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運動器の解剖学⑱(筋学)総論!形状分類や運動用語についても解説!

筋学総論は、「無料公開中」です。

筋学Myologyは筋および関連する腱,腱膜,滑液包,筋膜について研究する学問である.人体には約400の骨格筋があり,その重量は体重の30~50%を占める。


Muscle

横紋筋striated muscle
    骨格筋skeletal muscle
   随意筋voluntary muscle
    心筋cardiac muscle
   不随意筋involuntary muscle
平滑筋smooth muscle

筋には横紋筋平滑筋がある.

横紋筋・・骨格筋と心筋が横紋筋です。骨格筋は、随意筋で筋には核が複数ありますが、心筋は不随意筋であり、筋には核が一つしかありません(単核です。)。
筋線維にアクチンとミオシンからなる明瞭な横紋(縞模様)があり,骨格筋と心筋が含まれる.骨格筋は組織学的には横紋筋で多核,機能的には随意筋で殆どが骨に付着しこれを動かす.骨格筋は能動的運動器官,骨は受動的運動器官である.心筋は組織学的には横紋筋で単核,機能的には不随意筋である.

平滑筋・・内臓の筋が平滑筋です。心筋と同じく不随意筋であり、核も一つしかありません(単核です)。心臓を除く内臓の筋は組織学的に平滑筋で単核,機能的に不随意筋である.

横紋筋の構造

アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが集まり筋原線維,筋原線維が集まり筋線維となる.筋線維は筋内膜で包まれて集まり筋束,筋束は筋周膜(内筋周膜)に包まれて集まり筋となる.筋を包む強靱な筋上膜は外筋周膜と筋膜(⇒筋の補助装置)からなり,筋膜または深筋膜とも呼ばれる.

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筋muscle
  筋束fasciculus
   筋線維muscle fiber
     筋原線維myofibril
       アクチンフィラメントactin filament
       ミオシンフィラメントmyosin filament
筋内膜endomysium
筋周膜perimysium (=内筋周膜internal perimysium)
筋上膜epimysium
  外筋周膜perimysium externum
  筋膜fascia
深筋膜deep fascia


筋の付着

骨に付く骨格筋,関節包に付く関節筋,皮膚に付く皮筋がある.筋の付着部には起始(近位部で重い側)と停止(遠位部で軽い側)があり,起始に停止が近づくように作用する.逆に作用する場合,筋の反作用という.

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起始origin
停止insertion
筋の反作用(リバースアクション)reverse action
関節筋articular muscle
皮筋cutaneous muscle

殆どの筋は骨に付着する部分が強い結合組織線維束となっておりこの部分をいう.骨膜の結合組織と強く癒合し一部はシャーピー線維となって骨皮質に入り込む.

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腱Tendon
  腱膜aponeurosis
  腱弓tendinous arch
  中間腱intermediate tendon
  腱画tendinous intersection

腱には腱膜,腱弓,中間腱,腱画(けんかく)などがあり血管密度が小さいため白く見える.腱膜は腱が膜状となったもの.腱弓(けんきゅう)は筋の起始や付着部が弓状の腱索(けんさく)となったもので神経,血管などを通す(⇒ヒラメ筋腱弓).中間腱は二筋腹(顎二腹筋など)の筋腹の中間にある.腱画は短い中間腱が多腹筋(腹直筋など)の筋腹を横切って線状をなすものをいう.

筋の補助装置

浅筋膜(皮下筋膜)superficial fascia
筋間中隔 intermuscular septum
筋支帯retinaculum
筋滑車muscular pulley(muscular trochlea)
滑液包synovial bursa
腱鞘tendon sheath
   線維鞘fibrous tendon sheath
   滑液鞘synovial sheath
   腱間膜mesotendon
種子骨sesamoid bone

筋膜 筋,筋群の表面を包む結合組織性の膜で浅筋膜,深筋膜,筋間中隔があり線維の走行は筋線維に直交するものが多い.筋や筋群をその位置に保持し収縮を制限し,筋の付着部にもなる.
浅筋膜(せんきんまく)(皮下筋膜) 真皮の下で最も表層にある筋膜.皮下組織と筋層とを分け体の全周を被う.
深筋膜(しんきんまく) 筋群を包み一般に外筋周膜との間にわずかの疎性結合組織があって移動できるが,強く癒着する場合もある.
筋間中隔 体肢において深筋膜が厚くなり皮下筋膜と骨との間に張って筋群を分ける.
筋支帯(きんしたい) 四肢遠位部の関節付近で深筋膜が肥厚し靱帯様となって腱を支え,筋収縮時にその腱が浮き上がるのを防ぐ. 例)伸筋支帯,屈筋支帯
筋滑車 腱を支持する骨の隆起または靱帯で腱の走向を変える作用がある.
滑液包(かつえきほう) 筋や腱が骨,軟骨または靱帯との摩擦を軽減する部位にある小嚢.薄い結合組織性の滑膜に包まれ,中には関節と同様に滑液を入れる.筋下滑液包,腱下滑液包,筋膜下滑液包,皮下滑液包に分類される.関節の可動性に大きく関わり癒着すると関節拘縮(こうしゅく)の原因となる.
腱鞘(けんしょう) 滑液包が長く腱をとりまいたもの.筋支帯の下など腱が大きく移動する部位に発達し外層は腱の線維鞘(せんいしょう),内層は腱の滑液鞘(かつえきしょう)という.腱鞘の間から腱への栄養血管や神経が入る部分を腱間膜(けんかんまく)という.指の屈筋腱にある腱の紐(ひも)は腱間膜の残った部分が紐(ひも)状になったもの.
手指などでは腱が関節から浮き上がるbowstring(弓の弦)現象を防ぎ,屈筋腱や伸筋腱が円滑に動き,その筋の本来の作用が十分発揮できるようにする.
種子骨 腱や腱と癒着している関節包にできる骨片.骨化の程度は様々で大部分が線維軟骨の場合もある.これは摩擦に抵抗するため生じたもので腱が接している骨部と連結する.
例)豆状骨,膝蓋骨,腓腹筋外側頭のFabella ,母指の中手指節関節部

筋の形状分類

紡錘状筋fusiform muscle
   筋腹belly of muscle
   筋頭head of muscle
   筋尾tail of a muscle
羽状筋bipennate muscle(pennate muscle)
半羽状筋unipennate muscle(semipennate muscle)
二頭筋biceps,三頭筋triceps,四頭筋quadriceps
二腹筋digastric muscle
   中間腱intermediate tendon
多腹筋polyventer
鋸筋serratus muscle
方形筋quadrate muscle

 紡錘状筋 
・・両端が細く中央部が太い紡錘状の筋.筋腹は筋の中部の太い部分,筋頭は起始部に近い部分,筋尾は停止部に近い部分.
例)上腕筋
 羽状筋 
・・中央に走る腱(線維)に筋束が斜めに集まる筋.
例)長腓骨筋,後脛骨筋の上部,腓腹筋
 半羽状筋 
・・腱の一側に筋束が斜めに集まる筋.
例)半膜様筋,後脛骨筋の下部
 二頭筋,三頭筋,四頭筋 
・・筋の起始(筋頭)が複数ある筋.その数により名称が付く.
例)上腕二頭筋,上腕三頭筋,下腿三頭筋,大腿四頭筋
 多尾筋 
・・複数の筋尾を持つ筋.
例)深指屈筋,浅指屈筋,指伸筋,長趾伸筋
 二腹筋 
・・筋腹が腱(中間腱)で二分された筋.
例)顎二腹筋,肩甲舌骨筋
 多腹筋 
・・筋腹が腱により複数に分かれた筋.
例)腹直筋
 鋸筋 
・・付着部が鋸(のこぎり)の歯の形の筋.
例)前鋸筋,上後鋸筋,下後鋸筋
 方形筋 
・・四角形の筋.
例)方形回内筋,大腿方形筋

筋の作用

筋収縮によって筋の起始と停止が近づくために生じる関節運動.筋が運動軸(屈曲と伸展,内転と外転,内旋と外旋などにおける運動の中心)のどこを通るかでその作用が決まる.但し,関節の形態や靱帯などの制限因子,別の筋(群)の収縮による力学的なベクトルの変化により作用(運動方向)は変化する.

主動筋(主動作筋)prime mover;agonist
拮抗筋antagonist
共同筋(協力筋)synergist
中和筋neutralizer
固定筋fixator,安定筋stabilizer 

 主動筋(主動作筋) 運動の際に主に作用する筋,筋群.その反対の作用をする筋,筋群は拮(きっ)抗(こう)筋という.
 共同筋(協力筋) 主動作筋の作用を助ける筋,筋群.広義では一つの運動に参加する全ての筋を意味する.
 中和筋 目的とする運動を行うため2つの異なる筋の作用が合わさって作用し,他の働きが拮抗して不要な運動を中和する場合.
例)左右の外腹斜筋による体幹の屈曲作用
 固定筋,安定筋 静止性収縮により骨や関節を固定し支持性を与える筋.
例)腕立て伏せの姿勢で頭部が下がらない様に作用する頸部の伸筋群

筋と作用する関節の数

一関節筋(単関節筋)monoarticular muscle
多関節筋polyarticular muscle
二関節筋two-joint muscle

一関節(単関節)筋 起始と停止が関節を一つまたぐ筋.
 多関節筋 起始と停止が関節を二つ以上またぐ筋.(二関節筋も含む.)
二関節筋 起始と停止が二つの関節をまたぐ筋.その筋は二つの関節に作用する.例)上腕二頭筋(長頭,短頭),上腕三頭筋(長頭),大腿直筋,縫工筋,薄筋,大腿筋膜張筋,大腿二頭筋(長頭),半腱様筋,半膜様筋,腓腹筋,足底筋など

関節運動の用語(対義語)

屈曲flexion ⇔ 伸展extension
内転adduction ⇔ 外転abduction
内旋internal rotation ⇔ 外旋external rotation
回内pronation ⇔ 回外supination
内がえしinversion ⇔ 外がえしeversion
内反inversion ⇔ 外反eversion
挙上elevation ⇔ 下制depression
上方回旋upward rotation ⇔ 下方回旋downward rotation



 屈曲,伸展 矢状面での関節運動.肘関節では,肘を曲げる動作が屈曲,伸ばす動作が伸展.肩関節では,前方に上腕を挙上させる動作が屈曲,その逆が伸展.頸部,体幹,肩関節,肘関節,手関節,手指や足趾のMP,PIP,関節,股関節,膝関節,足関節などの動きに用いる.
 内転,外転 前額面での側方(内外側)への関節運動.外転は,肩関節では上腕の外側への挙上,肩甲骨では肩甲骨の外側への移動,その逆が内転.肩,肩甲骨,手指や足趾のMP関節,手関節,股関節,目の動きなどに用いる.
 内旋,外旋 横断面での内側への回旋運動が内旋.その逆が外旋.肩関節,股関節,下腿の動きに用いる.
 回内,回外 前腕の横断面での内側への回旋運動が回内,その逆が回外.足部では足底面が外側に面するように回旋する場合が回内.その逆が回外.前腕,足部の動きに用いる.
 内がえし,外がえし 「内がえし」は足部の底(てい)屈(くつ)-回外-内転,「外がえし」は背(はい)屈(くつ)-回内-外転が合わさった動き.正常な足部の関節運動に使用し,外傷や疾患では「内がえし」ではなく「内(ない)反(はん)」,「外がえし」ではなく「外(がい)反(はん)」を用いる.(⇒内反捻挫,内反膝,内反尖足,外反肘,外反股など)
 挙上,下制 前額面での上方移動を挙上,その逆が下制.肩甲骨,肩甲帯の動きに用いる.
 上方回旋,下方回旋 前額面で肩甲骨の関節窩が上方を向くのが上方回旋,逆が下方回旋.肩甲骨の動きに用いる.

神経随節のレベルと残存する筋(随節 筋 作用)

C5・・ 上腕二頭筋,上腕筋・・ 肘関節の屈曲
C6・・ 長,短橈側手根伸筋・・ 手の背屈
C7・・ 上腕三頭筋・・ 肘関節の伸展
C8・・ 深指屈筋・・ 手指の屈曲
T1・・ 小指外転筋・・ 小指の外転
L2・・ 腸腰筋・・ 股関節の屈曲
L3・・ 大腿四頭筋・・ 膝関節の伸展
L4・・ 前脛骨筋・・ 足関節の背屈
L5・・ 長母趾伸筋・・ 母趾の伸展
S1・・ 腓腹筋,ヒラメ筋・・ 足関節の底屈
International Standards for the Classification of Spinal Cord Injuryによる.

 key muscle 脊髄損傷の際などの神経残存レベルを評価する際に用いられる筋.Key muscleの筋力を評価することで神経の残存レベルを推察することができる.


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