テストは苦手だったけど勉強は好きなことに気づいた。

 私は小学校の頃は勉強ができた方だった。ところが中学に上がった途端全くついていくことができず、あっという間に落ちこぼれのレッテルを張られる羽目になった。県内一の高校に入れるための塾に通わされていたが落ちこぼれ具合が加速し、体調とメンタルを崩し、学校に通うのがドンドンと億劫になっていた。

「自分は何てダメなやつなんだ」

「このままで将来が心配だ」

「私はこのまま落ちこぼれ人生を辿るに違いない」

と10代の全てをこの考えに支配されていた。

 しかし、突然何かが弾け飛んだのか、自分の好きなときに興味を持ったものに触れてみようという考えに至った20代半ばである。

 そのきっかけはワゴンセールに300円で売られていた小さな将棋セットであった。私は子どもの頃から将棋に興味を持っていたが触れ方がわからなかったのと将棋ができる人が周りにいなく将棋セットを自ら買う勇気もなかったのでずっと「興味はあるけど……」で済ませてきた。

 300円で売られている将棋セットを見たとき「こんなチャンスは滅多にないぞ」と思い、すぐさま買った。

 将棋セットには駒の動かし方が載っており、それだけで私は嬉しかった。

 どことなくハードルが高かった将棋を身近に感じることが出来たのだ。

 将棋のゲームも買い、ゲーム機を見ながら、将棋セットで詰将棋をしている。どうやって学べばよかったのかわからなかったモノを知る事が出来た。

 私はこのことをきっかけに自ら興味を持ったものの本や初心者向けの動画を見るようになった。

 「今さら勉強したって……」という考えを捨てたというより、気が付いたらいなくなっていたという感覚に近かった。

 これはテストの点数に対する恐怖と怒られるかもしれないという締め付けのせいであると思う。

 絵を描いても叱られない。本を読んでいても叱られない。間違えても叱られない。私は叱られるのが怖くて勉強ができなかったのかもしれない。

趣味の勉強に関しては「やらなきゃ」と思ったらあえて「やらない」を心掛けている。

「やらなきゃ」と思ったらそれは自分で義務化してしまってるようだから。

 だから「やりたいな」と思ったらやる。

 大人になって良かったことは勉強しても怒られないところだと思う。

                          了

 



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?