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【プレイ感想】イハナシの魔女

アドベンチャーゲームって最高ー!
ボーイミーツガールって最高ー!
つまり最高のゲームです。

蛇も食います。

本作は沖縄の離島が舞台となっているノベルゲーム。主人公の西銘光は、高校一年生の春、育ての親から渡夜時島(とよときじま)の祖父の家で暮らすよう言い渡される。祖父の家を訪ねれば祖父は不在。
途方に暮れてサトウキビ畑をさまよった光は、謎の少女リルゥと出会う。2人はすったもんだありながらも協力するのだが、リルゥには目的があり……?という話。大丈夫、全年齢ですよ。

琉球神道をベースにした伝奇も作り込みが面白い。一本道のノベルゲームにおける、物語への没入感や掘り下げというのがかなりしっかりしている。
分岐が無いというのも相まって、本作には無駄がない。10時間程もあれば、物語のすべてを堪能できるのではなかろうか。
出会い、すれ違い、克己、相互の理解や世界との衝突。そしてなによりも、すべての解決に至るカタルシス。それらが冗長なところなく、かつ高いクオリティで実現されていることには感嘆を禁じ得ない。

人生において必要なものは案外少ない。ゲームというのもまた人生においては無駄なものだ。その無駄を好んで遊んでいるゲーマーとしては、この愛すべき無駄を楽しめるマインドは持ち合わせていたいものだ。

しかし「ゲーム」という娯楽そのものの無駄さとは裏腹に、多くのゲームは面白さを保証するし、可能な限り無駄を削ぎ落そうとする。そういった意味では、『イハナシの魔女』は、「無駄を綺麗に削ぎ落とした、洗練された無駄」ということができるだろう。

僕個人としては、別にそんなに無駄を気にするわけでもないが、この濃密なボーイミーツガールが、プレイ時間すべてに込められているというのは素晴らしいことだ。
時間当たりの充実さを要求されるようになり始めた令和という時代。そこにビジュアルノベルという、少々古風なフォーマットの作品が大きな爪痕を残しているというのは、喜ばしいことである。

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