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【書評】トヨタ生産方式 著者 大野耐一

こんにちは、あんパパです。

今回は初ですが「書評」を書かせて頂きます。
テーマとしては診断士試験勉強中に読んで勉強の役に立ったと思われる本です。

今回はこちらの本です。

今、トヨタグループは大変な事になっておりますが敢えてこの本について書かせて頂きました。


この本をおすすめする理由

事例IIIの世界観

事例IIIには色々な事例企業が出てきます。基本的にはモノ作り企業です。
後述しますが日本のモノ作りの根底には分野を問わずトヨタ生産方式の考え方が様々な形で採用されています。

長年、モノ作り大国日本の生産方式として採用されてきた考え方であり、日本におけるモノ作りのあるべき姿を示したきた考え方です。

具体的な生産方法への落とし込み方は各企業や産業分野によってもちろん異なってます。ただ、トヨタ生産方式が目指すあるべき姿や方向性は共有されベースとなってます。この考え方を理解する事は事例IIIに取り組む上で重要になってきます。

あと、たまに事例企業として自動車部品メーカー等が登場し、ジャストインタイムの考え方をそのものズバリ問われるような設問もあったりします。

トヨタ生産方式

トヨタ生産方式とは

それではここからもう少し具体的にトヨタ生産方式の話を。

製造業に馴染みのない方は名前くらいしか聞いた事がないかも知れません。ズバリ会社名を冠した生産方式ですがその名の通りトヨタ自動車で編み出された自動車の生産方式です。

私は自動車業界に身を置いているのでこの本は何度か読み返しました。
自動車業界は動きが早い業界ですので、その時々の状況で読む度にこの本からは違った印象を受けてます。

モノ作り大国として長年世界でトップの競争力を保ってきた日本において、自動車産業は象徴的な産業であり、その中においてトヨタ自動車はリーダー企業として日本のモノ作りを牽引してきました。

その結果、前述の通りこのトヨタ生産方式の考え方は分野を問わず幅広く日本の製造業におけるモノ作りの根底に物理的にも精神的にも脈々と流れるようになったと考えてます。

「トヨタ」と名前は付いてますが、その考え方はすでに「日本」の製造業全体的な考え方になっています。

ジャストインタイムと自働化

この本ではトヨタ生産方式はジャストインタイム自働化の二本柱で成り立っているとあります。

ジャストインタイムと自働化の詳細な説明はここでは省略しますが、概念として「ジャストインタム」は生産時において製造工程に生産に使用する資材、人員、仕掛品等が過不足なく供給される事で生産現場でのムリ・ムダ・ムラを削減する考え方であり、「自働化」とは人間のように機械にもモノの良し悪しを判断させて悪い場合は機械が自働で停止して不良品などを作り過ぎない考え方です。

では、なぜこのような仕組みを取り入れているのか?
全ては少量多品種生産に対応する為です。そして、ここに事例IIIの考え方に通じる要素があります。

フォード生産方式

トヨタ生産方式とよく比較される生産方式にフォード生産方式があります。

ヘンリー・フォード一世が築き上げた所謂、大量生産方式の生産方法です。

製品別の生産ラインがあり、流れ作業で製造が進み大量の製品がラインオフしていくスタイルでおそらく多くの方が生産性、生産効率と言う単語を思い浮かべる際にはフォード生産方式の概念による生産性、生産効率を思い浮かべるのだと思います。

実は私もこの本を読むまではフォード生産方式の概念を持ってました。

事例IIIに苦手意識を持っている方はここに誤解が生じているのかもしれません。

事例IIIを理解するにあたって

事例IIIを理解するにあたっては前もって理解をしておくべき前提があると考えてます。それが事例IIIの世界観ありトヨタ生産方式の考え方だと思ってます。

多品種少量生産

事例に出てくる企業は当然中小企業です。

如何に顧客のニーズに合った製品をタイムリーに無駄な在庫を持つ事なく届けられるかが勝負になってきます。すなわち、多品種少量生産が求められます。

当然、企業ですので製造コスト削減が求められますが事例IIIにおけるコスト削減の優先順位はそんなに高い訳ではなく、中小企業において大量生産方式による規模の経済を発揮したコスト削減が求められる事は少ないと思います。

それよりも如何に多品種少量生産を極めて効率化する事で生産コスト削減し、生産性を上げ、製品の付加価値を上げられるかが勝負となる訳です。

例えば、この観点では生産現場では段取替えの改善、生産管理面では生産計画の改善の観点が論点になります。

私も当初はこの点を誤解をしており、如何にロットを纏めて効率良く生産する事でコスト低減をしていくかばかりを考えてました。
つまりはフォード生産方式の概念で考えてました。

特に大手メーカーなどにお勤めの受験生の方などはこの点を誤解をしたり、事例IIIの問題を解いてて解答を見てもしっくりこない方が多いのではないでしょうか。

経営資源の制約

中小企業のもう一つの条件としては経営資源の制約があります。

大規模な投資を行なって生産設備を購入する事もなかなか出来ません。
まして製品別ライン専用設備などは慎重にならざるを得ません。

また、資金的な観点からも大量の資材在庫、製品在庫、仕掛品等を持つ事も極力抑えた経営を行う必要があります。

ここではジャストインタイム的な切り口、すなわち、必要な物を必要な量だけ、必要な時に、が論点になってきます。

広く浅く理解する

この本には詳細なトヨタ生産方式の解説や成り立ちの歴史などの記載もありますが、事例対策には直結しないので参考程度で。

特に製造業分野以外に携わっている方は、トヨタ生産方式の勉強と言うよりも日本のモノ作りの根底に流れているあるべき姿、方向性といった事を理解すると言う感覚で良いと思います。

逆に製造業にいる方は、事例IIIに対しては得意意識がある割には点数が伸びてこないと言う方がいらっしゃれば、この世界観や前提を誤解している可能性がないか、見直して頂ければと思います。

最後に

最後までお読み頂きありがとうございました。

私がこの本を読んで一番誤解していたと感じたのは、
「必ずしも効率よく多くの製品を作る事は常に良い事ではない」と言う考え方です。

すなわち、作り過ぎると副次的に保管費用や管理費用が発生する事を考えれば多くの製品を作り過ぎる事もまたムダであると言う事です。

私は長年製造業の世界にいます。そして生産性の向上とは短時間で多くの製品を作る事を意味すると思ってました。それがモノ作りの目指すあるべき姿であり、コスト低減の定石であると思ってました。

ですが、この考え方はあくまで生産に関係する部門を中心とした考え方であり、会社全体として考えた時にはいつもそれが正解ではないと気付かされました。

中小企業診断士の試験勉強をする上で、特に事例IIIを勉強する上では、生産に関係する部分を中心に学びながらも会社全体を俯瞰する視点が重要になります。

この本は私にその気付きを与えてくれた本でした。

試験勉強を通じてこのような気付きを得られるのも、中小企業診断士を勉強する上での大きなメリットではないでしょうか。

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