区の内側部から大腿骨外側顆の顆間窩後内側に付く関節包内靱帯で線維膜と滑膜の間にある.脛骨の前方への滑り出し,下腿の内旋を制限する.また,膝の伸展および過伸展を一部制限する.▲損傷はLachmanテスト,Nテスト(jerkテスト),前方引き出しテストで鑑別.
後十字靱帯(PCL) 脛骨の後顆間区の外側部から大腿骨内側顆の顆間窩前内側に付く関節包内靱帯で線維膜と滑膜の間にある.前十字靱帯より短く強い.脛骨の後方への滑り出しを制限する.▲損傷は脛骨の後方落ち込みテスト,後方引き出しテストで鑑別.
外側側副靱帯(LCL) 最も独立性の高い靱帯.円柱状(索(さく)状)で大腿骨外側上顆の後方から起こり腓骨頭に付く.この靱帯と関節包の間を膝窩筋(脛骨神経)腱,大腿二頭筋(坐骨神経)腱が通る.下腿外旋や膝伸展で緊張し膝内反を制限する.▲損傷は膝の内反ストレステストで鑑別.
内側側副靱帯(MCL) 大腿骨内側上顆の後方から起こり脛骨の内側縁と内側面に付く三角形,扁平で幅広の靱帯.一部は関節包の外層(線維膜)へ放散し内側半月(板)に固着.膝外反を制限し下腿外旋や膝伸展で緊張する.▲損傷は膝の外反ストレステストで鑑別.
内側膝蓋支帯 大腿四頭筋(大腿神経)の内側(内側広筋の線維)に続く腱膜が膜状に広がる強い縦走線維束.膝蓋靱帯の内側を下降し内側側副靱帯の前で脛骨内側顆に付く.膝蓋骨の側方安定性と関節包の保護,内側広筋の収縮を介して下腿の伸展・内旋に作用する.
外側膝蓋支帯 大腿四頭筋(大腿神経)の外側(外側広筋の線維と大腿直筋の少数の線維)に続く腱膜が膜状に広がる強い縦走線維束.前方部分は腸脛靱帯の線維と混じりながら脛骨外側顆下縁に付く.膝蓋骨の側方安定性と関節包の保護,外側広筋(大腿神経)の収縮を介して下腿の伸展・外旋に作用する.
膝蓋靱帯 膝蓋骨と脛骨粗面間の厚い強靱な線維束(大腿四頭筋腱).膝蓋腱反射に利用.
斜膝窩靱帯 膝の内側にある半膜様筋(坐骨神経)腱の下端から放散する8~15mm幅の靱帯.腓腹筋(脛骨神経)外側頭の起始に向って膝関節包の後方を斜め上外側へ向かい大腿骨の外側顆後面に付き関節包を後方から補強.
弓状膝窩靱帯 腓骨頭から膝窩筋(脛骨神経)を越え大腿骨の外側上顆および脛骨の顆間窩に付く靱帯.関節包を後外側から補強.

膝完全伸展位での外反制限因子

主・・ 内側側副靱帯(MCL)
副・・ 関節包(後内側:半膜様筋を含む),ACLおよびPCL,外側半月(板),内側膝蓋支帯,鵞足部の腱,腓腹筋(内側頭)
※Neumannによる

膝完全伸展位での内反制限因子

主・・ 外側側副靱帯(LCL)
副・・ 関節包(後外側),膝窩筋腱,弓状膝窩靱帯,腸脛靱帯,大腿二頭筋腱,ACLおよびPCL,内側半月(板),腓腹筋(外側頭)
※Neumannによる

終末強制回旋運動
Screw home movement

膝関節最終伸展時に約10°の脛骨(膝関節)の外旋または大腿骨(股関節)の内旋が生じる現象.坐位での膝伸展(OKC開放運動連鎖)では最終域での脛骨の外旋,スクワットでの膝伸展(CKC閉鎖運動連鎖)では大腿骨の内旋が生じる.膝関節の伸展最終域では関節の遊び(joint play)が少なくなり下腿外旋は自動的に生じる.

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終末強制回旋運動Screw home movement
開放運動連鎖open kinetic chain(OKC)
閉鎖運動連鎖closed kinetic chain(CKC)
大腿骨内側顆medial condyle of femur
前十字靱帯anterior cruciate ligament(ACL)
内側側副靱帯medial collateral ligament(MCL)
内側半月(板)medial meniscus(MM)
関節の遊びjoint play


Screw home movementに関係する因子

(1) 大腿骨内側顆の傾きが前内側を向くこと
(2) 膝伸展時にACLが緊張すること
(3) 膝の内側側副靱帯が内側半月(板)に癒合し,内側半月(板)の可動性が制限される(大腿骨内側顆の可動性が小さい)
(4) 随意的な膝伸展時に大腿四頭筋の外側方向への牽引が生じること

[3] 脛骨と腓骨の連結

近位は脛腓関節(滑膜性関節の平面関節),遠位は脛腓靱帯結合で連結.脛骨と腓骨の間は下腿骨間膜が張る.

脛腓関節
Tibiofibular joint

下腿近位で脛骨にある腓骨関節面,腓骨頭にある脛骨頭関節面との平面関節.

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平面関節plane joint
腓骨関節面articular surface for fibula
脛骨頭関節面articular facet of head of fibula


下腿骨間膜
Interosseous membrane of leg

脛骨と腓骨の骨間縁を連結する結合組織性の膜.上部に前脛骨動脈,前脛骨静脈,下部に腓骨動脈,腓骨静脈を通す孔がある.多くの下腿の筋[下腿骨間膜の前方に前脛骨筋(深腓骨神経),長趾伸筋(深腓骨神経),長母趾伸筋(深腓骨神経),後方に後脛骨筋(脛骨神経),長母趾屈筋(脛骨神経)]が付く.

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骨間縁interosseous border

脛腓靱帯結合
Tibiofibular syndesmosis

下腿遠位で脛骨の腓骨切痕と腓骨下端(外果関節面上部)との靱帯結合.通常,関節腔は持たず,前面は前脛腓靱帯(脛骨から斜め下方に走る靱帯),後面は水平方向に近い後脛腓靱帯で補強される.

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靱帯結合syndesmosis
腓骨切痕fibular notch
外果関節面articular facet of lateral malleolus
前脛腓靱帯anterior tibiofibular ligament
後脛腓靱帯posterior tibiofibular ligament

[4] 足の関節と関連する靱帯

 足の関節は足根の関節,中足の関節,足の趾の関節に分類される.

①足根の関節


足根骨に関連し距腿関節および足根間関節がある.

a.距腿関節(上跳躍関節)
Ankle joint

腓骨,脛骨,距骨からなる.関節窩は腓骨の外果関節面,脛骨の下関節面,内果関節面が連なって形成され,関節頭となる距骨滑車とともにラセン関節を呈し足関節の背屈と底屈が可能.距骨滑車の形状(⇒骨学)から関節の遊びは足関節の背屈位で少なく底屈位で大きくなる.靱帯には内側靱帯,前距腓靱帯,後距腓靱帯,踵腓靱帯がある.

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内側靱帯medial ligament
(三角靱帯deltoid ligament)
   脛舟部tibionavicular part
   脛踵部tibiocalcaneal part
   前脛距部anterior tibiotalar part
   後脛距部posterior tibiotalar part
  外反ストレステストeversion stress test
前距腓靱帯anterior talofibular ligament
  前方引き出しテストanterior drawer test
後距腓靱帯posterior talofibular ligament
  外果窩lateral malleolar fossa
  距骨後突起posterior process of talus
踵腓靱帯calcaneofibular ligament
  内反ストレステストinversion stress test

内側靱帯(三角靱帯)  足関節内側にあり,脛舟部,脛踵部,脛距部(前脛距部,後脛距部)からなる.この靱帯は内果から三角形に放散する形状をしており関節包内側の補強も行う.▲損傷すると足関節外反ストレステストが陽性となる.
1)脛舟部 内果から舟状骨の背側面.
2)脛踵部 内果から踵骨の載距突起.
3)前脛距部 内果から距骨頸.
4)後脛距部 内果から距骨後突起の内側結節.
前距腓靱帯 足関節の前外側にあり外果から距骨頸の外側に付く.足関節の「内がえし」を制限する.▲損傷すると足関節の前方引き出しテストが陽性となる.
後距腓靱帯 腓骨下端後内側(外果窩(か))から水平内側の距骨後突起の外側結節に付く.
踵腓靱帯 外果の下縁から踵骨後外側に付く.足関節の「回外」「内がえし」を制限する.▲損傷すると足関節の内反ストレステストが陽性となる.

b. 足根間関節
Intertarsal joint

足根骨を結びつける滑膜性関節で距骨下関節,距踵舟関節,踵立方関節,楔舟関節,楔立方関節の5つからなる.

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距骨下関節subtalar joint
ショパール関節(横足根関節)transverse tarsal joint
  距踵舟関節talocalcaneonavicular joint
  踵立方関節calcaneocuboid joint
楔舟関節cuneonavicular joint
楔立方関節cuneocuboid joint

■距骨下関節subtalar joint

距骨体下面の後踵骨関節面が凹,踵骨上面の後距骨関節面が凸の顆状関節.足部の内転,外転,内がえし(回外-内転-底屈),外がえし(回内-外転-背屈)に関与する.

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顆状関節condylar joint
後踵骨関節面posterior calcaneal articular surface
後距骨関節面facies articularis talaris posterior
内がえしinversion
外がえしeversion
内側距踵靱帯medial talocalcaneal ligament
外側距踵靱帯lateral talocalcaneal ligament

内側距踵靱帯 距骨後突起の内側結節から前方にある踵骨の載距突起に付く.
外側距踵靱帯 距骨の外側突起から斜め後下方にある踵骨外側面に付く.

■距踵舟関節(※)talocalcaneonavicular joint

距骨,踵骨,舟状骨の間の顆状関節.距骨の舟状骨関節面,前および中踵骨関節面が関節頭,舟状骨の後関節面,踵骨の前および中関節面が関節窩となる.

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顆状関節condylar joint
底側踵舟靱帯plantar calcaneonavicular ligament
 (¬ばね靱帯spring ligament )
下跳躍関節

底側踵舟靱帯(ばね靱帯) 舟状骨粗面と踵骨の載距突起の間の靱帯で弾性線維を含む.
※距骨下関節と距踵舟関節は跳(ちょう)躍(やく)運動の際に共同して働くため下跳躍関節(距腿関節は上跳躍関節)という.

■踵立方関節(※)calcaneocuboid joint

踵骨と立方骨後方の間の鞍関節.関節包は独立し,その背面は二分靱帯に被われる.

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鞍関節saddle joint
二分靱帯bifurcate ligament
     踵舟靱帯 calcaneonavicular ligament
     踵立方靱帯calcaneocuboid ligament
足根洞tarsal sinus

二分靱帯 踵骨と舟状骨,踵骨と立方骨を足背で連結するV字状の強力な靱帯で内外の2つある.
1)踵舟靱帯 内側部の靱帯.踵骨背面の前内側部(足根洞底の前方部)から前方に向かい舟状骨背側面に張る.
2)踵立方靱帯 外側部の靱帯.踵骨背側面から立方骨背側面に張る.

■楔舟関節cuneonavicular joint

舟状骨と楔状骨との平面関節.

■楔立方関節cuneocuboid joint

外側楔状骨と立方骨との平面関節.

ショパール関節(横足根関節)

距(踵)舟関節と踵立方関節をあわせた呼び方.ショパール切断をする部位.

②中足の関節


足根中足関節(リスフラン関節)と中足間関節からなる.

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c. 足根中足関節Tarsometatarsal joint
(=リスフランLisfrancs関節)
d. 中足間関節Intermetatarsal joint


c. 足根中足関節
(リスフランLisfrancs関節)

足根骨と中足骨との関節.第1足根中足関節は第1中足骨と内側楔状骨との関節で独立した関節包を持つ鞍関節.第2~5足根中足関節は共通の関節包を持つ平面関節.第2足根中足関節は中間楔状骨と第2中足骨,第3足根中足関節は外側楔状骨と第3中足骨,第4足根中足関節は立方骨と第4中足骨,第5足根中足関節は立方骨と第5中足骨と連結する.

d. 中足間関節

隣接する各中足骨底を連結する平面関節.関節腔は足根中足関節の関節腔と交通している.

③足の趾の関節


中足趾節関節(MP関節)と趾節間関節(IP関節)からなる.

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e. 中足趾節関節(MP関節)Metatarsophalangeal joint
f. 趾節間関節(IP関節)Interphalangeal joints


e. 中足趾節関節(MP関節)
Metatarsophalangeal joint

中足骨頭を関節頭,基節骨底を関節窩とする顆状関節.

f. 趾節間関節(IP関節)
Interphalangeal joints

足趾および母趾の趾骨を連結する蝶番関節.

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蝶番関節hinge joint
IP関節interphalangeal joint
PIP関節proximal interphalangeal joint
DIP関節distal interphalangeal joint

母趾の基節骨頭と末節骨底の間は母趾趾節間関節(母趾IP関節).足趾の基節骨頭と中節骨底は近位趾節間関節(PIP関節),中節骨頭と末節骨底は遠位趾節間関節(DIP関節)で各々第2~5趾にある.(※母趾は中節骨を欠きPIP関節やDIP関節はない.)

足根管
Tarsal tunnel

足関節内側の屈筋支帯とその下の足根骨との間隙.屈筋支帯は内果の下部から扇状に広がり前方は舟状骨,後方は踵骨に付き中間部は足底腱膜に移行.前方から順に後脛骨筋腱,長趾屈筋腱,後脛骨動脈,脛骨神経(内側足底,外側足底神経),長母趾屈筋腱が通る.

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屈筋支帯flexor retinaculum
足底腱膜plantar aponeurosis
後脛骨筋tibialis posterior
長趾屈筋flexor digitorum longus
脛骨動脈posterior tibial artery
脛骨神経tibial nerve
長母趾屈筋flexor hallucis longus


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