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将棋 Tips #05 詰将棋の意味って?

何年か前に「詰将棋、意味ないです」とおっしゃったプロ棋士の先生がいらっしゃいまして……(下リンク、2017年の記事)

当時は「衝撃の発言」として、主に「観る将」界隈で話題になったりしましたが、記事を全文読みますと「(実戦にそのままの形で出てこない)詰将棋を解くよりも、実際に出てきた詰み筋を学んだ方がいい」という意図でおっしゃったことみたいですね。また、三段までは、めちゃめちゃ解いていたというお話もされていて、将棋の訓練としての詰将棋を全否定されていたわけではないようですねー(プロになってからの勉強法は? というニュアンスの訊き方ですしね)。

増田六段(現時点)は、居飛車の本格派。上の「詰将棋意味ない」と併せて「矢倉は終わった」というユニークな発言などで「観る将」界隈でも人気のある棋士です。自分もファンで、「ABEMAトーナメント」での対局や、他の番組での解説など、機会あるごとに追いかけたりもしています。

というわけで、プロにとってどうか? というのはともかくとして、今回は、我々のような将棋ファン〜アマチュアにとっての「詰将棋を解く意味」について考えていきましょうかねー。

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上の図は、いわゆる「金頭桂の手筋」を使った、よくある形の詰将棋です。文字通り、金の頭へ桂馬を打って、金で取っても、玉がどこかへ逃げても、金打ちまでの詰みです。

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次の図。これは詰将棋ではありませんが、23の地点へ歩が成り、玉が31へ逃げれば、最初に上げた図と全く同じ形になります。また、この図では、歩が成った時に、32へ金を寄って受ける手もありますが、その場合も同様に「金頭桂の手筋」で詰みます。

上図は「詰将棋(手筋)そのもの」で、下図は「その応用例」です。

説明のために簡略化していますが「実戦での進行例」と言い換えられるかもしれません。実戦で下図のような形になった場合、自分の持ち駒に金と桂馬があって、相手に受けるための駒がなければ、23へ歩が成って、相手玉は必死になります。(自玉が詰まされれば負けますがw)

続いてもう1パターン、例を見ていただきましょう。

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▲71角△92玉▲93香△同桂▲82金までの5手詰

上の図は、対振り飛車戦で、美濃囲いを崩した後よくできる形ですね。実戦詰将棋としても有名なものです。これを踏まえて下図。

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この図は、いわゆる「次の一手」的な感じのものですね。62の地点へと金が入るのが厳しい手。これを金で取ると、さっき上げた図と全く同じ手順で後手玉は詰みます。実戦だと、後手の方にも、何かしらの持ち駒はあるでしょうから、と金が入って即勝ちというわけにはいかないでしょうが「▲71角からの詰み筋」を含みに攻める▲62とが「決め手級の一着」であることに、変わりはないでしょう。

さて、ここまで二つの例をご覧いただきましたが、いかがでしょうか?

「短手数の詰将棋を繰り返し解くのが上達の近道」とか「たくさんの詰み筋や攻め筋を知っておくことが終盤力を上げるために効果的」とかいうのは、将棋が強くなる方法としてよく耳にすることだと思いますが、上の方に挙げた二つのパターンは、それをわかりやすいように示してみたものです。

つまり、詰将棋(特に短手数のもの)をたくさん解くというのは「実戦に、その問題と全く同じ形が出てきたら必ず詰ますことができるように備えておくため」ではなくて……

相手玉を、自分がすでにわかっている「形」や「筋」に誘導する

ために、できるだけ多くの「詰む形」や「手筋」「詰み筋」を知っておく、または、思い出しやすいようにしておくための訓練法なんですねー。

「答えがわからなかったらすぐに見てオッケー」とか「一冊丸ごと図面と詰み筋を覚えてしまうと効率がいい」とかよく言われたりしますし、自分が、他の記事で言ってる「擦(こす)って擦って擦りまくれ」とか、「シンプルな形や筋のものを何十回何百回」とかいうのは、詰将棋の訓練には、そういう「直感力」を培う意味があるからですねー。

実際の対局に臨んだ時、相手玉を寄せる手順をパッと思いついて、バシッと詰まして勝つ、その瞬間のために、自分なんかは、日夜、詰将棋集を片手に脳内でパチパチとやっとるわけなんですよwww

以上、我々アマチュアにとっての「詰将棋を解く意味」についてお話ししてきました。ただしですね、これは「上達&強くなることを目指す」ということを第一に考えている「指すファン」にとってのもので、「詰将棋」というのは、それだけでひとつの娯楽(芸術)ジャンルですし、楽しみ方は人それぞれで「意味」なんていうのも、もちろん違ってきますので、その辺りは、ご賢察いただけますと幸いです。ではまた。

<補足>

上のような話だけだと、長めの手数(取り組む人によってそれぞれです)の詰将棋を時間をかけて解く意味はないんじゃないか? と思われてしまうかもしれませんが、それはそれで「集中して指し手を読む力」とか「読みを順番に繋いでいく技術」とか、そういうものを身につけるのに役立ちますねー そちら向きの話は、また機会を改めてさせていただきたいと思います。

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