『グローバル・グリーン・ニューディール』14

気候変動の問題に直面する若い世代は、不安をかき立てられると同時に、新たな意識に目覚めつつある。すなわち、地球が数え切れないほどの活動の相互作用、水圏、岩石圏、大気圏、生物圏、磁気圏の連合した動きや、地球の概日リズム、概月リズム、概年リズムや季節の変化による時間的変動、そして地球上に生息する多種多様な生物が途切れることなく触れ合い、影響しあうことがもたらす自然の律動に組み込まれていると言うことだ。

この人間の意識の根本的な変革は、一筋の希望の光をもたらす。想像力における確信を心に内面化し、活用できれば、私たちは気候大崩壊の危機を乗り切り、生き延びるチャンスを勝ち取ることができるのだ。そればかりか、今日私たちが知るのとは全く別の世界で、計り知れないほど長い年月にわたって新たな形で繁栄し続けることさえできるかもしれない。

最近まで、排出ゼロの経済への移行において世界をリードしてきたのは、5億8000万人の人口を抱えるEUだった。そこで近年、人口約14億人の中国が脱炭素時代への転換計画を携え、轟音を上げて参入してきた。 そして今、人口3億2700万人のアメリカがこれに加わろうとしている。

EUも中国も、世界史におけるこの瞬間に自分たちが果たすべき役割ー気候変動に取り組み、地球上の生命を守る事ーを明確に理解している。

EUも中国も、他の地域の脱炭素文明の転換を支援するため、地理的境界線を越えて手を差し伸べている。
中国の「一帯一路」構想が圧倒的にリードしている。中国にとって、それは、「生態文明」を築くための大規模な思想的計画の1部なのだ。
具体的には、今後の中国における経済計画や開発はすべて自然の基本原理や地球の作動システムに従い、それと調和するものでなければならないと規定したのだ。
このビジョンによって中国は、第一次及び第二次産業革命を通じて世界の国々の政治を支配していた地政学的世界観から、エコロジカルな時代が幕を開ける第三次産業革命において、国際情勢の主導原理となりつつある生物圏的世界観へと移行する。

一対16構想は、今後50年をかけて地球上の全人類を結びつける大変革の始まりに過ぎない。再生可能エネルギーを共有するために、デジタル的に強化された高電圧スマートグリッドを全ての大陸に整備するプランについての実現可能性調査や実施計画は、すでに始まっている。

私たちは現在、世界中が相互につながる送電網構築の初期段階にあり、2030年代末までに少しずつ運用が始まる。これによって、人類史上初めてすべての人間がつながることになる。個人や家庭、コミュニティーそして国全体が、紛争や戦争のゼロサムゲームに明け暮れた石油時代の地政学から解放され、人類全体が地球を包み込む無料の太陽光や風を分かち合い、深い協力関係を結ぶ生物圏政治と次第に移行していくのだ。

それでも、中国がこの歴史的瞬間に乗じてスマートなインフラの構築に資金を出し、監視が介入と言う形で自らの力を増強することに利用するのではないかと言う懸念や不安を口にする人が増えている。最終的には人類の大半の生活を支配しようと目論んでいるのではないかと。私個人の中国での経験を言わせてもらえば、そんな人があるとは思えない。もし仮にそうだとしても、一対16構想に関わる地方や地域や国がスタート時点から注意を払い、インフラ構築とその後の所有と管理が、それぞれの政府の厳しい管理下に置かれるようにすれば、そんな目論見は失敗するに決まっている。
そして忘れてならないのは、第三次産業革命のデジタルインフラはその性質上、中央集権型ではなく分散型の管理になじみ、ネットワークの効果を実現するには、そのネットワークがクローズドで白川的ではなく、オープンで透明性を持つ場合に最もよく機能し、垂直ではなく水平方向に拡大することで総合エネルギー効率と循環性が最適化されると言うことである。こうして作られたプラットフォームは、柔軟性と冗長性と言う、気候変動世界において地域のレジリエンスを高めるのに重要な2つの要素を好むのだ。
たとえ国家や反乱集団がネットワークを監視あるいは支配したり、機能を損なわせたり停止させたりしようと目論んでも、エンドユーザーのシステムにシンプルで安価な技術要素が組み込まれていれば、家庭や地区、コミュニティー、企業組織、そして地方や地域の政府は即座にオフグリッドに切り替え、分散化・再統合することで被害を避けることができる。

人類はグローカルで、相互にデジタル的につながったグリーンな世界へと向かっている。目下、その先頭走っているのはEUと中国である。アメリカはまず、話し合いのテーブルにつく必要がある。この三島の蔵が協力し、グリーン・ニューディールへの移行を可能にする様々な保護策や保障を整備しなければならない。生物圏時代の政治は必然的に、新しいデジタルインフラとそれに伴うネットワークの透明性を確保する運用の規則や規制、基準を整備することを中心とし、その重点は常に、すべての地方や地域がそのインフラを公的なコモンズとして管理する自由を持つことに置かれる。
最後に一言言っておこう。もし三島の像が、人類が危機にひんした地球に暮らす危機にひんした主であると言う認識に立って地政学と決別し、生物間が徐々に形成されるに伴って協力関係を築いていかなければ、人類に未来は無い。私たちは、それぞれ異なる信念や忠誠心を持っているが、気候変動によって初めて自分たちが「絶滅危惧種」であることを思い知らされている。この新しい現実と生きることが、人類がかつて経験したことのない共通の絆で結ぼうとしているのだ。
若い世代はよくわかっている。彼らは環境崩壊の縁を覗き込み、危機感を募らせている。現実的で頭が硬く、冷笑的でさえある年長者たちが、グリーン・ニューディールを非現実的なおとぎ話だと片付けたり、人生はゼロサムゲームだなどと言うのを聞くのはまっぴらだと思っているのだ。今と言う歴史のこの瞬間に、私たち全人類は政治的な境界を越えて互いを信頼し、1つの種として知恵を持つ集めていかなければならない。

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