生産の時代は終わり、富の公正な分配が時代の課題になってきた
「生産から分配へと言うダグラスの議論は、時代にマッチした適切なものになってきている。資源と環境の危機で成長の限界にぶつかった資本主義の問題、特に金融資本が成長の限界を無視してきた結果、銀行への負債だけが増える負の成長の中で分配の不平等が極端になっています。生産の時代は終わり、富の公正な分配が時代の課題になってきたのです」
「環境の破壊と資源の枯渇は今や文明の存続を脅かしています。経済が成長するから環境が破壊され資源が枯渇するのです。経済を成長させるためには、資本を集中させて投資する必要がある。この資本の集中と投資を左右しているのが銀行です。ですから銀行マネーをなくし、資本をベーシックインカムの形で個人と言う究極の単位にまで分散すれば、経済はもう成長しません。成長に代わって生産し消費する経済循環の均衡と安定、そしてフローよりストックを重視することが経済の原則になります。人口と安定の経済は、経済の収縮をより耐えやすいものにし、グローバルな工業経済から農業中心の地域経済への穏やかな転換を容易なものにするでしょう」
関さんは、21世紀にピークオイル、すなわちこれまでのグローバル資本主義を推進して来た物理的なエンジンである石油の生産量がピークに達し、これから減っていく状況の中で、どのように持続可能で公正な政治経済社会体制へソフトランディングできるかという問題意識を持っている。
関曠野『なぜヨーロッパで資本主義が生まれたのか』