親も子どもと一緒に育ちなおせるか?
子どもを産んでから、わたしの心は不安定になった。というか、もしかしたら心の硬直が解けたのかもしれない。
産後うつ的な症状なのかもしれないが、子どもを産んでから、嬉しかったり悲しかったりの感情が高ぶってよく涙を流した。
流す涙の理由は、自分自身のお母さんに会いたいという気持ちが溢れてくるからだ。そんな気持ちは大人になってからは感じたことはなかった。多分封印していたんだろう。
わたしには親がいない。
記憶もあやしい幼児期に両親は離婚し、親と離れて暮らしていたからだ。連絡先も知らない。
紆余曲折あって、30過ぎに夫と出会い結婚して、いまは子どもにも恵まれている。幼少期の自分自身からは想像できないくらい幸せだ。
親と離れて暮らしている子ども時代は、いつかお母さんが迎えに来てくれると思っていた。だから良い子にして待っていようとがんばった。
成長するにつれ、親は迎えに来てくれないと悟った後は、誰にも頼らずに自立して生活できる力を得ようと気を張って生活した。そうして、お母さんに会いたいという気持ちは消してしまったはずだった。
しかし、どうだろう。
自分が子どもを産んで、前回のテキストのように、強すぎる共感によって自分が子どもの目線にたってしまうと、お母さんに会いたい、抱っこしてほしい、という満たされなかった気持ちが溢れてくるのだ。それは心の底から止めどなく噴出してくる渇望の気持ちだ。言語化できない愛おしさだ。
だから、わたしは目の前の子どもを愛することで、愛されなかった子ども時代の自分自身を慰める。
新生児期はただ抱っこすることで愛し愛され、イヤイヤ期はワガママを受け入れることで愛し愛される。抱きしめながら眠れば安心する。
蘇ってしまった満たされなかった気持ちを治めるには、そうするしかないのだ。
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