形而上学的可能性や概念的可能性などの用語まとめ



分野を問わずにnoteの投稿を増やすと宣言したので、勉強した形跡をどんどん残していこうと思う。今回は、分析哲学(心の哲学)で概念的可能性や形而上学的必然性などについての用語まとめを行う。

まず、形而上学的可能性は概念的可能性の部分集合[概念的可能性[形而上学的可能性]]である(これらの定義は後で述べる)。それゆえ、ある命題が形而上学的に可能ならば、概念的にも可能である。その逆は必ずしも成り立たない。では、形而上学的、概念的とはどういう意味だろうか。以下のように定義する。

(1) 形而上学的:経験に関与
(2) 概念的:論理的可能性に関与

ものすごいざっくりした定義だ。とりあえず、このように理解しておこう。ただし、あまり「形而上学的」あるいは「概念的」単体で定義されることは少ないように思われる。むしろ、「必然」や「可能」との組み合わせで使われるように思われるので、まず、概念的可能性と形而上学的可能性について定義しよう。

(3) 概念的に可能:ある命題の真理値がアプリオリである、あるいは論理的に排除されない(e.g. 水はXYZである)。アポステリオリに偽になることがある。

(4) 形而上学的に可能:ある命題の否定が必然的ではない(e.g. ¬(ユニコーンがいる))。その可能性はアポステリオリに決定されうる。

概念的可能性については、例えば、「水はXYZである」という命題は、「丸い円は四角である」という命題とは異なり、論理的に何ら矛盾しておらず、概念的に可能である。ただし、ご存知の通り、水はXYZではなく、H2Oであると今では知られている。そのため、この命題は、概念的には可能だが、形而上学的には可能ではない。このことを(4)の定義に照らして、確かめてみよう。まず、「水はXYZである」の否定は、「水はXYZではない」である。この否定はアポステリオリに必然であるため、形而上学的に可能ではない[少し真偽を検討中]。なぜなら、「水はH2Oである」からだ。一方で、「ユニコーンが存在する」という命題の否定は、「ユニコーンは存在しない」である。この命題はアポステリオリに真であると決定されえないため、(4)の「命題の否定が必然的ではない」という定義に沿うと、「ユニコーンが存在する」という命題は形而上学的に可能である。

続いて、形而上学的必然性と概念的必然性について定義する。まず、必然とはなんであるかということだが、以下のように定義する。

(5)
a. 必然:あらゆる可能世界で真(e.g. 自然種、固有名)。固有名が必然なら必然的真理はアポステリオリに発見されうる。例えば、「明けの明星は宵の明星である」は、固有名に関するもので経験的に知られるうるものである(See Kripke: 1980)
b. 偶然:全ての可能世界ではないが、少なくとも一つの可能世界で真
c. 必然は可能を含意する

さて、形而上学的必然性と概念的必然性は、以下のように定義する。

(6) 概念的に必然:アプリオリに知られる真理である
(7) 形而上学的に必然:最も強い意味で、物理法則が異なっていても真である(e.g. 独身者は結婚していない、水はH2Oである)。アポステリオリな真理である。

以上の定義はUriah Kriegelのコメントからもわかる。

(8) ” conceptually necessary truths are a priori whereas metaphysically necessary truths are a posteriori (see Kripke on water and H2O).”(p.c. Uriah Kriegel 2024)

例えば、「独身者は結婚していない」は概念的にも形而上学的にも必然である。一方で、「ユニコーンは存在しない」は、先に見たように形而上学的に可能ではあるが、形而上学的には必然的ではない。なぜなら、アポステリオリに得られるような真理ではないからだ。一方で、「水はH2O」は概念的には可能であるが概念的に必然ではない。また、この命題は、形而上学的に可能であり、必然でもある。

参考文献
・青山拓央(2012)『分析哲学講義』、筑摩書房
・Uriah Kriegel (2020), "Introduction What is the philosophy of consciousness?", Uriah Kriegel (ed.), Oxford Handbook of the Philosophy of Consciousness, Oxford University Press
・Kripke, S. A. (1980), Naming and Necessity, Oxford, OUP



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