いまさらだけど、コロナになりました。

最近、筋トレを久々にやったからか、今日はなんだか背中から体がピリピリとして怠い感じだ。
昔と違って、筋肉痛が2日、3日と遅れてやってくるようになると年齢を感じるようになるとはいうが、実際に体感するのと文章で読むのとは違う。
そこには真の実感があったりする。

仕事が終わり少し楽にしていると、ふと額が熱くなっていることに気づく。「風邪なんてここ何年もしてないな」と思いながら、クローゼットにある体温計をがさごそ探る。コロナの影響で手洗いうがいをするだけここまで風邪になりにくくなるなんて思いもしなかった。

熱は37.6分
「まぁ、ちょっと風邪気味だな」と思ったものの、そこからの変化が早かった。
一気に寒気、気だるさが襲ってきて「あ、これは風邪を越えてやがる」と悟る。
PCR検査キットは、実はコロナ疑いが出た時に行政からもらっておいたので手元にある。この使いたい時に使える状態というのを作るのが人生では難しく、今回は珍しく成功したわけだ。
結果は陰性。ほっと胸を撫で下ろす。

しかし僕らの世代で怖いのは、自分が感染したのを親に移してしまうことだと思う。ちょうど週末に実家にいたから自分より両親の方が心配だとまずは家族に報告する。

1日目:木曜日の夜

この日の夜は単純に寒気との戦いだった、インフルエンザになったことの無い僕にとっては、38度越えは未知の領域。
めんどくさがって仕まうのを遅らせたままベッドの下にいたたまれなく置いてあるシーツなしの布団が夏だというのに震える僕の体を温めてくれる。
だが悪寒というのは恐ろしいもので、外からくる冷気とは異なり内から広がる。
震えるほど寒いのに、体は暑くて足裏から火を吹いてそうなぐらい暑くて仕方ない。
しかし毛布を外すと寒くて仕方ない。以下繰り返しである。
そんな悪寒と高熱の間にうなされる様に眠ることなどできず、体は早く眠ってしまいたいと思うものの、そんな状態だからすぐ目を覚ましてしまう。
目覚めたら目覚めたで今度は急激な体のだるさと、犬のような息切れで身体が辛い。
そうコロナは眠ってしまう方が辛い。

しかし、この日はまだまだ余裕があった方で夜ご飯も普通に食べることができていた。

ちょっとの睡眠を経て、朝になるとコロナ/インフル状態で病院に行って大丈夫か念のため電話する。

流石にコロナももう落ち着いて、病院への受け入れ自体も問題ないとのこと、意外とあっさりOKが出たものの、あとは10分の距離を歩いていかないと行けない問題だけだ。

ほんとは外出するのは良くないんだろうが(コロナじゃないと思ってたので)、マスクを付けて外に出る。
久しぶりに付けて歩くと、世の中が反転してることに気づく。(逆に)周りからは陽性者のように見えるわけだ。

病院では、「別の部屋に案内しますからねー」と言われていたので看護師さんについて行くと、廊下やった。
廊下に椅子がポツンと一つ置かれている。待機場所が違うだけだよねと思ってたらお医者さんの方がこっちに来てくれるスタイルだった。
PCRとインフルの検査を行うと、また鼻に長い綿棒をぶっ刺される。「昨日やりましたよ」というと、辛かったでしょう?と問われる。
「はて?」
あー、あぁぁ、ああ、そんなに奥までぶっ刺さないといけなかったのね綿棒を!このせいでPCR検査そのものが失敗していたっぽかった。なぜなら
陽性だったから…。

2日目金曜日:コロナ覚醒

この週末、もともと病院にはくる予定だった。
ここ最近、仕事の問題がメンタルに来て大きく体調を崩していたからだ。きっとコロナもそれに気づいてうまく侵入してきたに違いない。

ついでに胃腸関連の薬を何個か見繕ってもらい、薬局に行く。ついに「コロナ陽性者」となったわけで自分の行動も慎重になってくるが、普通に薬局に行って薬をもらうしかない。
蓄えがないわけではないが、お医者さんに自宅待機命令をされたのは火曜まで、気は引けるものの帰りにスーパーでポカリスエットやゼリー飲料などをひとしきり購入しておく。なぜなら瞬間を生きるための糧が必要だ。

うちに戻ると、さっさと薬を飲めばいいもののたった10分の距離を往復しただけなのに疲れて眠ってしまう。
また居心地の悪い寝覚を経て、大量にもらった薬を一つ一つ飲んでいく。ロキソプロフェン、トラネキサム、コデインリン、エンペラシンと他にもあるが胃腸用にもらった薬を入れると、一回に6錠ぐらいの薬を飲むヤバいやつになってしまった。

薬を飲んで、夕食も食べてまた少し一休みし、改めて温度計を脇に刺すと体温が37度台まで下がってきていた。
やはり薬の効果絶大ということで、この突然やってきた大型台風も結局は何も被害をもたらさず、もう沈静化してしまうのかと思っていたが、しかし

あ       ま        か       っ      た


そいつはずっとコロナの中に身を隠していたのだ。
いつ出て行って驚かしてやろうかなどと考えていたのだ。そんな最悪なサプライズはいらん。

槍隊を撃破したと思ったら、後から戦車隊で蹂躙していくかの如く。「俺様の変身が第一形態までと誰が言ったんだ?」とピッコロさんに言うフリーザの如く、コロナというラスボスの攻撃は、第二形態が本命だった。
なんやのそれ。。。しかも一ターンに2回攻撃してくる。

昨日に比べると、体温は38度以上が当たり前になってきていたが、まだまだ水を飲んだり、ウィンダーインゼリー的なものを飲んだりすることができていた。
しかし夜になると突然、自分の喉奥にマグマが隆起したかのように危険地帯が生まれ、あわよくばそこに少しでも触れてしまったら手痛いしっぺ返しを受けることになる。
そう、喉が痛くなった。
しかし、ただ喉が痛くなったわけではない。生きてるだけで辛いほど痛い。

そして次に、眠れなくなった。
少し眠ることはできるが、30〜1時間ぐらいで飛び起きる。
説明が難しいんだけど、喉が明らかに炎症(どころかマグマ化)を起こしていると、感覚的に喉の奥で水分が止まってしまっているのがわかる。
この症状により、鼻水も出てくるようになってしまったから唾液と痰のようなものが溜まっているような感覚だ。

それをとにかくゴクリという動作ができないので処理するために、鈍い体を起こして洗面所に行く。このループの繰り返しだ。
またそれ以外にも発作のように起きる瞬間的な喉の激痛は「もうね」だ。
これが「チーン」という音と共に真っ白の空間を叩き壊すような刺す痛みが喉から広がる。
咳き込みなどしてみろ、さらに追加ダメージがついてくるおまけ付きの攻撃になっている。ほら、鬼畜だろう。

さらにこの「激喉痛」により、体温も一気上昇し、挙句には39度からなんと一時期は人生初の40度到達!というところまで暑くなった夏になった。

異常発熱によるだるさ、寒気+喉の尋常じゃない痛み というメラゾーマとイオナズンを一ターンに同時に打ってくる状況に、僕は思った。
「あ、これはダメなやつや。」

3日目:土曜日

もはや昨日の夜を乗り越えた記憶がない。

激喉痛の、もう一つ弊害として
水が飲めなくなった。
これが本当に辛いのは、体温が高く水分が必要な状態にも関わらず水が飲めない。普段、FF並みに水を飲んでしまう習慣がある分だけ余計にきつい。
これを打開するためにいろいろ試してみることにした。

「水ちまちま飲み作戦」
口の中に、水を溜めて水鉄砲のように本当に搾った水をちょっとずつ飲んでいくという作戦。これは吐血した時のようにぶちまけてしまったので失敗。
「ラッパ飲み作戦」
今度は、逆に塊を一気に飲み込んだらどうだろうか?さらに口を上に向けることにより気道も確保するものとする。
うむ、痛いが飲めないことはない。継続してやる気はないが手段としてはあり。
そして最後に
「凍らせ作戦」
DAKARAとポカリを氷ボックスの中に入れて、凍らせるとカチコチの氷というより少しシャーベット状になる。これならマグマのように暑くなった喉を冷やしつつ、さらに自らの喉も潤すに違いない。

これは一番うまくいった!成功だ。
なぜか氷にすると激痛はこない。時折吐水することはあるがまあまあ飲める。代用としてはアイスの実とかでもいいかもしれない。
これでなんとか水分は確保した。

とにかくコロナで厄介だなと思ったのは、寝てさえしまえば一旦この辛い現実から目を背けながら休息することもできてしまうわけだけど、今回のコロナはそれができない。
24時間、少し眠ることはあっても起きたらひどい過呼吸が待っていたり、高熱ゆえに、子供の頃によくあった頭がぐるぐる回って、思考がフラッシュバックして夢か現かわからない現状を引き起こしたりした。
基本的に横になっていることもできないので、大体はベッドに腰掛けて滞っていたゼルダを進めているのが一番気楽だったかもしれない。
「寝ろ」っと言われるかもしれないが、横になると不意のゴホゴホが襲ってくるのよ。
そんな生活なので、カーテンの隙間から朝の光が差し込んでくると、
「あぁ、また1日を乗り越えることができた」とよくわからない感慨になったりする。

4日目:日曜日

もう39.3分あったとしても、慣れというのは恐ろしいものでこの高熱状態が普通になって来たようにさえ思えた4日目。
喉の痛みとともに不思議なことに、寒気が無くなって行った事もあって喉の痛みさえなければ、部屋の中を動き回ること自体はできるようになっていた。

しかし何かを食べることはできないので、ここら辺からは諦めて何も食べずに薬だけ飲むことにしていた。
薬を飲むにもひとかけらの勇気を振り絞らないといけない。
心の中で「行くぞ!」と円陣を行ってから、一気に口の中に入れ水を流し込む。ここで注意しないといけないのは、飲む仕草を絶対に一回にするということだ。であればダメージは重くとも一回で済む。
粉剤になると、ちょっと厄介なことになる。
水を先に口の中に入れ、その後に粉を注がなければいけないから。
こうなると、
・水が先に喉を刺激して咽せる可能性
・粉を入れて飲み込むのに躊躇してたりすると、咽せて吐水する可能性
このように、薬を飲むのもアドベンチャーな状況になってしまっていた。

水分補給に限らず、喉の痛み対策も何個か講じてみたので、それを少し挙げてみる。
「うがい」
最も純粋な方法。ただ上を見上げるだけで喉がぴくぴくしてしまうから慎重に行う。効果があるかはわからないが、あまりに刺激が入った時の沈静化や気分転換に有効。
「のどぬーるスプレー」
幾千もの辛い風の夜を乗り越えてきた歴戦の勇者のどぬーるスプレーもコロナには屈した。直接スプレーする刺激といい、水分が溜まってしまったり逆に刺激してしまう効果が強かったので、途中撤退。
「喉を冷やす」
外から喉を冷やすのはどうだろう?とアイスノン的なもので冷やしてみたが、単純に喉を圧迫するので咳き込みを誘発してしまった。また単純に喉にずっと当ててるのが無理。
「葛根湯」
これが一番効果があった気がする。
コロナ周りの記事を見ていて、咳には葛根湯か桔梗湯が良いとされる。とあったのでたまたま家に残っていた葛根湯を試す。葛根湯を飲み始めてから回復傾向に向かってきたこともあり、市販薬でもどうにかなりそうだなという気がした。

ただコロナ症状は風邪とほぼ一緒なので、一旦コロナに罹ってしまうと途中でその波を止めることはできず、一周苦しむところまで回らないと終わらせてくれない傾向があるのかもしれない。

5日目:月曜日 忘却

氷を口にしていて咽せることはあるが、突然来る喉の激痛は無くなった。
特段語ることなし。

6日目:火曜日 終焉

コロナが落ち着きを見せ、まだまだ少し咳は出るものの飲み物も少しずつだか飲めるようになった。そろそろ仕事だと思うと逆に憂鬱だが、体調が良くなったからか、お腹が少し鳴るようになった。

正常に近づきつつある体を客観的に眺めていても、言えば一瞬だったあの辛さは、まだ数日前だというのになぜか思い出すことができない。

喉の痛みがなくなり、ようやく飲み込めるようになったメロン味のゼリーを噛み締めていると、ふと気づく。

「味が、しない。」


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