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40年越しのありがとう

こういう偶然は、何かちょっと心を動かす。
思いがけなさ、温かい気持ち。

隣にある実家に荷物を取りに行って、玄関を出ると、

「あ!、、、、、」という声。

顔を上げると、目の前にいたのは、中学時代の同級生だった。
まさか、実家の目の前で出会うとは、相手も驚いている。

彼女とは、中学の3年間一緒に通学をしていた。
家から学校に行く途中に彼女の家があって、
毎日、私が彼女の家の呼び鈴を鳴らす。

ときには、寝坊したのか、だいぶのんびりと玄関の前で待っていたりしたことも覚えている。

中学を卒業して別々の高校に入ってからは、一切会っていなかった。

最近、彼女の家の前をとおりながら、どうしているかな、と思っていたところだった。

聞くと、すでにあの家には住んでおらず、近くのスーパーの隣に住んでいるとのこと。

そんな近くに住んでいたのね、知らなかった。

親が高齢になって、2階の登り降りが難しくなったからだという。そうだよね、わかるわ、私の両親はまだここで頑張ってるけど、この先はどうなるか、、
なんて、話をしていると、

彼女が急に切り出した。

「XXさん(私の旧姓)には、感謝してる。ホントにあの頃毎日一緒に通学してくれて、ありがとう。」

「へ??、、、なんで?」
突然のことに驚いた。

「え、、私、特別なことなにも、、」

すると重ねて、「XXさんがいてくれて本当にありがたかった。いなかったら、登校拒否してたかも、、」

私は、何かをしたつもりは全くなくて、ただ、習慣で毎日彼女の家の呼び鈴を鳴らして、通っていただけだ。当時何を話したのか、そんなことも全く覚えていなかった。

なんだかほっこりした。

今になって、こうして素直に言われると、素直にうけとれる。

中学時代は校内暴力の吹き荒れた時代で、決して明るい学校生活じゃなかったし、私も暗い気持ちですごしたことも多かった。

そんな自分でも、こんな近くにいる人の助けになっていたんだ。

そう思うと、ただ生きているだけでも悪くない、そう思えた。

40年越しのありがとうは、私の少女時代を癒してくれた。
あなたのままでありがとう、そんなメッセージも残してくれたように思う。
そしてまた彼女は去っていった。



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